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注意! このSSは『ゆっくりいじめ系153 ゆっくり調教師 前編』 及び 『ゆっくりいじめ系154 ゆっくり調教師 後編』 の設定を勝手に借りてます。不快だったらごめんなさい。 夜。人の灯も届かない処に、丸い物体がふたつ鎮座していた。 満月に照らされ青白く輝くそれは不敵な笑みを浮かべており、劣等感などの形而上のことから明日の食事など日常のことにいたるまですべてのしがらみから開放されているように見えた。 それが何か分からなかった私はひとまず家に帰ると、夜が明けるのを待って知人をたずねた。 昨夜見たあれがどうしても気になったのだ。 「ああ、それはゆっくりだよ。別に心配しなくても祟ったりはしないさ。 みんな見かけたら潰してるし、人によっては虐待を趣味にしている奴もいるぐらいだからね」 私は納得した。確かに昨夜見た佇まいはゆっくりしていると言えたからである。 だが同時に疑問も浮かんだ。果たしてあれを虐待しようとする者がいるのだろうか。 理由を聞くと友人は部屋の隅に詰まれた透明な箱を持ってくると私に差し出した。 「一度飼ってみるといい」 釈然としないものを感じたが、目を見るに彼の言葉に間違いはないのだろう。従うことにして、 餌は生ゴミでいい、巣箱に入り口をふさげる箱を置け、貴重品は片付けておけなどの飼いかたの基本を聞き、礼を言って家を出た。 最後のひとつと箱の意味が分からなかったが、私は特に気にせず村にあるゆっくりショップでゆっくりまりさを買った。 値段が他の種類よりも安かったがどれも一緒だろうと考えてのことだ。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 家に帰りまりさを箱から出したところ「ゆべっ!」と顔面から着地し、しばらくぷるぷると震えていた。 ようやく起き上がったかと思うと 「ゆっくりしていってね!」 ぽよんと跳ねて高らかに言い放った。うつ伏せになっていたときは分からなかったが、なるほど昨夜のあれと同じ形である。 私がゆっくりしていってねと返し野菜の切れ端をあげると、よほど美味しかったのかまりさはがっつき、あっという間に食べ終え溶けた飴のように垂れた。「ゆっくりぃ〜」とつぶやくその姿はとてもゆっくりしていた。 そんなまりさと暮らし始めてから1週間後、私はまりさに違和感を覚えた。どこかゆっくりしていないのである。 食べるときには「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」だったのが「うっめ、メッチャうっめこれパネェ!」になり私のことをおっさんと呼ぶようになり、四六時中内外構わず跳ね回るようになった。 さすがにこのままではいけないと思い、ゆっくりショップに相談することにした。 「それはしつけ不足ですね。ゆっくりはゆっくりできるとすぐに増長するんです。 対処法はお客さんの場合ですと……」 蛇のような目をした店員の話を聞くと、家に帰り、そして愕然とした。 家で私を待ち受けていたのは破れた障子、散らばり踏みつけられた食べカス、畳に入った大きな傷、液体でベタベタした布団、そしてその中央で眠りこけているまりさであった。 耳の奥で心臓が鳴り、腹の底から熱い血液が上って頭がのぼせた私は、まりさとの間合いをつめ そのいやらしい笑みでたるんだ顔を思い切り蹴飛ばした。 まりさは足形の付いたまま壁に当たると、べちゃりと糸を引いて落ちた。あの様子だとしばらくは目を覚まさないであろう。 しかしこれからすることのためには途中で目を覚まして暴れられると困る。そこで友人からもらった箱を思い出し、埃をかぶっているそれにまりさを閉じ込めると、七輪を取り出し火をおこした。 パチパチと炭がはぜだしたところで鉄串を掴み、透明な箱から喚いているまりさを取り出すと、途端に声が聞こえるようになった。 「なにしやがるんだぜくそじじい!どれいのぶんざいでまりささまにたてつくんじゃないんだぜ!さっさとおうちをかたづけてしぬんだぜ!」 どこで覚えたのか罵詈雑言を並べ立て、私の手から逃れようとうねうねと形を変えるまりさ。 手の中で動く感触が気持ち悪く、先ほどの怒りが覚めていないのも手伝って、私はまりさを七輪の網に叩きつけた。 「いだあつっ!くそじ……あづぃ!?あづぃよぉぉおおおお!ゆっぎゃぁぁぁああああああ! まりざのあんよがぁぁぁああ!やげっ、やげぢゃぅぅうううう!?やめれぇぇええええ!」 このままではどうなるか本能的に分かるらしく、体を滅茶苦茶に動かすまりさの髪を掴み、滑るので何度も落としそうになりながら底面が真っ黒になるまで焼き、背中に鉄串を刺してから解放する。 あたりに焼き饅頭の香りが漂う中、ようやく人心地ついたまりさに話しかけてみた。 「なにじやがるんだぜぐぞじじい!」 答えを返すまりさにため息をつき、顔面を掴むと背中の串をそのまま七輪の小窓に差し込み「ゆぎぃぃいいい!」また話しかける。 そんなことをたっぷり十回は繰り返した頃だろうか 「ごべんなざいぃぃ!まりざがぜんぶわるがっだでずぅぅぅうう! ぜんぶぜんぶ、はねることすらでぎないぐずまりさのせいでずぅううう!」 まりさ地面に額をこすりつけて謝罪した。 ゆっくりショップの店員が言うにはゆっくりというのは学習能力が著しく低く、一度痛い目にあわせてもすぐに忘れて同じ事を繰り返すという。 そこで一度体内に棒を入れて外側からそれ刺激するという方法がどこかのブリーダーによって編み出されたらしい。 これはその方法を改造したもので、大体のゆっくりは2、3回で言うことを聞くようになるそうだ。 荒療治を終えたまりさは、長時間加熱された上に涙を流したことにより、触ると崩れそうなほどに乾燥していたので、オレンジジュースでとりあえずの治療をすることにした。 焦げたまりさはそのままに食料庫に入ると、いつもの場所にオレンジジュースがなかった。どうやら荒らされたとき飲まれたらしい。 仕方なく村まで行って買って帰ると、まりさがいたはずのその場所には何もなかった。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 七輪を片付け、汚れた布団を洗い、部屋をあらかた片付けた私の目の前にゆっくりが現れた。 「ゆっくりしていってね! ゆっ?おにーさん、ここでゆっくりしたまりさみなかった?」 頭から茎を生やしたそのゆっくりは、ゆさゆさと揺れながら話しかけてきた。 まりさを自分の過失で失った私はちょうど良いと思い、まりさは知らないがこの家にいればごはんをあげると誘って、まりさ種とは別のゆっくりを飼う事にした。 そのゆっくり、れいむを飼うのにさしあたっての問題は、野生ならではの汚れと栄養不良による形の悪さであった。 まずは前者を解決するため、桶に半分ほど水を張るとれいむを呼び、髪の根元までしっかりと洗うことにした。 強めに髪をこする指が太い茎の根元に当たるとれいむが反射的に飛び跳ねた。 「ゆひゃあっ!?おにーさん、ゆっくりれいむのあかちゃんにきをつけてね! くきがおれちゃうとあかちゃんがゆっくりできなくなっちゃうよ!」 どうやら茎に生えてるのはゆっくりの子供らしく、茎はれいむが膨れると根元がつっぱり僅かに傾いだのだが、れいむはそれに気づいていない。 そのままでは茎が取れそうだったのでほっぺたを押して空気を抜いてやると中身が偏ったのか、中央部分がへこんでいた。 まあこれに関しては食事の量を増やせば何とかなるだろう。 一緒に暮らすとれいむはまりさよりもゆっくりしているようだった。 まりさほど跳ね回ったりしない上、しつけもちゃんとしているので言葉遣いも悪くない。 ただ稀に変な声を出すときがあったが、注意すれば静かになった。 そんなれいむと暮らし始めてから3日後、ぽとりと茎から実が落ちた。 「「「「ゆっくちちちぇっちぇね!」」」」 「ゆっくりしていってね!おかーさんだよ!ゆっくりしていってね!」 いつもは温厚なれいむも、このときばかりは抑えられなかったのか大音量で挨拶を返すと、頭の茎を柱で叩き折ってグチャグチャと噛み砕くと畳の上に吐き出した。 「むーしゃむーしゃ、ゆぺっ! さあ、おちびちゃんたち!ゆっくりむーしゃむーしゃしていってね!」 「むーちゃ、むーちゃ、ちあわちぇぇ!」 赤ゆっくりたちはただでさえ食べ方が汚いのに、食べながら喋るために口から茎を噴き出し、 噴出された茎は周りの畳に緑色の染みを形作っていた。 そのときは赤ちゃんが生まれたときぐらい仕方ないと思い放っておいた。 しかし、これは一向に直らず、それどころか新たな問題まで生まれたのである。 これまでれいむは注意されればやめた。だが、赤ゆっくりが生まれてからはそちらの言うことを聞くようになったのだ。 変な声を出す癖もますます酷くなり、赤ゆっくりまで揃っていた所を問い詰めると、それはゆっくりのおうたらしく、寝る前にはれいむ一匹が、朝起きると家族揃って歌うのだと言う。 あまりにも喧しいため何度もやめるように言ったがれいむは決して歌うことをやめなかった。 ついには、夕食の席で一匹の赤ゆっくりが歌いだしたところ、家族皆が口に食べ物が入っているのも構わず歌いだした。 「ゆ〜ゆ〜ゆゆゆゆ〜」 「「「「ゆっゆっゆゆっ!ゆゆゆゆうっ!」」」」 奏でられる不協和音と飛び散る野菜に耐え切れず、私は全ての赤ゆっくりを掴むと透明な箱に放り込んだ。 そのままの勢いで親ゆっくりを掴むと瞬間接着剤を取り出し、驚きで開かれた口に薄く塗り、箱のゆっくりにも同じ処理をした 何事かと言葉を発しようとれいむは口を閉じ、そのまま開かない自分の口に戸惑った。 赤ゆっくりを見回し自分と同じような状態だと気づくと、私に抗議するようにその場で跳ね、 赤ゆっくりを安心させてあげようと舌でなめようとし、口が開かないことを思い出して、潰さないよう優しく頬をこすりつけた。 れいむは普段、その体格差から舌で触れ合うことが多く、もし頬を使うとしても触れるか触れないかの軽さであり、自分の不注意で潰してしまわないよう非常に気をつけていたのである。 そんな家族の悲しみとは対称的に、私は久々に得た、静かな中に虫の鳴声が澄み渡る食卓に満足していた。 翌日目覚めると、ゆっくり達の姿はなく、穴の開いた障子から風が吹き込んでいた。 障子の補修を終えた私が縁側で一息ついていると、今度はゆっくりが二匹連れ立ってやってきた。 二匹は揃って挨拶をすると尋ねてきた。 「おにーさんはじめまして、ありすはありす。こっちはぱちゅりーよ。 さいきんここからとかいてきなうたごえがきこえたんだけど、しらないかしら?」 中々に都会的な話し方である。捜し求めていたゆっくりに最も近いのではなかろうか。 聞くと歌も頼まれれば歌うものの、自分から進んで歌うことは滅多にないという。 そんな二匹に飼いゆっくりにならないかと聞いたところ、迷惑がかかると断られたが 最近飼いゆっくりが逃げ出してしまい寂しいのだと告げると、そう言った私の目を10秒間じっと見つめた後にそれならばと頷いてくれた。 それから、ありすとぱちゅりーは私と一緒に暮らした。 晴れた日は縁側で陽をあびて湯気が出るほどぬくもり、雨の日は頬ずりでいつもよりもちもちとした感触を楽しみ毎日欠かさずかわりばんこに毛づくろいをして水浴びをする。 ごはんを食べるときは都会派らしく静か、かつきれいに食べる。少々遅れたりしても文句を垂れたりしない。 そんなとてもゆっくりした日々を送り、季節は春から夏を過ぎ、秋へと変わろうとしていた。 その日私はぱちゅりーの隣でありすを膝に乗せ、いつものようにのんびりしていた。適度な重みが心地よいのだ。 しかしさすがに夏も終わりなのか、日がかげると肌寒く、突然吹いた風のあまりの冷たさに私はありすを抱きしめ震えた。 すぐに風はやみ、そろそろ部屋に戻るかと立ち上がろうとして、ありすの異変に気づいた。 下を向き何かを必死に耐えるかのように小刻みに震えているのだ。ぱちゅりーはそんなありすを気遣うような目つきで見つめていた。 どうかしたのかと問いかけ手を伸ばした瞬間、ありすは跳ね起きぱちゅりーに跳びかかった。 「んっほぉぉおおおおお!ぱちゅりぃぃいいいいっ! すっきり、すっきりしましょうねぇぇええええ!?」 「むっきゅーー!?」 ぱちゅりーにのしかかるありすの目は限界まで見開かれ、眼球が左右別々にギョロギョロと飛び出さんばかりに動き、口角は吊りあがり、さらにいつもはしもぶくれのその体が縦に伸びて顔のパーツが上半分に集中していた。 何とか引き離して話を聞こう。私は部屋から透明な箱を手に戻ってくると 「すっぎり!すっぎり!すっっぎりぃぃいい……ゆげっ!?」 ありすを叩き潰した。見た目が生理的に耐えられなかったのだ。 ぱちゅりーは頭から茎を生やしつつ口からクリームを吐き出し、徐々に黒ずんでいった。 残ったのは透明な箱をめり込ませ中身のカスタードがよく見えるようになったありすと、クリームの海で茎を生やす黒ずんだ塊だった。 ゆっくりは私には飼えない。おそらくあの夜に見たのは幻だったのだろう。 そう考えた私は透明な箱にぱちゅりーだったものとありすの形見のカチューシャを入れると再度友人を訪ねた。 彼は二匹のゆっくりに向かい合う形で座っており、私がこれまでのことを説明し、この子供達を預かってくれないかと頼んだ。 彼はああ、と半ば呆けた返事をすると、呟いた。君の探していたゆっくりはこれかもしれない、と。 驚く私の目の前で彼は右手を振り上げると、れいむを叩き潰した。 ぺしゃんこになったれいむはしかし、数秒すると突然ポコン、と間抜けな音を立てて元の形に戻った。 まさしくそれは、私の捜し求めていたゆっくりであった。 「持って行ってくれ。そいつはぎゃk……ゆっくりできない」 ゆっくりのようなことを言う彼に礼を言うと、私はそのゆっくり、れいむとまりさを両脇に抱えて家に帰り、ならべ置いた。 全てを食ったかのような不敵な笑み、一点の曇りもない瞳、もちもちの肌、風をはらんで揺れる髪、ゆったりとした体の曲線。 ゆっくりとした二匹が縁側で並んで、日の光を存分に浴びていた。 ああ、やはり。 ゆっくりには、ゆっくりが良く似合う。
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■品種改良415号報告書4■ 野生種といった改良種でない既存のゆっくりを母体に選び、妊娠前から母体に投薬をおこなうことで、 次世代のゆっくりの知能強化等を図る本実験415号計画の途中経過について記す。 コストパフォーマンスと管理の点から鑑みて、本計画に使用する薬品はA薬を採用することになった。 以後の実験はA薬のみでおこなう。 注意していただきたいのは、B薬は決してA薬に劣るものではないこと。良品であり、むしろ強化という面ではA薬を遥かに凌ぐ。 (とはいえ、母体への投薬によって赤ん坊の知能が向上しているにも関わらず、舌足らずな喋りである点はA薬B薬ともに共通であり、関係者は首をひねるばかりだ) 知能強化はもとより効果は身体強化にもおよぶ。 (御存知のかとは思うが、投薬された母体のゆっくりの能力向上は一切存在しない) (415号実験での母体は全て植物型出産である。ニューボーンが小型であり多産であった方が投薬の効果を確認しやすいためだ) 効き目が強いためか、結果が表に出るのも早く、目覚めたばかりの赤ん坊の時点でその効果が明らかにみられるのだ。 ひどい話になると、生後15分の赤ん坊ゆっくり達に指導される親ゆっくり――というケースも誕生する。 実験施設の餌の採り方を赤ん坊から教わったり、子供より先に体力の限界が訪れ動けないとぐずる親。果たして面倒をみてもらっているのはどちらなのか。 基本的にゆっくりは純粋なモノであるため、投薬による能力差の逆転が発生しても彼ら親子の関係は良好である。 子は親を慕い、親も子に妬みを抱くことはない。ただ、ゆっくりという種特有の愚かさから、親が事故を起こすことは多々ある。 なお、ゆっくりに“慕う”“妬む”、それ以前に感情が存在するのか? という問題は本件とは別であるため考慮しない。 B薬の問題点について軽く記す。 (詳細なB薬の報告書は担当者が提出済みであるため、そちらを参照されたし) B薬の問題点は“一代限り”であるということ。 薬によって生まれた有能な子世代の能力を、孫世代以下はまったく受け継がない。 何度か実験を繰り返したが、孫世代の知能・身体能力の全ては親世代のそれである。 毎度毎度の実験で、頭の良い子世代が、能力的に劣る親世代・孫世代を不思議がるのはもう笑えなくなってきた。 何故受け継がれないのかは依然不明であるが、さすがはゆっくりブレインと言しか言いようがなく、研究員一同、苦笑いするしかない。 (笑えないのに苦笑いなのか、という意見は却下させていただく) これでは意味がない。我々が欲するのは永続的な改良種である。 能力に向上があったとしても、次の世代にそれを残せなくては無意味であり、たとえ向上がわずかであっても次世代に受け継がれる方を良しとする。 本研究の目的に適さず、なおコストがかさむため、以降の415号実験にはB薬は使用されない。 繰り返すがB薬は良品である。他の実験でB薬が日の目をみることを、研究者の一人として望まずにはいられない。 これらの理由により。本日13:00を持って、品種改良415号B薬被検体は廃棄処分となる。 (415号実験での母体は全て植物型出産である) 他の部署が実験用ゆっくりとして、品種改良415号B薬被検体の提出を要望した場合、供与して良い。 また外部に持ち出さず研究所内部に限るが、関係者による品種改良415号B薬被検体の使用が、昨日許可された。 各人存分に楽しんでいただきたい。ただし、書類は提出すること。私の分も残しておくこと。この二つを守られたし。 ■――――以上――――■ 「すーや……すーや……すっきりー!!!」 黒髪に赤いリボン、少女の顔をデフォルメしてデザインされたような饅頭。通称ゆっくり。 その一種であるゆっくりれいむは実に幸せそうな顔で目を覚ました。 「ゆゆ? へんなきがするよ! でもしあわせー!!!」 直径15cm前後の成体れいむが立つのは、直径5cm幅の円柱の上。 足場の狭さから身動きがとれない場所ではあるが、固定された彼女が気にすることはない。 生まれ落ちた頃より、とんだりはねたりとは縁のなかった彼女だ。 今更あわてることではなく、動き回れなくとも、いつだって美味しい食べ物は向こうからやってきた。だから、しあわせー!!! 「……しあわせー? ゆっ! そうだったよ! れいむはあかちゃんができてしあわせなんだよ!」 生体れいむは親れいむ。昨日の朝にお母さんになったばかり。しあわせれいむだ。 頭部に蔦を生やし、葉(の様なもの)を茂らせ、赤ちゃんゆっくりを実らしたゆっくりの姿は……。 見ただけでしあわせそうだな、と思わせる要素を多段に含んでいるのも確かだ。 頭上に実る赤ちゃんゆっくり達を見上げるためか、それとも「思い出したれいむ偉い」と胸をはっているのか、ふんぞり返る様な動作の親れいむ。 その所作で親れいむの下腹部に付けられた薄いプレートが姿を見せた。 【実験No.46B 母体(親子廃棄)】 「ゆーゆー♪ あーかちゃん♪ おかーさんとゆっくーりしようねー♪」 2~3cmサイズのちいさなちいさな可愛い赤ちゃん。 ごきげん笑顔で歌を歌う親れいむ。しあわせでしあわせで仕方がない。 早く蔦から赤ちゃんが切り離されて、ぽてちんと地面に生まれ落ちないものか。 親れいむの視界に映る赤ちゃんは、れいむが2種、まりさが1種。 見える範囲で3匹の赤ちゃん。だったら「もっといっぱいいるよ!」と勝手なビジョンを思い描いている。 それは正しい。確かに赤ちゃんは4匹以上。 ただそれが真っ当な想像力によるものではなく、ゆっくりブレインしあわせブレイン。 こうあればいいという勝手な願望にしかすぎないのだ。 周りを見ずに、己の都合のいい事だけしか頭にない。これが普通のゆっくりである。 「……ゅ」 「……ゆ?」 親れいむの頭上で声が聞こえた。 「ゆー?」 何事かと思い、親れいむが首を傾げる(様な動作をする)。 動きにあわせて、葉と葉が重なりあい、ガサガサと音を立てた。 それが合図であったのか、 「ゅ!」 「ゅぅ……ゅぅ……」 「……ゅ! ゆゆっ!」 蔦に実った赤ちゃんゆっくりの何匹かが声を出し始め、その内の1匹が目を開いた。 「ゆっくちー!」 世界への目覚めの挨拶。 一番最初に目を開いた赤ちゃんれいむは、元気よく叫んだ。 おそらく彼女がこの姉妹の長女になるのであろう。 挨拶をすませニコニコとごきげん赤ちゃんれいむ。 「ゆ! れいみゅのおかーしゃんはどこかにゃ?」 蔦に繋がったままであるため、軽く身をひねる程度ではあるが、 母親を視界にとらえよう、見つけようと赤ちゃんはきょろきょろと周りを探す。 「おかーしゃん?」 「ゆゆ! ひょっとしてれいむのあかちゃん!? あかちゃんなの!?」 「ゆー! おかーしゃんはしたにいるんちゃね!」 この時点でようやく親れいむは、赤ちゃんれいむが目覚めたことに気がついた。 ワンテンポ早く、赤ちゃんれいむは母親の位置を把握し喜ぶ。 「おかーしゃん! れいみゅだよ! いっちょにゆっくちしよーね!」 「ゆゆー!? ゆゆゆゆ! ゆっくりしようね!!!」 本来、植物型出産の赤ちゃんは、蔦から切り離され、地面に落ちた衝撃で目覚め、言葉を発する。 そのプロセスと違い、蔦に下がった状態で既に挨拶をはじめた赤ちゃんれいむ。 そういう理由もあり、事態をまだ把握し切れていない親れいむだが、そんな事は些細なこと。 赤ちゃんが目覚め、自分に声をかけてきてくれた事が何よりの喜び。 きゃっきゃと会話を楽しむ2匹の声に反応し、他の赤ちゃん達も目覚めだした。 「ゆーゆっくちー!」 「おひゃよーおねーしゃん」 「ゆゆ! おねぼーしゃん」 「まりしゃだよー」 「まりしゃもまりしゃだよー」 「れーみゅもいるよー!」 「みんにゃゆっくちちてねー」 『ゆっくちー!!!』 皆仲良し赤ちゃんゆっくり姉妹。 「ゆーん! あかちゃんたちゆっくりしてるのー?」 「ゆゆっ! おかーしゃんだよ! みんなあいしゃつしよーね?」 『おかーしゃーん!!!』 「ゆゆー!」 親れいむは、ゆーんと感動で瞳をうるうるさせている。 自分の赤ちゃんはなんとゆっくりした子供達なんだろう。 「ひーひゅーみーよー……ゆ! おかーしゃん!」 「ゆ?」 「れいみゅちゃちがよん! まりしゃちゃちがに! ろくしまい!!」 長女の赤ちゃんれいむが親れいむに姉妹の数を報告する。 親れいむの赤ちゃんは、れいむ種だけでなく、金髪に黒の三角帽子がトレードマークのまりさ種がいるようだ。 れいむが4匹、まりさが2匹、合計6匹。 本来は30を超える大姉妹達であったのだが…… この家族は投薬の効果を高めるため、今の数まで間引きされている。 もちろんそんな事実を親れいむも姉妹達も知るよしもない。 ついでにいえば、親れいむに6という数字の概念はない。 「ゆゆー! いっぱいいるんだね! れいむはうれしいよ! しあわせー!!!」 そのため、純粋に赤ちゃんの誕生を祝うのみである。 「そうちゃよ! いっぴゃいいるよ!」 『いっぴゃいいっぴゃい! ちあわちぇー!!!』 「ゆーん! すごくゆっくりしたあかちゃんだね!」 親れいむはうれしくてしかたがなかった。 だからこそ早く赤ちゃん全員の顔をみたくてみたくてしかたがなかった。 その雰囲気を、赤ちゃんゆっくりは感じとっていた。 顔をみたいのはこちらも同じこと。 早く蔦から離れ、愛する母と正式に対面して、「ゆっくちしちぇいちぇね!!!」と言ってあげたい。 先ほどから、一匹たりともとそう叫んでいないのは、無意識からの行為。 真にゆっくりできる場所は母の傍。蔦に繋がったここではないのだ。 「おかーしゃん! れいみゅがいくよ!」 一番最初に親れいむの元へと顔を見せたがったのは、親れいむの真上に実ったれいむだった。 この赤ちゃんれいむは、蔦の中心部に実っていたため、親れいむの声も聞き辛く、 葉に視界を邪魔されて景色を楽しむこともできずに寂しい思いをしていたのだ。 主張のために、ぷるぷると身を震わす。一緒に揺れるリボンには―― 【れ-4】 ――と、書かれた小さいタグが付いている。 タグは姉妹全てが付けていたが、彼女達は飾り程度にしか認識していない。 れいむもまりさも関係ない、仲良し姉妹のおそろい飾りだと。 「ゆーじゅるいよー」 「ゆ! そんにゃこといっちゃ……め!」 「ゆー! れいみゅはすねただけちゃよまりしゃおねーしゃん」 「わかっちぇるよ! みんにゃにゃかよしねー?」 『ねー?』 「じゃあいっておいちぇ!」 ゆっくり姉妹は仲良し姉妹。 みんなわかっていたのだ。彼女が寂しいことも、最初にいかせてあげるべきだとも。 姉妹に祝福され、赤ちゃんれいむは再度、身を震わせる。 今度は蔦から自分を切り離すためのものだ。 「ありがちょー! ゆっくちいくよ!」 『ゆっくちゆっくち!!!』 「ゆ……ゆ……ゆっくちー!」 プチンと軽い音とともに、赤ちゃんれいむの頭は開放感を得た。 今まであった愛する母との繋がりを失いはしたが、赤ちゃんれいむに悲しさはない。 いわば儀式の様なものである。古い繋がりを捨て、新しい親子の繋がりを得るのだ。 これからのことを思い、笑顔の赤ちゃんれいむは落ちていく。 ぽてちんと、親れいむの額で跳ねてワンクッション。 「ゆゆ~ん♪」 「ゆー! れいみゅのいみょーとおしょらをとんでるみたい!」 「おかーしゃんがゆっくちしゃせてくれちゃんだね!」 「ゆっくちおちちゃらじめんしゃんでいちゃいもんね!」 「おきゃーしゃんありがちょー!」 「まりしゃちゃちのおかーしゃんはゆっくちしてるね!」 赤ちゃんれいむはしあわせを感じていた。 優しいお母さん。お母さんの顔はどんな顔なんだろう。 背を向け、母の額から跳ねて落ちる赤ちゃんれいむは、楽しみでしょうがなかった。 お母さんに言う言葉は決めている。「ゆっくりしていってね!!!」だ。 その次はどうしよう。嬉しすぎてその次は考えていなかった。 言いたいこともしたいこともたくさんある。そうだ。綺麗に着地できるかな。 続く姉妹の手本になればいいな。上手くできたらお母さんは褒めてくれるかな。 次々と考えが浮かんでくる。赤ちゃんれいむの目はしあわせに輝いていた。 「ゆ~ん♪ 」 「…………ゆ?」 なにやらおかしい。 いつまでたっても、姉妹の「ゆっくちしちぇいっちぇね!!!」が聞こえない。 流石にゆっくりしすぎではないだろうか? 赤ちゃんゆっくり姉妹は各々首をひねった。 「おかーしゃんれいみゅは?」 「ゆ! まだー? れいむのかわいいあかちゃんまだなのー?」 挨拶が聞こえない事を疑問に思った長女れいむが、親れいむに声をかけたが…… 返ってきたのは催促の声。 姉妹達の中で不安が高まっていく。 のん気な母の声に感情を動かされながら、おそるおそる長女れいむは再度訊ねた。 「おかーしゃん……れいみゅのいみょーちょのれいみゅは……いにゃいの?」 「まだだよ! れいむのあかちゃんゆっくりしすぎだね! あかちゃんにあいたいよ!」 『ゅ゛ーっ!?』 異常だ。 先に落ちた姉妹は、怪我をして声を出せないわけではなく、“そこにいない”。 赤ちゃんゆっくり姉妹は驚愕に身を震わせた。 互いに目をあわせ、頷きあう。 “お母さんはまだ何も知らない。心配させない様にまだ黙っておこう!” 一緒の母から生まれた姉妹。思うことはみな同じだ。 そう誓い、現状を把握すべく、姉妹達はきょろきょろと動ける範囲で身を動かす。 生まれたばかりという理由もあり、家族に会えた喜びに浸って周りが見えていなかった。 先にこうしておくべきだと、もう少し注意をしておくべきだったのだと。 幼さにあわぬ考え。 しかし、生まれ持った知能の高さ故に、姉妹にとってそれは当然のこととして認識されている。 「ゆゆっ! おねーしゃんじめんしゃんがとーいよ!?」 「ほんちょ! どうじぢぇぇぇぇぇぇ!?」 「おかーしゃんのいるびゃしょはせまいにょぉぉぉ!?」 「まっちぇね! まりしゃもみゆかりゃまっちぇね!!」 「なんぢぇー!? どーいうこちょー!?」 そして、その知能の高さ故に、彼女達は自分が置かれた事態を把握し、恐怖に泣き叫んだ。 泣き叫びながらも、親れいむに心配をかけないようにと、全員がなるべく声を押し殺していたことは特筆に価する。 「ゆ? あかちゃんたちにぎやかだね! おかあさんをなかまはずれにしないでね!」 「ゆゆっ!? おかーしゃんちょっとまっちぇちぇね!」 「ゆ? ゆっくりまつよ!!!」 親れいむに待ってとお願いし、赤ちゃんゆっくり姉妹は状況を整理することにした。 幸い、親れいむはゆっくり待ってくれている。今は。 姉妹全員が得た情報を集めると、だいたいこういうことがわかった。 ●お母さんは何か長くて高いものに乗っていること。 ●おそらくお母さんの座っている場所は狭くて、他の皆は乗れないだろうということ。 (親ゆっくりが固定されているのは、幅5cm・長さ1.5mの棒の上である) ●そのため、自分達は地面さんからとても遠くて高いところにいること。 ●地面さんは色んな種類の綺麗な色だということ。 ●この高さから落ちるとどうなるの? ●……ゆっくりできないんじゃないかな。 「ゆゆゆっ! だいじょーびゅだよ!」 「まりしゃ!?」 「ほら! おかーしゃんとおなじくりゃいのたかしゃにもじめんしゃんがありゅよ!」 よく見れば、親れいむから離れた位置に、同じ高さの地面がみえる。 今いる場所からそこまでの距離は、親れいむ1.5匹~2匹分の幅だろうか。 「おかーしゃんがぴょんしちぇくれれびゃみんにゃたすかるよ!」 「おかーしゃんならいけりゅね! おかーしゃんここかりゃむきょーにぴょんしちぇね!」 「おきゃーしゃんぴょん!」 「ぴょん!」 「ゆ? ぴょんってなーに?」 『ゆ゛ぅぅぅぅぅう!?』 成体ゆっくり2匹分の幅。 自分達では無理だろうが、大きなお母さんなら跳び越えられる! そんな姉妹の希望は即座に打ち砕かれた。 5cm幅の足場での跳躍。難しいかもしれないが、一般的なゆっくりなら可能であったかもしれない。 が、この親ゆっくりは、生まれ落ちた時には既に、運動能力を削がれていた。 主な生活場所は1匹用の水槽。たまにみる仲間も同様、運動能力を削がれた個体。 動けずとも、餌は研究員が食べさせてくれた。 最初から運動はできず、運動という行為を見聞きすることもなく知らず、動けずとも不満はない。 まったく動けないわけでもない。暇なときは上下左右に体を揺らしたり、軽く身をひねる。たのしい。 そうやって、ずっとゆっくりしてきたのだ。これまでも、そしてこれからも。 「ゆっゆぅぅぅぅぅぃぃぃっ!! おかーしゃんごめんにぇぇぇ!! みんにゃごめんにぇぇぇ!!」 「ゆ? ゆ? あかちゃんなんであやまるのー?」 親ゆっくりに“ぴょん”の説明をしている途中で、赤ちゃんまりさは気付いてしまった。 理由はわからないが、母親が運動をおこなえないこと。それを理解できないことに。 だから、自分の不用意な発言が、母を傷つけ、みなに余計な希望を持たせたと、赤ちゃんまりさは思った。泣いた。 「まりしゃなきゃないちぇね!」 「……まりしゃ?」 泣く赤ちゃんまりさをなだめたのは、もう1匹の赤ちゃんまりさ。 ちょうど、親れいむの左右に実った赤ちゃんまりさ2匹は、互いの顔を合わせたことがない。 6姉妹の中でまりさ種は2匹だけ。 他の姉妹も大好きだったが、同じまりさ種同士の仲間意識がなかったといえば嘘になる。 その顔も知らない、言葉を交わすだけの姉妹が、自分を励ましてくれている。 「ないちゃらおかーしゃんもみんにゃもきゃなしーよ?」 「そうちゃよ! れいみゅちゃちもきゃなしーよ!」 「みんにゃ……」 雨降って地固まる。 結果として姉妹・家族の結束を強くする出来事となった。 見方を変えれば選択肢のひとつが減って、尻に火がついたといったところだが。 「まりしゃはまりしゃでしょ! しみゃいのいきおいににゃるんちゃよ!」 「……ゆ、まりしゃ……ありがちょー」 「まりしゃなきやんぢゃね! まりしゃしゅごいね!」 「ゆー! まりしゃはしゃっきもたくしゃんのことをおしぇーてくれちゃね!」 「でみょむりしにゃいちぇね!」 励ました方の赤ちゃんまりさは、親れいむの左外側に伸びた蔦の一本に生っていた。 その環境と持ち前の行動力で、限界ぎりぎりまで身をひねって、周りの情報を集めていたのだ。 現に姉妹が手に入れた情報の多くは、彼女からもたらされたものが多い。 長女れいむは、そんな勇敢な妹まりさを誇りに思っていたが、同時に危うくも思っていた。 蔦から切り離されるとき―― それは赤ちゃんが落ちても大丈夫なぐらい成長した結果、その自重で落ちる。 あるいは(ある程度成長しているという前提がつくが)、外敵に襲われた場合、 刺激によって目覚めた赤ちゃんが、体を揺すって自力で蔦との繋がりを切って逃げる。 あとは成体ゆっくりが切り離してくれる場合だが、前の二例ともに蔦が離れやすくなっている。 今の姉妹は、生まれ落ちる準備ができているため、蔦は動き回れば切り離されやすく、例え動かなくとも自然に切り離される。 後者の理由で赤ちゃん達は急いで対策を立てる必要があり、前者の理由で長女れいむはまりさの行動を心配していた。 今もまた、まりさは体をひねって下界を見下ろそうとしていた。先に落ちたれいむの姿を探しているのだろう。 「ゆー! みゅりじゃないよ! みんにゃのためにゃらまりしゃにちょっちぇ――」 プチンと音が聞こえた気がした。 「――ゆ?」 音と一緒にまりさの体が軽くなった気もした。先ほどまで見えなかった景色が目に入ってくる。 姉妹達が見つけたかったものが……見えた。 「れいみゅおねーしゃん――」 ――まりしゃのいみょーとのれいみゅいたよ? このまま落ちると姉妹がどうなるのか。 先に落ちた赤ちゃんれいむがどうなったのか。 これから自分がどうなってしまうのか。 赤ちゃんまりさは、ゆっくりと理解し……姉妹の視界から消えた。 「…………」 「…………」 「…………」 「……まりしゃーっ!?」 「まりしゃおねぇーしゃぁぁぁぁん!?」 「ゆー!? ゆー!? まりしゃがどうしちゃの!? まりしゃのしみゃいのまりしゃどうしちゃのー!?」 自分の見えぬ場所で何が起こったのか? 泣く自分を慰めてくれた姉妹が何故、泣き出したのか? 赤ちゃんまりさはわからなかった。わからなかったからこそ不安でたまらなかった。 もう一匹のまりさが、まりさがどうなってしまったのか? 「……ゆっぐ……ゆっぐ」 「……おちちゃった。れいみゅのいみょーとのまりしゃ……おちちゃった」 長女れいむが嗚咽を堪え、幼いなりに努めて冷静に、残った赤ちゃんまりさに事実を告げた。 姉妹がどうなったのかを伝えられた。……が、頭がついてこない。 それでもゆっくりと、ゆっくりブレインにその意味が染みこんでくる。 ……顔をみたことのない、もう1匹のまりさとはもう二度と会えない。 理解がおよんだとき、色んな感情が堰をきって流れ出そうになる。 「……ゅ……ゅぁ……っ……ゅぁ」 「りゃめ! にゃいちゃりゃめ! おかーしゃんがかなしみゅよ!」 「……ゆっぐ!」 そうだ。親れいむを悲しませてはならない。 皆で誓った。先ほど母を悲しませてしまった時、あのまりさが止めてくれた。 ここで自分が泣けば、尊いその行為を無駄になる。残された赤ちゃんまりさは、堪えた。 無駄にしないために。あの姉妹の行為を無駄にしないために。 その思いは残された姉妹も一緒。ゆっくりするよ!!! 心は一つ。 と、赤ちゃんゆっくり達はイベント満載であったが、頭上のドラマを知らぬ親ゆっくりは暇であった。 いつまでたっても、赤ちゃんが顔を見せてくれない。 待っててと言われたが、まりさと聞いて視線を上にやれば、目に見える赤ちゃんは2匹。 「ゆ~? そういえばまりさがいないよ~? どこーまりさどこー?」 のん気なことを言う。 母の言葉に子供達は震えていた。言えるはずがない。 母を思って押し黙る赤ちゃん達であったが、親からすれば返事がないだけのこと。 待てといわれ相手にされない。 親れいむは待っていてもよかった。ずっと1匹でゆっくりしていてもよかった。……いつもなら。 しかし今は話が違う。赤ちゃんが生まれ、親れいむは1匹ではなくなった。 一緒にゆっくりしたい。その欲求を満たしたいのだ。 「れいむのあかちゃんゆっくりしすぎだよ? ゆゆ! そうだ! おかあさんがゆっくりおろしてあげるね!」 待ちきれなくなった親れいむは、名案とばかりに体を揺らす。 あわせて揺れる頭上の蔦、葉、赤ちゃんゆっくり。 ガサガサと葉がすれる音はリズムカル。 「ゆっゆゆー♪ あーかちゃんゆっくりおーちてーきーてね♪」 歌い出すぐらいごきげんになる名案。親ゆっくりにとってはそうかもしれない。 が、赤ちゃん達にとっては名案でもなんでもなく、死を早める行為に他ならない。 「ゆ! ゆぅぅぅぅっん!?」 「やめちぇね! おかーしゃんゆっくちやめちぇね!?」 「おきゃーしゃぁぁぁんっ!?」 「れーみゅちゃちがゆっくちできにゃくなっちゃうにょぉぉぉ!!」 「ゆ! わかったよ! ゆっくりやめるよ!」 親れいむは愚鈍ではあったが素直で聞き分けはよかった。 この点は感謝してもよく、幸運であったともいえる。 それで事前の愚行がなかったことになるわけではないが。 間違いなく、今の揺れで赤ちゃんと蔦を繋ぐ接点は脆くなっただろうから。 元より残された時間はわずかだった。赤ちゃん達の時間は更に削がれた。 「ゆっゆっゆっ……!」 「……ゆふー」 急がねばならないのはわかっている。考えねばならないのもそう。 しかし幼い生命にとって、今をなんとか生き延びたこの瞬間から、 脳裏にちらついた死の恐怖を遠ざけ平静になろうとする時間を誰が責められようか? 恐怖は転じて生への執着でもある。落ち着きを取り戻す中、生きようとする意志が、1匹の赤ちゃんに閃きをもたらす。 その1匹は、しばし真剣な顔で前後の揺れに身を任していた。 冷静になった状態で揺れを体感し、自分の考えを実行する。 「ゆっ!」 「……ゆ! ゆっくちしてきちゃよ! ……れいみゅ?」 「ゆっ!」 声をかけられた赤ちゃんれいむは、揺れ幅の頂点で力み、自ら体を動かして勢いをつけ揺れ幅を広くしていく。 親れいむの正面付近に生る長女れいむから、親れいむの右横よりやや後ろに生る、この赤ちゃんれいむの姿はみえない。 何やら力んだ声が聞こえてくる。 長女れいむは、残った方の赤ちゃんまりさ――親の右側に生った子に声をかけた。 「まりしゃ! まりしゃにゃられいみゅがなにしちぇりゅかわかりゅ?」 「ゆ! まりしゃにょうしりょのれいみゅはびゅんびゅんいっちぇりゅ!」 びゅんびゅん? なんのことだろうと不思議に思ったが、その答えは本人から語られた。 親ゆっくりが揺らした事をヒントに、振り子運動の力を借りて、向こうまで飛べないかと。 「ゆゆっ!」 なるほど。ひょっとするといけるかもしれない。 「でもあぶにゃいよ! ぷっちんしておちちゃうかみょしれにゃいよ!?」 「しょーだよ!」 「ぢぇも! こにょみゃみゃだとおちちゃうよ!」 何もしないままでも落ちて、ゆっくりできなくなる。それは皆にもわかっていたことだ。 状況を打破できる術があるのなら、たとえリスクを抱えてもやるべきこと。 特に長女れいむは、そのことを痛いほど感じていた。責任感があった。 ほんの十数秒早く目を開けただけの僅かな差。それだけではあったが、それが長女としての意識を芽生えさせた。 ゆっくりにしてみれば、それだけで十分。 「ゆ! わかっちゃよ! じゃあおねーしゃんがしゃきにとぶよ!」 まずは自分が飛ぶ。危険なことを先に妹にやらせるわけにはいかない。 自分が飛んでいる間に、他の姉妹が別のアイデアを練ってくれるかも知れない。 「だめりゃよおねーしゃん! れいみゅがしゃき!」 「……ゆっ!?」 「れいみゅがしゃき! おねーしゃんはおねーしゃん! みんにゃのしょびゃにいちぇね!」 赤ちゃんれいむの振り子の動きが、速く大きくなっていたこともある。蔦がもう持たないかもしれない。 そんな理由もあったが、今口にしたことが一番の理由。姉妹の精神的柱になっていて欲しい。 大きく動く右側の赤ちゃんが、蔦から離れるのも時間の問題だということもあり、長女れいむは困ったが納得した。 もうこの赤ちゃんれいむは飛ぶしかないのだ。 「そりょそりょいくにょ……!」 前、後。前、後。前、後。前、後。前……。 勢いは十分。よく見ていてね、と姉妹に言う。次に飛ぶ姉妹の参考になるだろうから。 もし失敗しても、とは言わなかった。 この回で飛ぼう。決意が鈍らないうちに。 ……後。勢いを利用して前に出る。いける、いくしかない。ゆっくりするために。 そのためには、前方の頂点に達するより先にやらなければならないことがある。 加速を得た赤ちゃんれいむは、勢いの力を借り頭部に力を入れて――蔦を切り離した。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅっ!!」 宙を舞う。 蔦という枷から解き放たれ、より前へ。 「ゆゆっ!? ゆーっ!」 赤ちゃんまりさはみた。背後にいた姉妹の背中を、勇気ある姉妹の姿をみた。 「がんばっちぇ!」 「ゆ! れいむのあかちゃん? あかちゃんとんでるの!?」 「れーみゅのおねーしゃんおしょりゃをちょんぢぇるにょ!」 「いきぇぇぇぇ!」 長女れいむと、その傍にいる赤ちゃんれいむが激を飛ばす。 お母さんが自分の姿を見てくれている。 「ゆゆーん! ゆぅぅぅぅーん!!」 飛んでいた。皆の思いに支えられ、何物にも邪魔されることなく飛んでいた。 目指す場所が近づいてくる。いや、自分が近づいているのだ。着地するために。自由を得るために。 壁が近くなる、もうすぐだ。……壁? 赤ちゃんれいむは気付いてしまった。高度が落ちているのだ。 「――ゆびゅっ!」 失敗は激突によって告げられ。失敗の結果は落下。 2cm……いや1cm高ければ、運命は変わっていたかもしれない。 だが最初のチャレンジャーの挑戦はもう終わり。もう二度と挑むことも、ゆっくりすることもない。 また1匹、姉妹がゆっくりできなくなってしまった。信じたくはない。が、赤ちゃんれいむがぶつかった場所には染み。 皮肉な話だが、それが赤ちゃんれいむの生きていた証となっている。“生きていた”、だ。 「ゆ~? れいむのあかちゃんどっかいっちゃたよ?」 赤ちゃんがどこにいったのか、不思議そうな母れいむ。 もうここにいない姉妹を思って、残った赤ちゃんゆっくりは泣きたかった。 「ゆ! でもいいよ! れいむはゆっくりまつよ! つぎはだれ!? れいむにおかおをみせてねあかちゃん!!!」 子供とゆっくりしたくてたまらない、そんな母の和やかな声が、赤ちゃん達の悲しさと申し訳なささを増加させる。 残るは3匹。その内の1匹、全姉妹の中で最後に目覚めた末っ子れいむの、感情は決壊寸前。 「まりしゃがいくよ!」 「……ゆ?」 外に流れ出してしまいそうな、末の子の感情を押しとどめたのは、まりさであった。 まりさがやるんだ。体を前後に振り、飛ぶための加速を得ながら、まりさは思う。 もう1匹のまりさは、自分を励まし皆を元気付けた。 飛んだれいむは、先に行くことと意思をみせた。 勇気あるものの行為は、皆の勇気をも奮い立たせる。誰かが笑えば皆も笑える。 まりさはそれがまりさの生き方なのだと、ゆっくりまりさのあるべき姿なのだと、そう心で理解した。 「……ゅ……まりしゃおねーしゃん……」 「まりしゃ!」 「ゆん! ゆん! ゆ……っん! あんしんちちぇね! まりしゃのかりぇーなちょーやくにおどりょいちぇね!」 誰も泣かせない。だから自分も泣かない。不敵に笑う。皆が笑える先を作るために。 泣き虫まりさはもういない。先に行ったまりさを見たとき、皆が誇りを抱き、先に進もうと思える、そんな背を持つゆっくりになるんだ! スポンという音が聞こえた気がした。すぽん、かもしれない。 結論だけいえば、決意をしてからのまりさは最期まで泣かなかった。二度と泣くことはなかった。 「…………」 「…………」 あまりにも唐突。残された赤ちゃん達は、流れるように起こった事象に、泣き出すことも叫ぶこともなく、ただ呆然とする。 理解が追いついてこない。いや、少し時間を置き何があったのかの理解はできた。理解したくないだけだ。 だが現実はそれを許さない。目の前では、蔦にぶら下がった黒いとんがり帽子が揺れている。 振り子運動を繰り返すのは帽子のみ。視界から帽子が消え、また戻ってくる度に、帽子の下にまりさがいるのではと――そんなことはなかった。 残る姉妹は2匹。 長女れいむと末っ子れいむ。6匹いた姉妹の中で、一番近い距離にいた姉妹だ。 「れいみゅ……」 長女れいむは悩む。 自分は飛ぶ気でいる。姉妹の行為を無駄にしないために、残された者の務めとしてゆっくりする未来を勝ち取るために。 妹を残して飛ぶのは気が引ける。もし自分が失敗すれば、末の妹だけ残していくことになる。 母も残っているが、自分以外の姉妹がいなくなってしまったという悲しさに、彼女は耐えられるのだろうか。 現に今も、小さく揺れる黒い帽子を眺めたまま動かない。や、無言で小刻みにぷるぷると震えている。 ゆっくり達は知るよしもなかったが、長女れいむが最初に目覚めた事から、年長者の責任に目覚めたのと同じ様に―― 末っ子は最後に目覚めたことと、長女れいむがそばにいたことで、他の姉妹より精神が幼く、他者にやや依存する傾向があった。 そんな理由を長女は知らないが、妹が残されることに耐えられるとは思わなかった。 ならば自分が横で見守り、励まし、助言を送りながら、妹を先に飛ばせるべきか? 否、先に飛んでねといえば、彼女は泣くだろう。落ちていった姉妹の恐怖がこびりついている。 ならば同時に飛ぶべきか? 否、自分にあったタイミングで飛ぶべきだ。下手に相手にあわせて距離が足りなければ意味がない。失敗は許されないのだ。 ならば答えはひとつしかない。 「れいみゅ……ゆっくちきいちぇね……おねーしゃんがしゃきにとぶよ」 「――ゆゆっ!?」 末の妹の意識が、長女の言葉で現実に引き戻される。同時、妹の浮かぶ表情は驚愕。そして悲嘆。 「れーみゅをおいちぇかないぢぇぇぇぇ! いっしょにゆっくちしよーよーっ!?」 「……れいみゅ」 できることならそうしたかった。 あるいは別の方法を一緒に考えてもよかった。 ……今なら、2匹だけになった今ならとれる方法もある。 皆がいたときは言い出すことはできなかった方法。偶然にも残った2匹は、母の正面側に実った姉妹。 狙いをすまして落ち、母に舌で受け止めてもらい口の中に避難する。向こう側に飛ぶよりも安全な方法だ。 「だいじょうぶだよあかちゃん! おかあさんがいっしょだよ!」 「ほりゃ、おかーしゃんがいるよ? だかりゃあんしんちちぇね?」 安心できる声。お母さんの声に、長女れいむの不安も薄らいでいく気がする。 お母さんはきっと受け止めてくれるよ、れいむ。疑いはない。 けれど長女れいむは飛ぶことを選ぶ。先に進むべきだと、それが残されたものが受け継いでいくことだと思うから。 「れいむ……とぶのがこわかっちゃりゃ……おかーさんにうけとめちぇもらうんぢゃよ?」 「ゆっぐ……ゆっぐ……ゆっぐ……」 妹は聡い子だ。返事はなかったが理解してくれているだろう。 前に飛ぶために、加速を得るために、長女れいむは体を動かす。 お母さん――れいむ達を産んでくれて、うれしかったよ。 れいむ――長女である自分が浮かれていないで周囲注意をくばっていれば、あんなことにならなかった。ごめんね。 まりさ――本当は自分がしなければいけなかったのに、皆を引っ張っていってくれた。ありがとう。 れいむ――皆が見た背中はとても頼もしかったよ。勇気がでたよ。がんばるね。 まりさ――泣かなくなったね。自分だけじゃなく、妹の涙を止れる子になったね。つよいね。 れいむ――お姉ちゃんが飛んだら、れいむは泣きやんでくれるかな? 感情を込め、力を得る。喜びも悲しみも、立ち止まるためではなく、巡り巡って、前にただ前に進むための糧となる。 速く速く、強く強く、前へ前へ。 こんな状況でなければ楽しかったのだろう。だが笑う。快と長女れいむは笑う。 生きるために、妹に何かを残すために。 皆! 一度でいいから力を貸してね! 不出来なお姉ちゃんが、立派なお姉ちゃんとしてやり遂げるために! れいむは飛んだ。 高くより高く。 前へより前へ。 目指す場所へ、ぐんぐん近づいていく。高台より更に高く、長女れいむは宙を飛んでいる。 身を任すではなく、意志によりれいむは風になった。進むべき風に。留まることのない風に。 次は着地だ。飛ぶ時間は思うより短い、早々に心の準備を決め。衝撃に備える。 高さは十分だった。が、着地の構えによる動きのせいか、若干軌道が変わった。着地地点が僅かだが、台の端にずれる。 このままでは、着地の際にバランスが崩れ、落ちてしまう―― 「――ゆんっ! ぐぅっ!」 前へ。 体重と勢いを前半身にかけ、進むことの意志を押し通す。 鈍痛が幼いれいむの体を支配しようとする。否。ここで痛みに飲まれることも流されることも、否。 ここまで来た。ならば前へ。前へと意志を通す。落ちるわけにはいかない。 はねる。 勢いそのままに、地面に叩きつけられた衝撃が全身に駆け巡る。 前へ進むことを選んだ結果、直前で受身を放棄した結果がこれだ。痛みはあれど、後悔はない。 始めて触れる地面さんは固かった。それでも、触れれることが喜ばしかった。 ころがる。 れいむの体は台の外ではなく、内へ。 姉妹達の想いを胸に長女れいむは到達を成し遂げたのだ。 やったよ皆。やったよお母さん。やったよれいむ。れいむはやったよ。 地面さんは痛かった。でも、お母さんは柔らかいに違いない。妹と一緒にふかふかー、ゆっくりー!!! するんだ。 そうだ! 早くお母さんにれいむの無事な姿をみせてあげよう。れいむもお母さんのお顔をちゃんとみたい。 早く妹にもお姉ちゃんは大丈夫だよって言わなきゃ。妹を早く安心させて、ゆっくりさせてあげなきゃ。 ――泣きやんでくれたかな? れいむは妹の涙を止めてあげられたかな? 痛みが引き始めたれいむが、目を開けて見たものは、母の顔でも妹の笑顔でもなかった。妹の泣き顔でもなかった。 遠い遠い地面だった。 「ゆ~~~? れいむのあかちゃんきえちゃったよ?」 母れいむは、今度こそ自分の赤ちゃんを見失うことはないと思っていた。 今回飛んだ子は、視線をあげれば見える位置。頭上でぷらぷら動き出したときから、しっかりと目を離さなかった。 飛んで自分から離れた場所に乗るのもきちんと見た。のに忽然と消えたのだ。不思議だ。 だけど母れいむは楽しかった。初めてなる母親というのは新しいできごとばかり。 赤ちゃんは飛ぶ。赤ちゃんは消える。自分にはできないことだ。 母れいむも赤ちゃんだった頃があったはずだが、そんな経験は無い。でも、きっとできたに違いない。 「ゆ? ゆゆゆゆゆっ!?」 急に髪が痛くなった。少し重い気がする。 今までなかったことだ。これも母親になったからに違いない。赤ちゃん達ができたときも頭の上が重くなった。似ている。 「ゆーん……れいむどんどんおかあさんになっていくよー」 だらしのない笑みを浮かべる母れいむ。しあわせー。 これからはもっとしあわせーだ。母れいむは1匹だけではない、家族がいる。どんどん新しい発見と喜びがあるだろう。 赤ちゃんに色んなことを教えてあげよう。ごはんは美味しいよ。みんなで食べたらもっと美味しいかな。 「……ゆ? だれかよんだ?」 考え事の途中、赤ちゃんに呼ばれた気がして、母れいむは頭上の赤ちゃん達に訊ねた。返事はない。 気になったが、何度もしつこく訊ねるような事はしない。にんげんさんに教わった。れいむはいい子だからそれを守れる。 ああ、そうだ。そのことも赤ちゃん達に教えてあげないと。にんげんさん達にも可愛い赤ちゃんをみせてあげないと。 楽しい未来に想像をめぐらせる。母れいむが好きな遊びだ。にんげんさんは忙しいから、母れいむはこの遊びに興じることが多かった。 でも、もう1匹じゃない。早く赤ちゃん達と皆でゆっくりしたいな。母れいむは楽しみで仕方がなかった。 いつの間にか、髪の重みは消えていた。 ■点数発表 +0点:れいむ4、まりさ1、まりさ2 +1点:れいむ1 +2点:無 +3点:れいむ2 +10点:無 -2点:れいむ3 昼までに各自が選んだ3匹の得点合計合計をすましておきます 2位までが集めた参加費を使って食堂でタダ飯喰ってください シャレで作ったマイナスゾーンに落ちたれいむが勝敗を分けた わりと飛ぶもんですね飛びすぎたせいで暫定1位からビリ辛い このSSに感想を付ける
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※舞台は現代的な感じがしなくもないどこか ※儚月抄のネタバレが若干あります ※あ○きィィィ!さんごべんなさい 「なあ、お前、よっちゃんどう思うよ?」 突拍子のない質問をぶつけてきた野郎は10年来の腐れ縁の悪友だ。 手には大きめのサラダボウルと袋入りの食用赤ゆっくり姉妹(れいむ&まりさ)が握られている。 「おいおい、親友が来てるってのにケチるなよ?ちぇんとかぱちぇ出せよ」 「誰が親友だよ?で、お前はよっちゃんどう思う?」 「いや、よっちゃんじゃわかんねえよ。世直しマンか?ヨミ様か?」 突っ込みながらも悪友の作った2人分のコーヒーを机まで運ぶ。 初めてこの家に来たときから変わることなくその部屋にあり続けるボロい机。 俺が描いた落書きの怪獣は相変わらずの馬鹿っぽい咆哮をあげている。 「あれだよ、依姫様だよ」 「ああ、儚月抄か。俺は好みだよ、よっちゃん。神話じゃあ自分の甥っ子を抱いちゃうし、きっと乱れると凄いぞ」 「お前の好みは昔から知ってる。よって言わんでよろしい」 一足先に座布団の上に座った俺を見下ろしながら、サラダボウルを机の上に置く。 そのまま自分用の座布団を引っ張り出し、腰を下ろすと、スナック菓子のそれと良く似たデザインの袋を開封した。 瞬間・・・ 「ゆぅ・・・もうあしゃにゃの?」 「「ゆっくちおきりゅよ!」」 「「「「ゆっくち!」」」」 「「ゆゆ〜ん!」」 などなど、総勢33匹の赤ちゃんゆっくりれいむ&まりさがおしゃべりを始める。 ゆっくり達の声が袋から溢れ出し、俺と悪友だけの狭っ苦しい部屋は急に賑やかを通り越して喧しくなった。 「○女の宅急便のキキを観ながら言ってたもんな」 「こういうすました奴ほど、堕ちた時にはどこまでも堕ちて行くんだ、ってか」 「・・・絶対妹には近づくなよ?」 「残念、既にゼロ距離射撃ずm・・・ごめんなさい!冗談!冗談です!冗談だからホットコーヒーはやめて!?」 何とかシスコンパワーで修羅と化した奴を落ち着かせ、がさがさと赤ゆっくりをボウルの中に入れる。 袋を揺するたびに赤ゆっくり達が「ゆゆっ!」だの「ゆぴぃ!?」だのと驚き騒ぐのが、いつやっても面白い。 そうして赤ゆっくりを全てボウルに入れ終えたところで、ようやく着席した悪友との会話を再開した。 「で、綿月のよっちゃんがなんだって?」 「いやな・・・俺のおぜう様のカリスマをブレイクしやがってけしからん、と」 「このロリコンめが!そんな調子だからあ○きィィィなんてあだ名を付けられるんだ!」 「俺、ルーミアは別に・・・」 冷静に返す悪友の傍らにはREXが10冊ほど積み上げられていて、その上には東方儚月抄の上巻と中巻が置かれている。 やれやれ・・・とため息を吐き、コーヒースプーン代わりのフォークを手に取ると、俺はそれサラダボウルの中へと誘う。 それを見たボウルの上のほうの赤ゆっくり達は一斉に「ゆゆっ!きょれにゃあに?」と首を傾げた。 「お前なぁ・・・カリスマブレイクも何も、緋想天のぎゃおーとか言ってる時点で既に・・・」 「・・・REXでも2冊あればガンガンと渡り合えるよな?」 余談ではあるが、この男は本当にバイオレンスな野郎で、デンジャラスなことを平然とやらかすところがある。 それゆえ、本当にREXが飛んで来やしないかと内心びくびくして、奴の手元を凝視する俺の手はまだサラダボウルの中。 「ゆーーーっ!きょれにゃあにっちぇいっちぇるでちょ!ゆっきゅちおちえちぇね!ぷきゅうううううう!!」 同時にボウルの中を覗き込む俺と悪友。 手に収まっているフォークをにさっきからずっと関心を示していた一匹の赤まりさが文句を垂れながら膨らんでいた。 流石は食用の赤ゆっくりだ。ゲスい言葉こそ使わないものの、ゆっくりの名に逆らうようにすぐに怒ったり暴れたりする。 その甲高い叫び声に話の腰を折られた気分になった俺は「なら教えてやるよ」と言わんばかりにそいつを突き刺す。 「ゆ゛っ!!」 「「「「「「「ゆっぎゅぢ!?」」」」」」」 不運なことに、その赤まりさはフォークを目で追いかけていた。 まりさ種の帽子のせいであまり広くない視野を補うために一生懸命下にいる姉妹の上を跳ねて、フォークの先端と向かい合うように。 つまり、赤まりさのほうをろくに見向きもしないで刺したにもかかわらず、ものの見事に彼女の目を刺し貫いていたのだ。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」 どことなく噛み付きそうな名前の不人気キャラが主人公の漫画みたいな感じで声にならない叫びをあげる赤まりさ。 一方、その光景を間近で見ていた上のほうの他の赤ゆっくり達は「やめちぇえええ!」だの「ゆっきゅちできにゃいいい!」だのと喚いている。 必死になってボウルの外に出ようとするが、このサラダボウルは結構な大きさがあるので最上段にいる赤ゆっくりさえもそれは叶わない。 「ん〜・・・チクショウ、いつ食っても安いくせにうめぇなあ・・・」 「まったくだ」 俺の感嘆に同意しながら、長い付き合いの悪友は怯えて固まっている赤れいむを指で摘む。 赤れいむは人差し指と親指の間でじたばたと暴れ、うにうにと体を捩って抜け出そうとしているが、当然無駄な努力だ。 30秒ほどその様子を観察していると、自力での脱出を諦めたらしく、大粒の涙をぽろぽろ零しながら命乞いを始めた。 「やめちぇね!やめちぇね!れーみゅゆっくちちゃいよ!」 「おにーしゃんもれーみゅとゆっくちちよーね!」 「ゆっくちー!ゆっくちー!」 そうして更に30秒後、赤れいむは問答無用でお腹の中に収まった。しかも生きたまま。 これは悪友の特技と言っても過言ではなく、直径2,3センチはあるであろう赤ゆっくりをいとも簡単に丸呑み出来る。 話し相手になるこちらとしては口の中から変な声が漏れ出して来るので話しにくいことこの上ないのだが。 「話を戻して、よっちゃゃんによるカリスマブレイクだけどさ・・・」 「ああ、オリキャラが俺TUEEEEEとか死ねばいいのに」 「待て待て。アレは俺TUEEEEEじゃないぞ。いわば妖々夢のメイド長状態だ」 どういうことだよ、と言いたげな表情をしている悪友の顔からいったん視線を外し、食べる赤ゆっくりを選ぶ。 すると、勘のいい赤まりさが身の危険を察知して姉妹のはずの赤れいむを俺のほうに突き飛ばしてきた。 そして「まりちゃはゆっきゅちしゅるよ!れーみゅはきゃわりにたべられちぇね!」などとテンプレなことをのたまっている。 「ふむ・・・」 こういう行動を見たとき、人間が取る行動は一つ。 差し出された、昨日まで仲良くしていたはずの姉妹に裏切られた可愛そうなれいむを避けて、残忍で狡猾なゲスを狙うことだ。 更に俺から距離を取るために下にいる姉妹たちも押しのけて潜って行こうとする赤まりさの尻にフォークを突き立てた。 「ゆぴぇん!?」 「で、どういう事なんだよ、妖々夢のメイド長状態って?」 「要するにあれだ。弾幕ごっこの妙味を分かっていない。だから加減の仕方がなってない。ボムを4つも搭載しちゃう」 永夜抄では実に瀟洒だった。普通のプレイでは物足りない殿方をどれだけ唸らせた事か、と付け加えてから赤まりさの様子を見る。 目線が合うや否や、自分の可愛さや賢さ、いかにゆっくりしているかを必死にアピールして許しを請う。 が、当然全て聞き流し、その上でこう言ってやった。 「仲間を平気で見捨てるようなゲスは嫌いなんだよ」 そして、その言葉を聞くや否や、今度は「れーみゅをいじめにゃいでにぇ!たべりゅんにゃらまりしゃをたべちぇね!」と主張し始める。 もちろん、本人がそう言うのであれば断る理由もない。彼女の言い分に従って、口の中に放り込んでやった。ただし、まだ咀嚼すらしていない。 すると予想通りにまたしても「たべるんなられーみゅを〜」と言い始めたので、口に赤まりさを含んだまま・・・ 「ゲスは死ね」 「ゆびゅ!?」 死の宣告を言い渡し、短いゆん生に幕を閉じてやった。 餡子の、涙の、目玉の、汗の・・・似ているようで少し違う甘味が、舌の上をじわりと広がっていく。 しばしその風味を堪能し、口直しに苦いコーヒーを一口啜った。 「なるほどなぁ・・・咲夜戦の厨攻勢なんかは本当に酷かったもんなぁ・・・」 「ゆぴぇええええええええええ!どうちちぇこんなこちょしゅるにょおおおお!?」 「射撃無効、つかカウンターに加えて、ボム(咲夜の世界)でも回避不能だからな。どこの夢想天生だよ」 「やめちぇね!ゆっきゅちできにゃいよおおお!?」 「スペカ2枚同時使用に加えて、初スペカに対して開幕ボムってやがったし・・・な?」 「ゆっきゅちちちゃいよおおおおおお!!」 流石に姉妹が3匹も食べられたとあっては冷静でいられるはずがない。俺だってこいつらと々立場だったらそうだろう。 しかし、久し振りに悪友と話している時に喚かれるのも不愉快きわまりない。 そんな訳で、俺は一番元気良く泣き喚いている赤まりさにフォークを突き刺し、目の前まで運んでからこう言ってやった。 「よし、これからはうるさくした奴から食べることにしよう」 瞬間、現在フォークを刺された痛みで苦しんでいる赤まりさ以外の、ボウルの中の赤ゆっくり達は静かになった。 赤ゆっくり達の聞き分けの良さに感動を覚えつつ、赤まりさを咀嚼すると、話を再開する。 「そういう訳だから、アレは相手のホームのルールで勝ってるよっちゃんSUGEEEEって描写ではないんだよ」 「つまりあれか。サッカーのルールを全く知らない奴が手を使って大活躍しているのを周囲が苦笑いしながら見守っている状態か」 「うむ。だから、月の都で弾幕ごっこが流行った暁にはよっちゃんは最強厨女として後ろ指を差される事になる」 「そして、昔の自分に対して『どうしてあんな馬鹿なことしたの、イヤン☆』となるわけか。意外と可愛いな、よっちゃん」 それが事実かどうかは神主のみぞ知るといったところだが、都合の良い解釈を得た悪友は少し満足そうだ。 すっ、とフォークを伸ばして手近な赤れいむに突き刺すと、コーヒーの中にフォークごと放り込む。 黒い水面がぶくぶくと泡を立てるその光景は、月の世界の賢者の海を彷彿とさせるものがあった。 「よし、そろそろかな?」 「ゆきゅう・・・にぎゃいいいいい・・・!」 すげぇ、結構な時間コーヒーに浸かっていたのにわりと元気そうだ。 が、元気だからどうなるということもなく、悪友の口の中に収まり、今度はしっかりと噛み潰して胃袋へと輸送された。 「レミリア戦に関しても結構分かっていない行動が目に付いたよな」 「アメノウズメか」 「うむ、あの神様は全裸でナンボだろうに。おっぱい晒せよ」 「いや、今は関係ねえだろ。それに作画女性、それセクハラだぞ?」 「いやいや、モクソンのおっぱいは実に良いものですよ?」 くっくっく、と何故か同じタイミングで笑いながら、同時にフォークをサラダボウルに伸ばす。 俺のフォークには赤れいむが、悪友のフォークには赤まりさが刺さっていた。 会話に熱中していたこともあって、この2匹は恐怖を味わうことなく噛み砕かれて永遠のゆっくりへと旅立っていった。 「あれも言ってみりゃ、曇天でもないのにジェリーフィッシュとロイヤルフレアを立て続けに撃つようなものだからな」 「それ曇天でも無理じゃね?なるほど、そりゃ負けても仕方ないわ」 「それどころか、散々地上のものではまず敵わないと言われていた月人を殴り合いではフルボッコしたんだから面目躍如だ」 「流石おぜう様じゃないか。それでこそ俺の嫁だ」 「俺の嫁とか現実で言うな、きしょい」 分別は付けろよ、と冷めた目で悪友を見つめる。 すると、自分の痛さを理解したらしく、咳払いをしてから儚月抄の話を再開した。 それから、照れ隠しなのだろうか、サラダボウルにフォークを伸ばし、1匹の赤れいむにこんな命令をした。 「フォークを咥えろ。断ったら食べる」 「ゆゆっ!ゆっきゅちきゅわえりゅよ!だきゃらたべにゃいでね!」 そう言って、硬い、しかもコーヒーに突っ込んでいたせいで苦味のあるフォークを涙目になりながら咥えた。 フォークを持ち上げると赤れいむの体は宙に浮き上がり、フォークがある一定の高度を越えた瞬間・・・ 「おしょらをとんでりゅみちゃああああああ〜・・・」 何も考えずにそんな言葉を口にして、かなりの高さからテーブルに叩きつけられた。 もっとも、打撃や衝撃には強い体と、軽い体重のおかげで致命傷を負うような事はなかったが、かなり痛そうだ。 「ゆぴぇええええん!いちゃいいいい!いちゃいよおおおお!」 ゆっくり起き上がったれいむは飛び跳ねることも、這いずることもせずにその場にへたり込んで泣きじゃくってしまった。 が、10秒後に悪友がさっきの命令を再び声に出したところ、自分の失態に気がついたれいむは、口と目を大きく開いた驚愕の表情で硬直した。 更にその3秒後、れいむは生きたまま悪友のお腹の中に収まった。 「それだけじゃないぞ。依姫はガチでやり合ってもそんなに強くないかもしれない」 「マジで?余裕こいてたし、実際強かったじゃん?」 「メイド長に2回後ろを取られている。レミリアに殴り倒されている。同種の格下能力者に苦戦している」 「いや、メイド長は仕方な・・・」 「仕方ないだろ」と言おうとした時、ドアをノックする音が室内に響いた。 悪友が「おー」と気のない返事をすると、ドアが開き、ショートヘアの見目麗しいセーラー服の女子高生が姿を現す。 どうでも良い事かも知れないが、一応説明しておくと悪友の妹である。 「あ、お久し振りです〜。お兄がいつもお世話になってます〜」 「お兄のお世話してやってます〜。ってことで結婚してくれ!」 「あはは、相変わらず〜。っと、赤ゆん貰ってくよ〜」 悪友の肩に手を乗せて頭にお腹をのっけた格好でサラダボウルを覗き込む。 セーラー服のスキマから、小さな可愛らしい膨らみが見えそうで見えないのがもどかしいが、本人は全く気にしていない。 ひょいひょいと11匹の赤ゆっくりを摘み上げて、まくったスカートのすそに放り込む。見たところ、ズボンやスパッツは穿いていなかった。 お嬢さん、君は何でこうも無頓着なんだい?まあ、幼馴染の上に、兄貴みたいなものだから異性として意識されにくいんだろうけどさ。 「「「「「「「「「「「やっちゃあ、こりぇでゆっきゅちできりゅよ!」」」」」」」」」」」 「「「「「いーにゃ!いーにゃ!」」」」」 「「「「「れーみゅもゆっきゅちちちゃいよぉ」」」」」 「「「「「まりしゃも!まりしゃも!」」」」」 スカートのすその上で喜ぶ赤ゆっくり達。しかし、残念無念のご愁傷様。 俺たちよりもその子はずっと美味しく赤ゆっくりを食べる子だよ。まあ、知らぬが仏だ。とやかく言うこともないだろう。 知ったところでどのみち行き先は想像を絶する地獄だろうしな。 「んじゃ〜、ゆっくりしていってね〜」 「ああ〜、ゆっくりしていくよ〜」 そう言って、妹ちゃんはあっさりと悪友の部屋を後にした。 その後に残されたシスコン気味の悪友の鋭い視線から目を逸らしつつ、白々しく話題を戻す。 「そう言うけどな、地上人では絶対敵わないってんならそれこそ『それは月人が1000万年前に通った道だ!』と言いつつ、無効化しても良いじゃないか」 「・・・何という依 海王」 「実際、致命的だぞ。神霊には同じ神霊使いをぶつけて対策を立てましたが、時間停止を無効化出来ませんってのは」 「火雷神もしっかり時間停止で止まってたしな」 「弾幕ごっこでは一応勝ったけど、言ってみれば『1勝のために2回殺された』と言っても過言ではない状況じゃないか」 「・・・何という花山 咲夜」 それに・・・と呟きながら、フォークをボウルの中でさまよわせる。 動ける赤ゆっくりの多くは必死に逃げ惑っているが、さっき妹ちゃんが大量に連れて行ったことで色々状況が変化したらしい。 中には最初の赤まりさと同じように首をかしげてゆらゆらと動くフォークを見つめているものもいた。 「う〜む・・・どいつにしようかな?」 しばらく、フォークを左右に動かして遊んでみることにした。 右へふら〜り。すると、フォークの怖さを知っている赤ゆっくり達は必死になって逃げ回る。 泣き叫びながら必死に飛び跳ね、転んでも転んでも起き上がって逃げ惑う。 「「ゆっきゅちにげりゅよ!」」 「つんつんしゃんはゆっきゅちできにゃいよ!」 「やめちぇね!れーみゅはゆっきゅちちたいよ!」 どうやらさっきの「喋ったら食べる」はほぼ完全に忘れ去られているようだ。 左へふら〜り。逃げる赤ゆっくりがいる一方で、勇敢なのかお馬鹿なのか、きゃっきゃと喜びながらフォークを追いかける連中が3匹。 赤まりさが2匹と赤れいむが1匹。試しに右にフォークを動かしてみても、楽しそうに笑いながらついて来る。 好奇心旺盛なまりさ種はともかく、付和雷同しやすく、気の弱いれいむ種が混ざっているのは少し意外である。 「「きらきらしゃん、まっちぇ〜!」」 「みゃんみゃ〜!れみゅ〜、ちゅりちゅりしちゃっちゃ〜!」 なるほど、少し頭が残念な個体らしい。聞き取りにくい言葉から察するに彼女はフォークを母親だと思っているようだ。 フォークを動かさずに構えていると、赤まりさ2匹は近寄り過ぎずにある程度距離を置いて様子を伺っているが、その赤れいむは無防備に近寄ってきた。 そして、触れ合うことの出来る距離まで近づくと、おもむろに舌でフォークを舐め始めた。 「ぴぇ〜りょぴぇ〜りょ・・・ゆぴゅ!いちゃい!いちゃいよおおおおお!?」 案の定、赤れいむは自らフォークの先端に舌を刺して、その痛みで泣き出してしまった。 面白いので、泣きじゃくっている赤れいむの頬を本当に軽く突いてみる。 すると・・・ 「ゆゆっ!みゃんみゃ〜、ちゅりちゅり!ちゅりちゅり!りぇーみゅ、ちゅりちゅりちゅるよ!」 本当に聞き取りにくい言葉ですりすり宣言をした赤れいむは、体を揺らして、母親の柔らかい頬にぶつかっていった。 言うまでも無いかもしれないが、母親の頬というのはフォークの先端のことである。 「ゆぴぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」 そして大方の予想通りに赤ゆっくりの瑞々しい柔らかいほっぺに無機質なフォークがぶっすり。 様子を見守っていた赤まりさと下の方にいて思うように身動きが取れない中の、上を向いている赤ゆっくりが驚愕の表情でそれを見つめていた。 逃げ惑う赤ゆっくり達に関しては、相変わらずみんなで固まって震えているだけだった。 「なんか刺さっちまったな」 「刺したら食えよ。2度刺し厳禁!」 「お前は新世界の串揚げ屋か?」 偶然といえど刺さってしまったものは食べねばなるまい。この家に古くから伝わる掟に従って、赤れいむを引き上げる。 痛みと、恐怖によって生まれたての赤ゆっくり特有のぷるぷる震える仕草に近い様子を見せる彼女は俺と目が合った瞬間ににぱぁっと微笑んだ。 「おきゃ〜きゃ!れーひゅ!れーひゅひゃほ!ひゃふへてへ!へーひゅほたひゃふへてへ!へ〜ろへ〜ろちちぇ・・・・・・・・・ぴひゃ!?」 何か煩わしかったので、とっとと口の中に放り込みすりつぶしてやった。 う〜ん・・・精神が破綻していたせいだろうか、いまいち狙ったとおりの、あるいは予想していた甘味と違っていて変な感じだ。 口直しに再びコーヒーを啜り、一息ついたところで「えーっと、よっちゃんだっけ?」と話題を戻す。 「レミリアにボッコされたのに関しては『弾幕ごっこだから』は言い訳にならんだろ?」 「まあ、そうだろうな」 「霊夢に関しても、弾幕ごっこだったとは言え大禍津見に苦戦していたのを見る限り、神霊に対処しきる力が本人にあるとは思えない」 「スタンドがいくら強くても、本人にスタンドに対抗する力があるわけじゃない、って感じか?」 「早人くんすげぇよな。神霊の場合、どっちかっつーとペルソナ?まあ、何でも良いや」 そこで一旦会話を止めて、2人同時にサラダボウルにフォークを伸ばした。 赤ゆっくり達は恐怖のあまりに逃げることもままならず、隅っこで固まってがたがたと震えている。 「やめちぇね!」「にゃにみょわりゅいこちょしちぇにゃいよ!」「きょわいよー!」の大合唱が聞こえてくるが、2人とも気にも留めない。 「「ゆぴゃ!?」」 ほぼ同時に、適当な赤ゆっくりを突き刺し、俺は赤まりさを、悪友は赤れいむを口の中に放り込む。 もしゃもしゃと咀嚼していると、突如隣の部屋から・・・・・ 「「「「ゆきゅああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」 と、赤ゆっくりの悲鳴、それもこの部屋の連中のそれとは比較にならないほどの大絶叫が聞こえてきた。 隣の部屋は確か妹ちゃんの部屋だ。 「「ふぅ・・・」」 が、俺も悪友もそんなもの気にせず、コーヒーを啜った。 気がつけばコーヒーを飲み干してしまったらしく、白いティーカップの中には僅かなコーヒーだまりがあるばかり。 それに気付いた悪友はすっと立ち上がるとおかわりを用意するために2つのティーカップを持って部屋を出て行った。 「お兄〜!・・・あれ〜?」 「コーヒー淹れに行ったよ」 「なぁんだ〜・・・せっかく凄く甘い赤ゆんの作り方教えてあげようと思ったのに〜」 兄貴のほうと入れ替わるように部屋に入ってきた妹ちゃんは心なしか興奮していた。 ちなみに、セーラー服ではなく、まだ午後4時ごろであるにもかかわらず、ピンクのストライプ模様のパジャマに着替えていた。 彼女は普段、ほんのり日焼けした健康的な肌と、ショートヘア、そしてあまり大きくない胸とボーイッシュな雰囲気をかもし出している。 が、こういう姿を見ているとやっぱり女の子なんだなぁと思ってしまう。 「じゃあ、俺に教えてくれよ?」 「おっけ〜!え〜、まず、赤ゆっくりの頬の少し後ろのほうを噛み千切ります」 「ゆゆっ!おにぇーしゃ、ゆぎぃ!いぢゃい!いぢゃいいいいい!?」 そう言いながら、1匹の赤れいむを摘んで、彼女の小さな頬を前歯で少しだけ噛み千切る。 それから、さらに1匹の赤れいむと2匹の赤まりさを取り出して、同じように頬を噛み千切った。 「ゆびゅ!?」「ゆぐっ!?」「ゆぎょぉ!?」 「同じように両頬の後ろを噛み千切った4匹を用意して、傷口同士をくっつける!」 赤ゆっくりの傷口同士をくっつけると、俺の使っていたフォークを器用に使って赤ゆっくり達の皮と皮を癒着させてゆく。 やがて、4匹の別の個体だった赤ゆっくりはひとつながりの生命体となってしまった。 「するとなんと〜!痛覚が共有されて誰を叩いても皆痛がるのだ!」 「「「「ゆきゅ!?」」」」「「「「いぎぁ!?」」」」「「「「ゆぴぇ!?」」」」 「そして、なんと〜・・・全員いっぺんに叩くと通常の4倍痛がります〜」 「「「「ゆきゅああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」 その後、妹ちゃんはゆっくりが一番痛がる底部の中心部分を徹底的にフォークで責め立て、気がつけば4匹とも、餡子も吐かずショックだけで絶命していた。 口が、元の顔の大きさに匹敵しそうなくらい広がり、目も皮が破れるほどに大きく見開かれたその表情が、彼女の責めがどれだけ激しかったのかを如実に現している。 そんな悶死赤ゆを彼女に勧められるままに2匹、赤れいむと赤まりさを1匹ずつ口の中に放り込む。残りの2匹はもちろん妹ちゃんの口の中。 「んぐ・・・なるほど、確かに甘いな」 「でしょでしょ〜!」 「でも、ちょっと俺には甘すぎるかな?」 俺の言葉を聞いた途端、さっきまで満面の笑みを浮かべていた妹ちゃんは目に見えて落ち込んでしまう。 う〜ん、年頃の女の子は感情のムラが激しくて困る。 とはいえ、流石にこのままフォローしないわけにも行くまい。 「でも、美味しかったよ」 「本当に!?」 「ホントホント」 こんなしょっぱいフォローでも十分効果があったようだ。 さっきまで落ち込んでいたのが、一転して破顔一笑。夏のお日様のよりも眩しい笑顔を輝かせている。 可愛いな、チクショウ! 「キサマァ!妹とちゅっちゅしてねーだろうなああああああ!!?」 「してねーよ!!!」 が、シスコン兄貴の帰還によって、その笑顔は隣の部屋へと沈んでいった。 またしても鋭い視線を俺に迎える悪友。憮然とした表情のまま、黙ってコーヒーを手渡してきた。 その視線から目を逸らしつつ、さっきまで何を話していたのか必死に思い出す。 「・・・そうだ。神霊無しだと霊夢にも苦戦するって話だったっけ?」 「ああ、さっきの話の続きか」 「それに、よっちゃんが弾幕戦に応じたのも見逃せないな」 と言いながら、淹れたてののコーヒーのおかげで随分熱くなったフォークを掴み、適当な赤ゆっくりに突き刺す。 「ゆびゅ!?いぢゃ・・・い!?あぢゅ、あぢゅいいいいいいいいいいいい!」 「痛いのか熱いのか、どっちかにしろ」 「ゆぎゅううう・・・どっぢみょだよぉ〜・・・!」 「じゃあ、痛いのと熱いのどっちが嫌か言いなさい。どっちもって言ったらゆっくり出来なくするぞ?」 「ゆぴぃ!?ゆゆゆゆゆゆ・・・い、いぢゃいのがいやだよ・・・」 俺に脅されるような格好でどっちが嫌かを答えた赤れいむの目には大粒の涙が浮かんでいる。 そして、素直に答えた彼女にはご褒美として、と言う訳ではないが熱々のコーヒーの中に放り込んでやった。 黒い水面に浮かび、「あぢゅいいいいい!」と叫びながら、揉み上げを必死に動かしてばちゃばちゃと波紋を立てる赤れいむ。 その動きは徐々に鈍くなって行き、動かなくなったところで口の中に誘った。 「で、弾幕戦が何だって?」 悪友は口をむしゃむしゃと動かしながら続きを待っている。 その咀嚼の仕方を見る限り、口には2匹の赤ゆっくりが収まっているものと思われる。 「祗園様で完全に動きを封じた状態なのに魔理沙の提案に乗るのは、レミリア以外やる気皆無だったのを差し引いてもおかしいと思わないか?」 「まあ、そうかも知れんな・・・」 「そうかも知れんな、じゃないんだよ。将棋で詰んだ時に『別のゲームしよう!今のノーカンな!』って言われて応じるか?」 「いや、全力でぶん殴る」 喋りながら適当な赤れいむを指で掴み、手のひらの上に乗せる。 恐怖のあまりに身動き一つ取れないでいる赤れいむだったが、俺がしばらく何もしないでいると、すぐにゆっくりし始めた。 が、そこですかさずフォークによるひと突きをお見舞いして、涙目にしてやる。 「れいむ、喋らずにとっても可愛い仕草をしたら食べないでいてやるよ」 「ゆ、ゆっきゅちぃ〜・・・」 「つまり、あの勝負に応じるだけのメリットがよっちゃんにもあったってことだ」 「本人が明言しているのは無駄な血が流れない、くらいか?」 俺が全く見ていないにも関わらず、赤れいむは必死になって手のひらの上で這いずり、跳ね回って自分の可愛らしさをアピールしている。 しかし、見ていないのでそれが本当に可愛いかどうかなど分かるはずもない。よって無条件に失格とみなした。 「やめちぇね!れーみゅはきゃわいいよ!だきゃらやめちぇね!ゆえーーーーん!」 「うん、そうだな。れいむは可愛いな」 「ゆゆっ!じゃあ、れーみゅ・・・」 「でも頂きます。む〜しゃむ〜しゃ・・・」 れいむを食べて、視線を戻すと、悪友は手の上で赤ゆっくりを細かく分割していた。 ボウルの中にはその分割されたゆっくりがいくつか放り込まれていて、姉妹の餌になっている。 耐え難い恐怖の中で、ようやく得ることの出来た幸福に、いつの間にか残り3匹になってしまった赤ゆっくり達は喚起の涙を零す。 「月人は穢れを嫌うからな。平安時代には血も穢れとみなされていたらしいし。それ以外にもメイド長に後ろを取られたのとか、霊夢が神霊を使えるのも圧力になったろうな」 「あ〜・・・確かあの時点では時間操作を瞬間移動だと勘違いしていたからな。瞬間移動だと祗園様が通じないかもしれないわけか」 「あと、確証はないけど霊夢も同種の能力を持ってる以上、無効化する技を持っている可能性もある。少なくとも兎連中の全滅は覚悟せにゃならんわな」 「ってことは、魔理沙の『お互い大きな被害を被る』もあながちハッタリじゃないのか」 俺と悪友は同時に赤ゆっくり、どちらも赤れいむを指で摘んでボウルから取り出すと、さっき分割したゆっくりを手のひらの上で食べさせてやる。 声を揃えて、散々姉妹を酷い目に合わせてきた相手の手の中で「む〜ちゃむ〜ちゃ、ちあわちぇ〜!」と満面の笑みを浮かべた。 その後、2匹をボウルの中に戻し、同時に先ほど選ばれなかった最後の1匹である赤まりさを目の前で、ばらばらに分割する。 もちろん、俺たちが食べるものではない。 「お前ら、その赤まりさをちゃんと食べるんだぞ。食べないとお前らを食べるからな・・・あと、『力の強い妖怪の多い』なんて解説を入れてるのもある種の恫喝だよな」 「ああ、岩戸投げで推定1トンオーバーの岩を片手でぶん投げる萃香辺りに本気で殴られたら流石にやばそうだもんな。あと、何を差し置いてもゆゆ様」 「うむ、刀なんか持ってるから妖夢と勘違いして2つの意味で食われかねん」 「ところで、れいむ達はちゃんと食べ終えたか?」 「食う」からの連想で、れいむ達のことを思い出した悪友は、ボウルを覗き込んだ。 中では2匹の赤れいむが目にいっぱいの涙を溜めながら、姉妹の赤まりさだったものをむ〜しゃむ〜しゃしていた。 既に全体の8割以上を食べ終えており、後1分とかからずに食べ終えることだろう。 「なあ、れいむ?」 「「ゆ゛っ!?にゃ、にゃあに?でいうだちぢゃんとだべぢゃよ・・・!?」」 「さっきのあまあまさんと味が似てただろ?」 「「ゆぅ・・・・・・?ゆ゛ゆ゛っ!?」」 しばらく意味が理解できずに硬直していたれいむ達だったが、ようやく全てを理解した瞬間、顔が真っ青になった。 そして、「ゆ゛げー!ゆべぇ!」と必死に唸って食べたものを吐き出そうとする。 ついさっきまで赤まりさを食べていたのに。「しあわせ〜!」してしまったことに罪悪感があるのだろうか? 「「まあ、何でも良いか」」 「「ゆぴぃ!?」」 俺と悪友はハモりつつ、全く同じタイミングで手にしたフォークを赤れいむに伸ばし、口の中に放り込んだ。 しばらく噛まずに、口の中で命乞いするのを聞き、それから美味しくいただいた。 「で、結局何の話だったっけ?」 「よっちゃんは無双しているようで実は部下思いで、彼女達のために必死に頑張っている可愛らしい娘さんだって話だ。いちいち余裕こいた言動をするのも部下を安心させるため」 喋り終えた俺は、コーヒーを一口すすって、口の中に残る甘味を消し去った。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ よっちゃん可愛いよ、よっちゃん 今回のコンセプトは食品としての赤ゆっくりです 今までペットとしてのゆっくりは結構書いてきたんですが、こっちに対するアプローチが少なかったので 本当はもっと淡々と食べられて死んでゆく感じにしたかったんですが・・・ byゆっくりボールマン
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近所に居酒屋がオープンした。 その名も、「ゆ民」。 本格ゆっくり料理を楽しめる素敵なお店らしい。 居酒屋でありながら甘いゆっくり料理を楽しめるということで、里の若い女性達に人気とも。 「よし、まりさ!今日の晩御飯はお外に食べにいこう!」 「ゆ!おそとのごはんはゆっくりできるね!」 俺はペットのゆっくり魔理沙をつれて、ゆ民の暖簾をくぐった。 「へい、らっしゃい!」 カウンター席で待っていたのは、今にも寿司を握り始めそうな初老の男。 いかにも職人といった雰囲気だ。大将と呼ばせてもらおう。 店も純和風で、寿司屋と言われても納得できそうな造りだ。 安っぽい居酒屋を想像していた俺は、思わずお金の心配をしてしまう。 「こいつ、ここに置いていいですか?」 バレーボールほどもあるまりさだが、椅子に座らせるとテーブルに顔が届かないため仕方が無かった。 俺の座ったカウンター席の隣、テーブルの上にまりさを乗せながら聞く。 「ああ、兄さんのペットかい?あまり汚さないでくれるなら構わないよ」 「ゆゆ♪ おじさんありがとう!ゆっくり食べるね!」 ゆっくりは総じて、汚らしい食べ方をする。 体の構造上、仕方がないと言えば仕方がないのだが、綺麗に食べられないわけではない。 俺はこのまりさをペットにしたとき、毎日鞭打つような躾をした。 料理をこぼした時は、頭に釘を打ち付けた。 顔についたソースを床にこすりつけた時は、気を失うまで殴り続けた。 汚らしく音を立てて咀嚼した時は、頬をアルコールランプで炙った。 その甲斐あって、まりさはご飯に関してのマナーは他のゆっくりとは段違いだ。 「まりさ、いつものように食べれば大丈夫だからね」 「わかったよ!ゆっくり食べるね!!」 ゆんゆんと歌を歌いはじめるまりさを尻目に、俺はメニューを見る。 実際、そこに書いてあったのは普通の居酒屋で見るものとあまり変わりはない。 枝豆、串焼き、ひややっこ。 どこに本格ゆっくり料理の要素があるのだろう。 なんにしても注文をしないことには始まらないだろう。 俺は大将を呼ぶ。 「おやっさん、とりあえずビール。それと串焼き2人分を。それとまりさに何か適当にジュースを」 「ゆゆっ!まりさはリンゴジュースが飲みたいよ!!」 「あい、少々御待ちをー」 カウンター席のすぐ前に調理場があるため、そのまま動くことなく大将は調理に入った。 一段高くなっている部分があるため、大将の手元はよく見えないが、きっと串焼きの網の用意しているのだろう。 金属音がカシャカシャと響く。 店には俺とまりさしかいない。 まだ夕方、あまり人のいない時間だったのだろう。 それにここは里の中心からは少し遠い。 農作業を終えた帰りに寄るには道があわないし、何よりそんな雰囲気の店ではなかった。 「ではこちら、お飲み物とお通しです。ごゆっくりー」 いきなり目の前に現れたのは、和服姿の女将であった。 大将と同じ位の年齢だろう。 夫婦で経営しているのかもしれない。 「ゆ!まりさのリンゴジュース!」 俺の目の前にビールが、まりさの隣にリンゴジュースが置かれた。 まりさにも飲みやすいよう、ストローがついている。 そしてお通しが俺の前に置かれた。 四角い皿に乗っているのは、2匹の子ゆっくり。 大きさはピンポン玉くらいだろうか。赤ちゃんゆっくりに近い。 そしてどちらも髪の毛が無く、つるっぱげなので何の種類のゆっくりだかよく分からない。 不思議なことに2匹は逃げることなく、涙を流しながら震えていた。 俺は一緒に用意された箸で、向かって左側の子ゆっくりを摘んだ。 「ゆ?おにいさん!それはなんなの!?おいしいもの!?」 カウンター席のテーブルは繋がっている。 まりさがころころと、自分のポジションから俺のところへ転がってくる。 「お通しだって。まりさも食べるかい?」 まりさの目の前に皿を突き出す。 ぷるぷると残った右側の子ゆっくりが震えている。 「ゆ!へんな子がいるよ!」 つるっぱげのゆっくりなど、野生ではそうそう目にかからないものだろう。 舌を出して何も無い頭を舐めまわしている。 俺は箸で摘んだ子ゆっくりの底部を見た。 そこには明らかに炙った後がある。 だから動けなかったのだろう。 しかしだ、まるで黒く消し炭になっているわけではない。 焼けてはいるものの、皮はまだ若干やわらかさを保ち、運動能力だけをしっかりと奪っている。 あの大将の腕は確かなようだ。 「いただきます」 小さいので、一口でおさまった。 舌で転がし、歯で押しつぶす。 ぶちゅりと潰れた子ゆっくりからは、いつもの餡子の味とは別に苺の味がした。 「苺大福みたいで美味しいな・・」 子ゆっくり内部に苺餡を注入した一品に違いない。 喋れなかったのは苺餡が入ったことで元の餡子が減り、知能が下がっているためだ、俺はそう結論付けた。 「まりさ、これ凄く美味しいよ。いちごの味がする」 「ゆ!まりさはいちご大好きだよ!ゆっくり食べるよ!」 言うが早いか、ぱくっと一口で子ゆっくりを食べるまりさ。 ちゃんと躾けているので、口を開いて咀嚼したりはしない。 「ゆゆーん!おいしいよ!!ゆっくりできるうー!!」 まりさは瞳に星を輝かせた。 俺は気にせず、ビールに口をつける。 「やめでえええええ!!!!あぢゅいよおおおお!!!!!」 いきなり聞こえてきたゆっくりの悲鳴。 それは大将の手元からだった。 「ゆゆ!なかまが助けを求めてるよ!」 仲間の悲鳴にあわただしく動きだすまりさ。 しかし、一段高くなった部分のせいで小さなまりさにはどこから仲間の声が聞こえたかも分からない。 それにさっきは目の前にゆっくり仲間がいたのに、平気で食べていただろう。何を気にする必要があるのだろうか。 俺には全く理解できなかった。 「串焼きだけど、兄さんはタレと塩どっちが好きかね?」 「じゃあ、俺は塩で」 「まりさはタレが好きだよ!!ゆっくりかけてね!!!」 それからしばらく、数十匹分のゆっくりの悲鳴が聞こえ、そのたびにまりさはフラフラとテーブルを動いていた。 「はい、串焼き2人分。おまち」 楕円形の2枚のお皿には、4本ずつ串焼きが乗っていた。 1本の串に4匹、計32匹のゆっくりが串刺しになっていた。 全身に火傷を負い、貫いた串の激痛で今にも絶命しそうだ。 サイズは1匹が10円玉ほど。これは赤ちゃんゆっくりだろう。 俺の前に置かれた皿にはもう一つ、小さな皿が設置されており、白いものが盛ってある。 「ウチじゃあ、食べる前に塩を振るんでね。兄さんの好きなようにかけてください」 この白いものは塩のようだ。 まりさの前に置かれた串焼きには、もう赤茶色のタレがかかっている。 「ゆっきゅ・・・・たちゅけてえ・・・・」 「ひゃひゅ・・・ゆっくちできない・・・」 まだ生きている赤ゆっくりの声が食欲を誘う。 リボンは付いていないが、髪形などからこれがゆっくり霊夢であることは判断できた。 しかし、リボンがないためか、まりさは同じゆっくり仲間であることに気が付かない。 「へんな子だね!いまから美味しくゆっくり食べてあげるね!!!」 「や・・めてぇ・・・」 「いあああ・・・」 日ごろ聞いている天にも届きそうな叫び声とは違い、静かに消え落ちるような鳴き声は新鮮だ。 こんな絶妙な生殺し、熟練の業が素人の俺にもはっきりと伝わってくる。 俺は塩を指で摘むと、手に取った一本の串焼きに振りかけた。 火傷の体に塩はしみるだろう。 「ぴっきぃっ!!!」 「ゆきゃあっ!!」 短く、高い叫び声、日本刀のように冴えた音を耳に残す。 生命の本質、ありのままの姿を映し出す声だ。 通は塩を選ぶ、その理由がこれだ。 「たまらないね・・!」 俺は夢中で串焼きにかぶりついた。 本格ゆっくり料理の店は伊達じゃない、クセになりそうだ。 皿が串だけになる頃には、ビールも進んで空になっていた。 「次はどうします?あとビールのおかわりも用意しますかね?」 メニューに目を通し、俺は目についたものをいくつか注文した。 「それとビールおわかりを」 一段高い場所にジョッキを置き、まりさのほうを振り返る。 注文を受け、再び調理を開始した厨房からゆっくり仲間の悲鳴が上がる。 「おにいさん!まりさの仲間が助けてって言ってるよ!」 その仲間達を美味しく食べたのは誰だと言いたくなるが、胸にしまう。 「これはね、あまり気にしないほうがいいよ。これは悪いゆっくり達を懲らしめてるんだから」 「ゆ?そうなの?」 「そうだよ、まりさも汚いご飯の食べ方をしたら罰を受けるよね?それと同じ事を仲間はされてるんだよ」 「ゆっ・・・」 「みんなのためにも、まりさは我慢してあげなくちゃ。じゃないとご飯の食べ方をいつまでたっても覚えられないんだよ」 「ゆ!そうだね!まりさ気にしないでゆっくりするね!!!」 単純なまりさであった。 ヘタに大声を出されて厨房のゆっくり達が騒ぎ始めたら面倒だ。 早めに釘を刺しておくことに越したことは無い。 「へい、冷やっこ、おまち!」 次に出てきたのはゆっくりの冷やっこであった。 使用しているゆっくりは、ゆっくりパチュリーだ。 帽子はかぶっていないが、特徴のある髪ですぐに分かった。 もちろん、帽子がないのでまりさにはわからない。 普通の冷やっこサイズであるが、形が興味深い。 正方形になっており、皮は木綿豆腐のようにゴツゴツとしている。 「むきゅう!まりさ!パチュリーだよ!助けて!!!」 そして意識がはっきりとしていた。 「おやっさん、この豆腐すごいね。始めてみたよ」 「コイツは作るのが凄く難しくてねえ、試行錯誤のすえにできたんですよ」 細かいところは企業秘密らしいが、大体の作り方を教えてくれた。 捕獲したパチュリーを水でならし、ふやかしたところで型にはめる。 いったん乾かし、今度はプールの中にいれ、秘伝の味付け方法をして固まらせるのだという。 プールに入れたとき、溶けてバラバラにならないようにするのが一番苦労したという。 ゆっくりパチュリーを使っているのは、一番色白な皮なゆっくりだったという理由らしい。 「ゆ!ぱちゅりーはこんな変な形をしてないよ!うそつきはゆっくり食べられてね!!」 もうまりさは食べ始めている。 俺も味わってみたい。 「むきゅ・・!おにさんやめて!!たべないで・・・!!」 箸で1/4ほどを切る。 「むぎゅうぅぅゔゔう!!!ヴァヂュリ゙ーの゙からだがあああ!!!」 さっと切れるが、食べようと箸で挟めばちゃんと掴める。 柔らかすぎず、硬すぎず。 匠の技だ。 切ったゆっくり豆腐を口に運ぶ。 甘さの抑えられたシソ風味の餡子が、実にさわやかだ。 夏の暑い日でも、すっきり食べられることは間違いない。 「はーい、枝豆おまちー」 冷やっこを食べる途中に出されたのは、茎の生えた大きなゆっくり魔理沙。 大きさはバスケットボールほどで、帽子は付いていない。 茎には小豆ほどの小さな赤ちゃんゆっくりが実っている。 「これはね、茎の赤ちゃんが調理してあるんで、それを召し上がってくださいな」 困惑する俺とまりさに助け舟を出してくれたのは、あの女将。 「母体の栄養が子供に行ってて、こちらは美味しくないのでお気をつけください」 こちら、といいながら茎を生やした親のゆっくり魔理沙をつつく女将。 「やめてね!!まりさの赤ちゃんをいじめないでね!!!」 生きていた。 しかし逃げるそぶりを見せないので、きっと底部を焼かれているのだろう。 「ゆゆっ!まりさ助けてね!!!」 「ゆ?まりさはこんな子しらないよ!!ゆっくり食べられてね!!」 同属にめぐり合えたが、所詮は帽子無しの身。 救われることはない。 「どれ、じゃあ一つ」 目の前の茎から1匹、ゆっくり霊夢の髪型をした赤ちゃんゆっくりをもぎる。 「ゆ!やめでえ゙え゙!!まりざのあがぢゃんだべないでええ!!!!」 もう赤ちゃんゆっくりは死んでいるようで、何の反応もない。 口に放り込むと、甘じょっぱく、豆を食べているような触感がする。 「お兄さん!まりさも!まりさもゆっくりしたい!」 口をぱかっと開けて枝豆を待つまりさに、1匹の赤ちゃんまりさを投げ込む。 「ゆ゙あああああ!!!??どうぼじでまりざがまりざのあがぢゃんをだべるの゙お゙おお゙お゙!?!??!?」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせー♪」 親まりさの嘆きなど聞こえてもいないかのように赤まりさを味わう俺のまりさ。 次々に茎の赤ちゃんゆっくりを食べ続け、気が付くと1匹もいなくなってしまった。 「うあぁあああああ・・・!まりざのあがぢゃんがああああ・・・!!!」 俺は残った冷やっこを食べると、ぐいっとビールを飲み干した。 子を失った親の姿は、この上ない酒のつまみになる。 「から揚げ、おまち」 大皿では大量の子ゆっくりアリスが茶色に変色して必死に助けを求めている。 中の餡子がなくならなければ死なない。 つまり、煮えたぎる油の中に入れられようが、気を失うことはあっても死ぬことはないのだ。 レモンをかけると、目がいたいだのなんだのと喚き散らしてこれがまた食欲を誘う。 「ゆゆ!凄く美味しいよ!ゆっくりできる!!」 「外はカリッと、中のチーズはまろやか。うーん、うまいっ!」 4杯目のビールが勢いよく喉を通過する。 「まりざああ!!いだいよおお!!!だずげでえええ!!!」 「いだいよおおお!!おねがいいい!!!ゆっぐりざぜでよおお!!」 しかし、帽子のないゆっくりアリスの叫びは届かない。 結局、俺とまりさの胃の中でゆっくりすることになった。 「へい、刺身おまち!」 ソフトボールほどのゆっくり霊夢がこちらを見ていた。 「ひっひふふあ・・・!へふふはっほほへえひは・・・」 全身に包丁が入り、全てが円形の刺身となっている。 しかし、切った身を繋げて元の丸い形を保っているため、若干の意識はあるようだ。 「端から食べていくのが美味しいですよ」 女将のアドバイスに従い、後頭部の部分から一枚ずつ箸で取り、スライスされたゆっくり霊夢を食べる。 一枚取るごとに、ゆっくり霊夢の声は小さくなる。 一口ごとに違う声を奏でるこの料理の芸術性の高さに、俺は深い感動を覚えた。 漬物、おでん、塩辛、キムチ、春巻き。 次々と出てくる極上のゆっくり料理に俺は幸せな、ゆっくりした時間を送った。 そして食後のデザートを頼もうとしたとき、ふとメニューの端に書かれた一文に気が付いた。 『ゆっくり持ち込み歓迎。お好みの調理をいたします』 。 気が付くと、隣の席からまりさが消えていた。 そして厨房から聞きなれたまりさの、絶望に染まった断末魔が俺の耳を優しく刺激する。 「カキ氷、お待たせ」 俺が頼んだのはカキ氷であった。 ゆっくりカキ氷。 見た目にはまりさは何も変わっていない。 カキ氷をいれる器に乗ったまりさは動かない。 焼けて動けないのではなく、凍って動かないのだ。 ためしにスプーンでつついてみると、硬い感触が帰ってくる。 さっきまで、あんなにふくよかで温かく、柔らかかったあの皮が。 「おにいざん!!!まりざになにをずるのおおお!!!!づめだいよおおお!!!ゆっぐりでぎないよぉ!!」 「これからお兄さんはまりさのことを美味しく食べるよ。ゆっくり理解してね」 寒さで青くなっていた顔がさらに青くなる。 「どぼじで!!どぼじでおにいさんがまりざをだべるの!?」 「だって、まりさは仲間達を食べちゃう悪い子だもん。仕方ないよね」 「ゆ゙っ!!?まりざ仲間をだべでないよ!!!ぼんどうだよ!!!」 いつまでも会話をしていたら、せっかくのカキ氷が溶けてしまう。 俺はまりさの頭頂部を摘み、外した。 「ゆぎゅ!!!?まりざのあだまがあ゙あ゙!?!?!」 見えるような位置に頭の皮を置く。 髪の毛がくっついているので分かりやすい。 皮の無くなった頭頂部からは、内部の餡子がよく見える。 「では、まりさ、さようなら。いただきます」 スプーンを頭頂部から突っ込み、中の餡子を取り出した。 「ゆびゅゔゔあ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!!びぎぃ゙あ゙あ゙ああ!!!?」 スプーンには、凍った餡子が乗っている。 そう、これがゆっくりカキ氷なのだ。 口に含む。 俺のまりさの餡子は、冷たいながらも滑らかで、そして引き締まった甘さをしている。 「まりさ!おまえすごく美味しいよ!もっと食べるね!」 「やべでええ!!!だべだいでえええ!!!」 スプーンが進む。 美味しい。 こんなにもまりさが美味しいなんて。 もっと早くに食べてしまえばよかった。 「美味しいよ!まりさ美味しい!」 もう意識はないようで、返事も返ってこない。 餡子全てが凍っているわけではなく、一部は常温そのままの餡子の部分もあった。 それが冷たさと温かさの絶妙なバランスを産み、スプーンはさらに速度を上げた。 「ごちそうさまでした」 皮も美味しく食べた。 それがまりさへの感謝の証だ。 あれほど食べたのだ、会計が少し心配であった。 しかしそんな心配とは裏腹に、実に良心的なお値段であった。 「ありがとうございましたーまたのご来店を御待ちしておりますー」 里で人気が出るわけだ。 ゆっくり料理がここまで美味しいものだとは、俺は知らなかった。 いつか必ず、また来よう。 俺はスキップで帰路についた。 翌日、散歩をしていると1匹のゆっくり霊夢がケガをしてうずくまっていた。 「ゆっ!?おにいさん助けて!れいむ動けないよ!」 「・・・」 「ゆ?おにいさん、ゆっくりできないんだよ!たすけて!!」 「・・・」 「おにいさん!」 「分かったよ!お兄さんがケガを直してあげるからね!美味しいご飯もあるからお兄さんの家においで」 「ゆっ!おにいさんありがとう!!ゆっくりしていくね!!」 ゆ民に行く日は、そう遠くないだろう。 俺は満面の笑みをゆっくり霊夢に向けた。 作:アルコールランプ? このSSに感想を付ける
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遭ゆっくり 9KB 虐待-普通 制裁 自業自得 差別・格差 飾り ツガイ 群れ 野良ゆ 赤子・子供 希少種 自然界 都会 現代 虐待人間 うんしー ぺにまむ 感想・批評・ツッコミを頂けると幸いです 遭ゆっくり 遭難 災難に出あうこと。特に山や海等において、自力での帰還が不可能になった状態。 「遭難した…」 男は倒木に腰掛、鬱蒼と生い茂る木々を見上げながら呟いた。 男が後悔と共にその呟きを口に出すことになったのは、軽い気持ちが原因だった。 軽い気持ちで連休に日帰り予定で、山に登った。 軽い気持ちで山頂に続く一本道の登山道を離れ、森に入った。 軽い気持ちで来た為に、地図も磁石も持っていない。今いる場所がどこか分からず、麓もどちらか分からない。 軽い気持ちでの行動の結果は、道に迷って戻れないという深刻な状態を生み出した。 山の中で夜を明かした男は、闇雲に歩を進めていた。 遭難した時には無闇に歩き回らず、体力の消耗を避け、救助を待つべきという知識は男も持っていたが、男には救助が間に合うとは思えなかった。 男が山に来たのは、日々の煩わしさから己を遠ざける為だった。故に携帯電話も持ってきていない。 周囲が男の異常に気付くのは、休みが明けた後だろう。水はまだ残っているが、食料はすでに食べ尽くしていた。 もともと小腹がすいた時の為に持ってきていたものだ。まともな食事は登山道沿いにある店でとる予定だった。 「た、す、け、て、く、れえぇーーーっ!!!」 男はすきっ腹に響く大声で、何度目かも分からぬ助けの求めを叫んだ。 返事は聞こえてこない。 すでに水も尽きた。男は何かの役に、と思い、小便を水筒に溜めてはいたが、飲む踏ん切りはついていない。 疲労も溜まり、体力気力も萎え始めていた。 そんな時、男の目に光が差し込んだ。森が途切れている。 何か見えるかもしれない。変わり映えのしない日々に変化を求める囚人のように、男はそこに飛び込んだ。 広場に出た。野球場とまではいかないが、テニス位なら楽に出来そうな大きさの広場だ。 地面はむき出しではなく、丈の短い草が生えている。向こうには土を堀り返した、畑のようなものが見える。 畑、畑だ。畑を作るような動物はいない。人の手が入ったものがあるのなら、人がいるかもしれない、と男は考えた。 しかし、期待に満ちる男の前に現れたのは、ゆっくりだった。その姿は男が普段、町で見かけるゆっくりとは違っていた。 畑に生えている花を見つめている、緑の髪に飾りを持たないゆっくり。 木の根元で昼寝をしている、赤い髪に飾りを持たないゆっくり。 跳ね回る、目玉のついた帽子をかぶったゆっくりと、それを追いかける、青い髪に尖った氷のような羽を持ったゆっくり。 笑いながらその光景を見ている、金色の髪に赤いリボンを着けたゆっくり。 「じゃお!」 そして、男に声をかけてきた、赤い髪に緑の帽子をかぶったゆっくり。 疲労と期待の反動で足の力が抜けた男は、その場に座り込んだ。 「じゃお?」 目の前のゆっくり-ゆっくりめーりんがどうかしたのか?と言わんばかりに男の顔を覗き込む。 男は力無くめーりんの頭を撫でる。口からは溜息が漏れた。 「どうしたの?」 花を見ていたゆっくり-ゆっくりゆうかがいつの間にか、こちらにやって来ていた。他のゆっくりも男の周りに集まってきている。 男は一縷の望みをかけて、ゆうかにこの近くに人がいないかを問うた。 「そーなんかー」 男の説明の後、ゆっくり達は互いに知らないか聞き合った。 「にんげんさんにあったのはあなたがはじめてよ。ここにひとはいないわ」 だが、男の期待した返事は返ってこなかった。がっくりした男の腹の虫が鳴く。 「おなかがすいているの?」 「ああ、情けないことにな」 「ゆうかたちがたべるようなものは、たべられないわよね?」 ゆうかが今手元にある食べ物を挙げていく。木の実、花、虫、草、木の皮…、料理すれば人でも食べられないことは無いだろうが、生のままで食べられる筈も無い。 「無理だ。腹を壊すのが関の山だな」 どうしたものか、と皆一様に黙り込む。 そんな中、男を励まそうと体を擦り付けていためーりんが、男の目の前に行き、男を見上げる。 「じゃおーん!」 男に向けてにっこりと微笑んだ後、大きくはっきりと声を上げた。 すると、めーりんは体の真ん中から左右に割れていき、真っ二つに分かれた。帽子だけは二つにならず地面に落ちた。 「これは…?」 男がその光景を見て、疑問の声を上げる。 「おたべなさい、よ。ゆうかたちはたべてほしいあいてにこうするの」 「俺に食べろと。なんで?」 「めーりんはやさしいゆっくりだから」 ゆうかの説明を聞き、男はしばしの間、呆然としていたが、やがて、ありがとうと礼を言うと、二つに割れためーりんを頬張った。 男の目から涙がこぼれた。 男は食べ終えた後、残った帽子を手に取る。 「これ、貰ってもいいかい?」 「めーりんはにんげんさんのためにえいえんにゆっくりしたのよ。もっていてあげて」 ゆうかから山と山との境目にある背の高い木の横から、何度も煙が上がるのを見たと聞いた男は、高い木を目印にして進み、登山道に戻ることが出来た。 無事に下山できた男が自分のアパートに戻ると、ドアの前でゆっくりがたむろしていた。 成ゆっくりが2匹、子ゆっくりが4匹、体は薄汚れ、バッチは無い。典型的な野良ゆっくりだ。 「いつまでたってもかえってこないんだぜ!」 ゆっくりまりさが番のれいむと子供達に何か話している。 「何してるんだ?」 死にそうだった時にゆっくりに助けられたのだ。困っているなら助けてやろう、と考えた男はゆっくりに声をかけた。 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにするのぜ!」 まりさは男の問いに反射的に答えを返した。 山で遭難したかと思えば、町でこんなゆっくりに出会うとは、災難だな。これもまた遭難か、と男は思った。 「ゆゆ!ぐずのめーりんがいるのぜ!」「ゆ!ぐずはゆっくりできないよ!どっかいってね!」「「どっかいっちぇね!」」 ゆっくりは飾りで個体を識別する。飾りを身に着ければ人間でもゆっくりと認識される。 形見の帽子をかぶっていた男は、まりさ達にめーりんと認識されたのだ。 自分を助けてくれためーりんを馬鹿にされた、と感じた男は目の前のゆっくり達に怒りを覚えた。 美という字は羊と大を合成した文字だ。 羊は生贄、犠牲を表し、美は大いなる犠牲を表すことになる。大いなる犠牲、すなわち自己犠牲であり、めーりんの行いはまさに美しいものと言える。 めーりんの美しさに比べたならば、こいつらのなんと醜悪なことか。男はそんなことを考えながら、喚き散らす親を壁に向かって蹴り飛ばした後、ちびまりさを持ち上げた。 「ゆわーい!おしょらをとんでるみちゃい!」 暢気な声を上げているちびまりさ。 「かわいいれいむのおちびちゃんをかえしてね!」「なにするんだぜ!このぐず!」「「ぐじゅ!」」 「返して欲しけりゃ、俺が良いと言うまでむこうを向いて跳ねていろ。いやなら全員蹴り潰す」 男の威圧に負け、ゆっくり達は嫌々ながら、むこうを向いて跳ね始めた。 それを確認した男は、ちびまりさの帽子を奪う。 ちびまりさは声を上げようとするが、男はその前に上唇と下唇を指で挟んで押し潰し、捻る。口は閉じられた。 ちびまりさは目としーしーの穴から砂糖水を流し、痛みに身を振り回す。男を見つめるちびまりさの目は、許しを乞うように震えていた。 男は上瞼と下瞼を唇と同じように、指で挟んで押し潰し、捻る。目も閉じられた。 しーしーの穴も、まむまむも、あにゃるも同じように指で挟んで押し潰し、捻る。穴はすべて閉じられた。 垂れ流していた砂糖水は流れなくなり、震えていた目も見えなくなる。 続けて、男はちびまりさの髪を引きちぎり、あんよも捻り潰して動けないようにした。 見えず、喋れず、何も出来ない饅頭が完成した。 ただ、体はいまだに震えている。死には程遠く、生きることもあきらめていないようだ。 「お前は今から、あいつらに食べられる。死ぬまでゆっくりしていけよ」 そう、ちびまりさに囁いた後、男は跳ねていたゆっくり達に声をかけ、こちらを向かせた。 「疲れただろう、あまあまをやろう」 「「ゆ!あまあま!」」「「あみゃあみゃ!」」 ゆっくりの目には、饅頭にしか見えないちびまりさが地面に置かれる。 「あまあまはまりさのおくちにはいるんだぜ!」「あまあまさんはゆっくりれいむにたべられてね!」「「たべられちぇね!」」 ちびまりさはこの状態でも、ものを聞くことが出来る。親兄弟に食べられようとしていることが分かるようだ。 やめちぇえぇーっ!まりしゃをたべないぢぇえぇーっ!ちびまりさの餡子の中で響く絶叫も、他のゆっくり達には聞こえない。 「うっめ!めっちゃうめ!」「むーしゃむーしゃ!しあわせーっ!」「「しあわしぇーっ!」」 ちびまりさの願いむなしく、ちびまりさは親と姉妹の腹に収まった。 男はちびれいむを持ち上げ、同じように繰り返し、子ゆっくりを全部、親ゆっくりに食わせた。 「おちびちゃんをゆっくりしないでかえしてね!」「そうだぜ!かえすんだぜ!」 あまあまをすべて食べ終えた後、れいむとまりさは男に子供を返すよう詰め寄った。 「もう返したぞ」 「いないよ!どこにいるの!」「どこにいるんだぜ!」 「そこにいるじゃないか」 「どこ!」「じじいはばかなのぜ!いないことがわからないんだぜ!」 「そこだよ、お前らの腹の中だ」 男は子ゆっくりから奪った飾りを、親ゆっくりの目の前にばら撒いた。 呆然としたまりさの顔面をこそぎ落とすように、男の足が踏み下ろされる。 「ゆぎゃあああぁぁぁーーーっ!!!」 一瞬で顔が無くなったまりさは、絶叫を上げながら地面を転げまわる。 男は道に向かってまりさを蹴り飛ばした。 まりさの皮は破れ、口からは先程食べた餡子を吐き出している。程なく永遠にゆっくりするだろう。 番の悲鳴に我に返り、逃げ出そうとしていたれいむは、男に髪を掴まれ宙に浮いた。 これかられいむは、子ゆっくりと同じようにありとあらゆる穴と、あんよを指で押し潰され、捻り塞がれることになる。 まず、右まぶた。 「ゆぴぃ!」 次に、左まぶた。 「ゆぎゃあ!」 砂糖水を垂れ流すしーしー穴。 「やめてね!もどしてね!」 もう使われることの無いまむまむ。 「れいむのまむまむがあぁーっ!」 中身を吐き出したあにゃる。 「ゆぎぃ!」 何とか逃れようとグネグネと動くあんよ。 「れいむのびきゃくがあぁーっ!」 最後に喧しい口を塞がれる。 「お前らが馬鹿にしためーりんはな、立派な奴だったんだ。お前らみたいなのが馬鹿にして言い奴じゃないんだ」 なにいってるの!めーりんはぐずでしょ!じゃおしかしゃべれないんだよ!ゆっくりしてないんだよ!れいむたちはとってもゆっくりしてたのに! めーりんはゆっくりしてないのに!ゆっくりしてるゆっくりをいじめちゃいけないんだよ!ゆっくりさせなきゃいけないんだよ! 喋ることの出来ないれいむは、餡子の中でいかに自分がめーりんより上か、自分が大切にされるべきか、そして助けられるべきか延々と繰り返している。 だが、男にはそんなものは聞こえない。聞こえたとしても関係ない。男はれいむを蹴り飛ばした番に向かって投げた。 まりさにぶつかったれいむに死ぬ気配はない。あんよが動かないので、転がったまま震えている。 自分が食べた子供と同じように、餡子の中で助けを求めているのだろう。男はそのまま死ぬまで放って置くことにした。 溜飲を下げた男は、後で片付けないとな、と思った後、思考を切り替えた。 遭難した中であのゆっくり達に出会えたのは、本当に良かった。今みたいな連中ならあそこで死ぬところだった。 やっぱり、恩はゆっくりにじゃなくて、あのゆっくり達に返さないとな。 今度は遭難しないように入念に準備をして行こう。ゆっくり達への礼も迷惑にならず、且つ喜ばれるものを調べて持っていこう。 と、男はこれからすることを考えながら、家に入っていった。 書いたもの ・ふたば系ゆっくりいじめ 732 門番ゆっくり ・ふたば系ゆっくりいじめ 741 ゆっくりマンション ・ふたば系ゆっくりいじめ 751 門番ゆっくり めーりんの場合 ・ふたば系ゆっくりいじめ 782 ゆっくりのいるお庭 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る めーりん大好きかコンチクショー! 俺も大好きだコンチクショー!! ※原初の誓いか。最近見なくなったな、こういう本当の意味でゆっくりしたおたべなさい。 -- 2018-02-16 02 31 42 めーりんかっけー -- 2017-01-16 00 34 47 めーりんは優しいんだねー。わかるよー -- 2014-06-03 21 23 54 初対面なのに自分の命を差し出せるとか優しすぎるだろ。 -- 2012-10-06 00 55 29 ゆっくりできたのぜ! -- 2012-07-11 19 25 51 こんなめーりんなら嫁にする! -- 2011-09-28 00 15 58 真の意味でのおたべなさいを見た・・・これこそが原初の誓い -- 2011-08-27 01 03 29 めーりんは優しいゆっくり -- 2010-12-06 04 03 26 じゃお~ん -- 2010-11-28 06 30 55 めーりん最高だっ! ゆっくりできたよー -- 2010-11-11 11 50 49 うっうー! -- 2010-09-07 15 09 25 じゃおじゃお! -- 2010-08-27 21 52 41 むらむらしてるね! -- 2010-08-03 14 25 23 ゆっかりしているわ! -- 2010-06-30 01 54 49 むっきゅりしてるわ! -- 2010-06-29 23 14 30 ゆっくりできたよ! -- 2010-06-16 17 56 21 ゆっくりできるね -- 2010-04-18 21 36 04
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ユクミン 後 57KB パロディ 自業自得 差別・格差 れいぱー 希少種 自然界 独自設定 虐待が見たい方は回れ右 すごく長いです れいむしね ・この作品は「ふたば系ゆっくりいじめ 790 ユクミン 前」の続きです。既読推奨です。 ・幸せなまま終わるゆっくりが沢山います。注意してください。 ・虐待や虐めはほとんどないです。気をつけてください。 ・一定の種類のゆっくりが著しく虐められています。れいむしね。 ・あと最後に、もう○クミン関係ないです。ごめんなさい。 あとまとめきれなかったせいですごく長いです。ごめんなさい。とにかくごめんなさい。 では、ゆっくりしていってもらえればいいなぁ! ~脱出計画十四日目~ 思えば随分と時が経ったように感じる。 れいむが大量に焼け死んだり、まりさが集団で滝壺に落ちたりしていた頃が随分昔に思えた。 まあ実際は十日かそこらほどしか経っていないのだが。 現在回収が終わった部品の数は20個。大体三分の二が回収されたことになる。 だか油断はできない。回収が進むにつれ、どんどん過酷で難解な場所に行かなければならない。 それはこれからも変わらず、おそらくこの先もどんどん難しくなっていくだろう。 が、今の私はそれほど心配していない。 あの頃と違って、私には心強い沢山の仲間がいるのだから。 さあ、今日来たのは拠点から見てちょうど星の裏側にある森の中。 反応はあれど、当の部品はまだまだ先。現在では陰も形も見えない。 そして目の前では巨大な岩が道を塞いでいた。 岩は優に私の身長の三倍はある。防護スーツで身が重い私では到底乗り越えられそうにない。 そして、だからと言ってどう足掻いても到底取り除くこともできない。・・・普通ならば。 「「「「「じゃおぉぉ~ん!!!」」」」」 だが、彼らがいれば心配する事もないだろう。 「じゃおっじゃおっ!」 「じゃおぉん。じゃおぉ~ん!」 「じゃおじゃお?じゃぉぉん!!」 緑の帽子に星型の飾りをつけたこのゆっくりは、めーりんというらしい。 らしい、というのも、そもそもこのめーりん。見てのとおり言葉が話せない。 他のゆっくりから名前は教えてもらったのだが、どうやら言葉が通じないというわけではなさそうだ。 むしろとても人懐っこく気がいい。助けを請うた所、快く私に協力してくれた。 そして、何よりの特徴として・・・やってくれ、めーりん! 「「「「「じゃ・・じゃ・・・じゃ・・・じゃおぉぉぉぉぉん!!!」」」」」 私の掛け声と共に一斉に十匹程度のめーりんが岩に近寄り、力を入れる。 するとなんという事か。あんなにも巨大な岩が持ち上がったではないか! 岩の下に潜り込んだめーりんたちは、力をあわせてゆっくりと岩を運び込んでいく。 そして 「「「「「じゃお・・じゃお・・・じゃおん!!!」」」」」 ドズンという重い音と共に、しばらく戻った所にある脇の溝に岩を転がした。 「「「「「じゃっ、じゃっ、じゃおぉぉぉん!!!」」」」」 一斉に勝ち鬨を上げるかのように、誇らしげに叫ぶめーりんたち。 そう、実はめーりんたち。ゆっくりの見た目からは想像できないほどの怪力の持ち主だったのだ。 最初に見たときは驚いたものだ。 なにせれいむなら数十匹は必要になるほど巨大な部品をわずか数匹であっさりと運んでしまうのだから。 その上ほとんど疲れることを知らず、不満げな素振りすら見せずにニコニコついてくる。 その代わり、臆病でのんびり屋なのが玉に傷だが・・・それを差し引いても余裕でお釣りが返ってくるだろう。 お疲れ様、と労いの言葉をかけると嬉しそうに笑うめーりんたち。可愛いものだ。 そして他のゆっくりたちとわいわい騒ぎながら更に先へと進む。 しばらくは一本道が続くようだ。早く先を―――「まっておにいさん!」っと。 先ほどから反応が無かったので放っておいたが、私の頭の上でまったりしていたゆっくりが突如声を上げた。 「そこまでよ、おにいさん!!ここをすすんじゃいけないわ!!」 このナイトキャップをかぶったゆっくりの名は、ぱちゅりー。 めーりんとの意思疎通に困っていたときに現れ色々と教えてくれた恩人(?)だ。 他にもこの星について、わからない事を沢山教えてくれた。 しかも私が困っていることを知るとそのまま手助けを申し出て、一緒に来てくれたのだ。 どうやら知識量と反比例するように身体は弱いらしく、普段では長時間跳ねることもままならない。 だから移動時は私の防護メットの上で身体を休めているのだ。 まあ私としても、別段邪魔にはならないので全くもってかまわないのだが。 しかし進んではいけないとはどういうことか。ここを通らねば・・・ 「あそこにおおきなおはなさんがあるでしょ?あれはゆっくりをたべちゃうおはなさんなのよ。 このままこのみちをとおると、たくさんのゆっくりがたべられちゃうわ!」 ぱちゅりーの視線を追ってみると、確かに毒々しい色の花・・・に見える食虫植物のようなものがあった。 危ない危ない・・・このまま行くと大損害を被るところだった。 しかし見た所、道はここしかないようだしどうしたものか。このままボーっとしてるわけにもいくまい。 「だいじょうぶよ。そこにくささんがたくさんはえてるところがあるでしょ? そこにみちがかくされてるんだとおもうわ。たぶんまちがいないとおもうの」 確かによく見ると、一部だけ不自然なほどに草が生い茂って密集している。 試しに掻き分けてみると・・・本当に道があった!すごいぞぱちゅりー!! 「むきゅん!このくささんはあのゆっくりできないおはなさんのいちぶなのよ! なにもしらないゆっくりをたべるために、あのおはなさんがよくつかうわななの。 ゆっくりにはわからないようにしてあるけど、おべんきょうしたぱちぇにはつうじないわ!!」 ぱちゅりーのおかげで一切の被害を出さず先に進めた私達は、とうとうシャーク号の部品を見つけた。 しかし、部品はかなり高めの絶壁のてっぺんに鎮座している。崖の高さは私の身長の十倍程度か。 ところどころに足場のような部分があるが私では到底届きそうもない。が、しかし・・・ 「ちぇんのでばんなんだね!わかるよー」 まあそれに関しても彼らがいれば心配ない。 「あれくらいのがけさんならちぇんたちがちからをあわせればらくしょうだよ。まかせてねー!」 猫のような耳と尻尾を生やしたこのゆっくりの名は、ちぇん。 見た目どおり、とても身軽ですばやいゆっくりだ。 彼らならば軽いので私もより遠くに投げ飛ばせるし、身軽なので着地も問題ない。 今回のような高い崖でも、中継地点さえあれば数を頼りに仲間を踏み台にして登ることができるのだ。 その代わりに頑丈さに欠けるのだが、そこはご愛嬌というものだろう。 「それじゃしばらくじかんがかかるけど、こればっかりはしかたないんだよ。わかってねー」 流石にこれだけの作業を簡単には終わらせられない。 しばらく必死に頑張るちぇん達に指示を出しながら見守っていると・・・ 「んほぉぉぉ!!!たくさんゆっくりがいるわぁぁぁ!!」 「よりどりみどりよぉぉぉ!!ありすいますぐすっきりーっしちゃいそう!!」 「「「「「れ、れ、れいぱーだぁぁぁぁ!!!」」」」」 金髪のカチューシャをつけたゆっくりが大量に茂みから出て来た。 体中を汁まみれにして、アゴのあたりにある突起を更に尖らせている。 ゆっくりを無差別に襲う、ゆっくりありすの亜種。“れいぱー”だ。 奴らが何をどうやって襲うのかは名前で大体察して欲しい。 「ゆわぁぁ!!たすけてぇぇぇ!!」 「すっきりーっされたくないよぉぉぉ!!」 一部のゆっくりが我を忘れて騒ぎ立て、逃げようとする。 が、その他のゆっくりは落ち着いたものだ。悲鳴すら上げない。 「れいぱーなんかに、みんなはぺにぺにいっぽんふれさせないみょん!!」 なぜならば、心強い用心棒がいるからだ。 「いまはちぇんたちもがんばってるみょん!ここはししゅするみょん!!」 「かずではこっちがかってるみょん!ふたりひとくみでかかるみょん!! だれかがれいぽぅされそうになったら、そのすきをついておそいかかってやるんだみょん!!」 れいぱーの前に勇ましく躍り出た、黒くて細いリボンをつけたゆっくり。 みょんという名の彼らは運搬などもそつなくこなすが、真の実力は戦いでこそ発揮される。 瞬時にその場に適した作戦を立て、統率された動きで鋭くとがった木の棒を武器に戦う、 義侠心に厚くて仲間を決して見捨てない漢気溢れるゆっくりだ。 「それじゃ、ひとりもとおしちゃいけないみょん!・・・とつげきーっだみょん!」 「「「「「ちーんぽ!!!」」」」」 ・・・問題があるとすれば、たまに出てくる卑猥な単語くらいだろうか。 まあ本人達は意識して言っているわけではないので、もう触れないことにしているが。 「うわぁぁ゛ぁ゛!やべでぇぇぇ!!」 「ずっぎりじないでぇぇ!や゛だああぁぁぁ゛ぁ゛!!!」 「んほぉぉぉ!!れいむがいれぐいじょうたいだわぁぁ!!すっきりー!!!」 「あんまりきもちよくないけどとかいはなありすならどんとこいよぉ!!すっきりー!!」 「がばがばないなかもののまむまむでもがまんしてあげるわぁ!すっきりー!!」 「「「「「やべでぇぇぇぇ!!!」」」」」 「くらうんだみょん!!」 「しゅーれんをつんでるみょんたちがれいぱーなんかにまけるとおもうなみょん!!」 「すっき、うぎっ!?いだいぃぃぃ゛ぃ゛!!あでぃずのべにべにがぁぁぁ!!」 「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!あでぃずのどがいばなべにべにぢぎれぢゃっだぁぁぁ!!」 見る見るうちにレイパーの叫び声が多くなっていく。 仲間を庇いつつ的確に、獲物でれいぱーにとっての急所をズタズタにしているのだ。 以前、止めは刺さないのかと聞いてみたところ 「ゆっくりごろしはいけないんだみょん。 ちゃんとやりなおすちゃんすをあたえてやるんだみょん」 と言うことで被害が出ないように、罰として股間部だけを狙うらしい。ある意味一番惨い。 さて、こうしてはいられない。みょん達を手助けに行こう。 ゆっくり退治ならば私でも十分手伝える。ちぇんたちへの指示は頼んだぞ、ぱちゅりー。 「まかせて、おにいさん。いってらっしゃい!」 まあ別に気合を入れなくても、やる事といえば股間のアレを引き千切るだけなのだが・・・ ・ ・ ・ 「う・・うぅ゛・・・あでぃずのりっばなべにべに・・・」 「ぼうずっぎりでぎないわぁ・・・」 「べにべにがない゛いながものになっぢゃっだぁ・・・」 しばらくして、一匹残らず股間に穴が開いてしまったれいぱー達が泣きながら地面を転がっていた。 もう何度も見慣れた光景だ。以前は本当に大丈夫なのかと思ったが、みょんが言うには 「これくらいじゃしなないからそのうちたちなおるみょん。 ぺにぺにがなくなればふつうのゆっくりありすにもどるはずだみょん」との事。 まあそういうことなら、と割り切ることにした。正直私にはどうしようもないことではあるし。 そんなこんなでれいぱー退治が終わる頃には、ちぇんたちの作業も終わっていたようだ。 「おにいさん!ちゃんととってこれたよ!」 「じかんはかかったけど、これくらいちぇんたちならかんたんなんだよー」 シャーク号までの運搬はめーりんたちに任せて、一息ついたちぇんたちが 私の足元まで一斉に駆け寄ってきた。まだまだ元気なようで何よりだ。 「まだまだだいじょうぶなんだよ!わかってるよねー」 「ぱちゅりーのしじもとってもうごきやすくてよかったよ!またうでをあげたねー?」 「むきゅ、わかるの?いちおうおにいさんをみておべんきょうしてるんだけど」 一匹ずつ私に頭を撫でられながら、私の頭の上に戻ってきたぱちゅりーと楽しげに話していた。 おおむねいつも通りの光景だ。ちぇんたちは気持ち良さそうに喉(?)をゴロゴロ鳴らしている。 先にシャーク号へ部品を運んでいためーりんたちがもう帰ってきた。相変わらず仕事が速い。 こちらも一息ついたし今日はこれくらいにして、さあ帰ろうかとしたその時 「きょうもこれでおわりだね!たいへんだったよ!!」 「みんなもなかなかよくがんばったとおもうよ!まあれいむたちにはまけるけどね!!」 少し離れたところで、大声で話すゆっくりがいた。 私と共にいるゆっくりの中でも一番付き合いが長い、れいむたちだ。 少し離れた所にいるのは、れいぱー騒ぎの際に逃げたためだ。 先ほど言った“一部のゆっくり”は全てれいむ種のことである。 しかもその場にいておけばみょん達がきっちり守ってくれたというのに、 下手に逃げるから何匹かが犠牲になってしまっていた。その証拠に逃げなかった他のゆっくりは誰一人死んでいない。 「みんなごくろうだったね!!でももっとはやくすませようね!!」 「れいむたちがてつだえないからっていうのはわかるけどもうすこしがんばらないとね!!」 「かわいいれいむたちにはにんげんさんをゆっくりさせるしごとがあるからね!!」 「れいぱーのせいでれいむたちのなかまがすっきりーっされてしんじゃったよ!! みょんたちもがんばってくれないとこまるよ!!おわびとしてれいむたちをもっとゆっくりさせてね!!」 「「「「「ゆっゆっゆっゆっ!!!」」」」」 当の彼らはと言うと私達の冷たい視線も全く意に介さずに、好き放題言って体を揺らしていた。 しかし実際の所、彼らが言っていることはデタラメ以外の何物でもない。 ここに来て、私のれいむへの評価は『あまり役に立たない』から『全く役に立たない。むしろ邪魔』になっていた。 それならば何故ここにいるのかと言うと、 他のゆっくりを引っこ抜く際に、一緒に付いて来るから。 私とて、何もれいむが憎いわけではない。 死なせたくないなら、最初から引き抜かなければいい話だ。 その証拠にまりさ種の帽子が埋まっていた場合は無視しているので、まりさ種は今この場に一匹も居ない。 が、れいむは少し事情が違った。 集団を一気に引き抜く際に他のゆっくりの中に上手く紛れ込んで、必ず数匹ほどついてくるのだ。 いくら他の、いない集団を探せども探せども必ず紛れ込んでいる。これではまるでペナルティだ。 しかも 「おそいよくずめーりん!!ぴかぴかさんはこぶだけなのにどれだけかかってるの!!」 「まったくやくにたたないねくずめーりんは!!のろま!ぐず!!のんびりしてるとかばかなの?しぬの?」 「どうせあやまることもできないんだもんね!おぉおろかおろか!!」 「「「「「じゃ、じゃおぉぉん・・・・・・」」」」」 めーりんを目の敵にして、やたらといじめる。 どうやらめーりんが言葉を話せないことを理由に見下しているらしい。 いくら私や他のゆっくりが叱っても 「めーりんがぐずだからわるいんだよ!!」 「どぼじであんなくずかばうの!?かわいいれいむがかわいそうじゃないの!?」 などと言ってまったく反省しない有様だ。 言うまでもなく他のゆっくりはめーりんを差別などしない。 しかもめーりんは役立たずなどではない。むしろれいむの十倍は(腕力的に)役に立つ。 だがめーりんは気が弱いので、やたらとヘコんでその後の作業効率がガタ落ちしてしまう。 おまけに大所帯になってきた最近では号令の意味もよく理解せずに、勝手な行動を繰り返すのも珍しいことではない。 一方的な差別意識で協調の和を乱す。 雑音を振りまいて人の神経を逆なでする。 作業を一切手伝わずに自分の好き勝手に振舞う。 行進を乱すことで作業効率、活動時間を削る。 しかし絶対に別れようとせず、もし少しでも邪険に扱おうとすれば非難してくる。 ここまでくれば流石に、害悪と判断されるのも致し方ない事だろうと思ってしまう。 だがそれでも見捨てないのは、ひとえに最初の恩があるからだ。 この星に来て不安だった私を支えてくれたれいむ達。 今だって問題はあるが、あくまでもれいむ達自身には悪意はないのだ。・・・多分。 そして望む望まざるに関わらず、命を預かってしまった以上私には守る義務と責任がある。 なのでいとも簡単に、邪魔だからさようなら。などと言えるほど薄情にはなれないのだ。 ・・・とは言うが、最近は流石に度が過ぎている。 他のゆっくりからも苦情がちらほら出てきてるのだ。 流石にあからさまには表に出さないが、なんとなく全体の雰囲気から伝わってくる物がある。 このままではいけない。れいむに態度を正す気がないのなら、こちらも対策を考えなければ・・・ れいむ達をめーりん達から少し離しながら、私は深刻な問題として、考え込んでいた。 現在のゆっくり ちぇん、30匹。ぱちゅりー、1匹。みょん、30匹。めーりん、15匹。そして、れいむが20匹。 ~脱出計画20日目~ 「きょうはこれくらいだね。ちょっとつかれたよ~」 「みょんたちはもうすこしだいじょうぶそうだみょん」 「ぱちぇはこういうところ、くらくておちつくわ~」 あれからも回収は進み、とうとう残すところ、あと五つとなった。 今日は洞窟に来ている。 薄暗く足元に不安があったものの大した仕掛けや障害は無く、おおむね順調に調査、回収が終わった。 そして・・・ 「ぐずめーりんのせいでれいむがおみずさんにおっこちちゃったよ!」 「はやくしんじゃったれいむにあやまってね!!あやまれないならどれいになってね!!」 「じゃおぉぉん・・・・・」 れいむも相変わらずだ。今日もめーりんいじめに精を出している。 ちなみについ先程小さな池に落ちて死んでしまったのもめーりんに一切責任は無く、単なるれいむの不注意だ。 そりゃそこら辺を考え無しに跳ね回っていれば池にも落ちるだろう。 勿論自分から助けようとして死にに行く無謀なゆっくりはいない。 が、れいむ達はそうは思っていない。 むしろ最近は悪い事は全部めーりんのせいと思い始めている節がある。 本来ならば早く止めなければならないのだが 「おやめなさい。死んでしまったのはあのれいむのふちゅういでしょうに」 それは私の仕事ではなさそうだ。 「なに?さとりも「べつにだれかの味方というわけではありませんが、今回はれいむに非があります」ゆっ!?」 「どぼじで「むしろいわれもない罪でせめたてるあなたたちの方がよっぽどひどいと思いますが」ゆがあぁ゛ぁ゛!」 次々とれいむ達の言うことを先読みして、的確な意見を出すあのゆっくりは、さとりと言う。 目の様なアクセサリーをつけていて、死んだ魚のような目をしている彼女は礼儀正しく、そして少しばかり毒を吐く。 どうやら人、ゆっくりに関わらず心を読むことができるらしい、恐るべきゆっくりだ。 「めーりんたちも、もう心配はいりませんよ。え?いえいえ、おれいなどいりません」 「じゃおおん。じゃおぉぉん」 心を読むためにめーりんの言うこともわかるらしく、とても気に入られているようだ。 他のゆっくり達の心に隠された不安を取り除く、カウンセラーのようなことをやっている。 流暢に話せて頭もいいので、ぱちゅりーや私の話し相手にももってこいだ。 つい二日ほど前。倒れていたところを偶然発見して、救出したのが出会いだった。 話を聞いてみると、どうやら姉妹を探して各地を回っているそうな。 私達がこの星を飛び回っていることを知ると、連れていってくれと頼んできた。 理由は言わずもがな、姉妹の探索である。 こちらもまだ搭乗数に余裕はあるし、本人も何かしらの役には立つと言っているので迎えたのだ。 実際は上記のとおりに活躍してくれている。特にめーりんのことに関しては本当にありがたい。 余談ではあるが、“姉妹”と言う事は、ゆっくりにも性別があるのだろうか?と、ふと思った。 思えばれいぱーも性器のような物を持っていたし、それなら一括りに“彼ら”で纏めるのは失礼ではないのか? 以上の疑問をぱちゅりーにぶつけたところ、 「ゆっくりにそういうのはないわ。 あとすっきりーっにも、えっと・・・あかちゃん? とにかくそんなものきいたこともないわ。ゆっくりはあいさつされるとじめんからでてきて、 すっきりーっはきもちいいけどやりすぎるとしんじゃうもの。っていうことしかしらないの」 と言うことらしい。博識なぱちゅりーが知らないということは、本当に無いのだろう。 しかし、それなのに姉妹という概念はあるのは不自然だと思うが・・・まあ気にしないでおこう。 ともあれさとりは非常に抑止力、またはカウンセラーとして役立ってくれている。 ただ・・・ 「さとりはだまっててね!あとちかよらないでね!!!」 「こころをよむなんてきもちわるいよ!かわいいれいむのかんがえてることよまないでね!!」 「ろこつにちかよってくるなんていやらしいよ!くずめーりんとおにあいだね!!」 「どぼじでぞんなひどいごど言うんでずがああぁぁ゛ぁ゛!!?」 問題は、彼女自身が打たれ弱いことか。 淡々と毒を吐いたりするのでてっきり神経が図太いと思っていたが、 意外にさとりはガラスのハートの持ち主だった。 嫌味や遠まわしな悪口であればあるほど的確に倍返ししてくるのだが、 率直且つ単純な拒絶の言葉をぶつけられると簡単に傷ついてしまう。 よって語彙も遠慮もなく、ズケズケと自分の意見を通してくるれいむはさとりにとって天敵だったようだ。 「わだじだっでずぎでこころをよんでるわげじゃないでず・・・ も゛ういっぞあのこのように目をとじでじまいだい・・・・・・」 あぁ。またなにやら失意のあまりえらい事になりそうになっている。 止めなければ。ぱちゅりー!! 「わかってるわ!!えーっと、さとり!れいむのいうことをまにうけちゃだめよ!! ことばがたりないせいでああいうしかなかったの!わるぎはないのよ!!」 ああ。悪気がないのは本当だ。・・・だからなお悪いのだが。 最近思えてきたのだが、悪気もなくあそこまで自分勝手にボロクソ言えるのも一種の才能ではないだろうか。 羨ましいとは全く思わないが。 「・・・そうですね、ありがとうございます。もう少しがんばってみようとおもいます」 「むきゅん、それがいいわ。くじけちゃだめよ!!」 考えているうちに説得が完了したようだ。毎度の事ながらぱちゅりーも頑張るな。 「むきゅ~、さとりはかしこいからことばにきをつけないといけないの。・・・つかれるわ」 確かに大変だろう。説得役は私と交代でやっているのだが、だからこそぱちゅりーの苦労はわかる。 まあ、おかげでさとりも大丈夫だろう。それにしても・・・ 「さとりをやっつけてやったよ!やっぱりれいむがいちばんだね!!」 (なんでほかのゆっくりをいじめてよろこんでるの?わからないよ~・・・) 「いちばんゆっくりできるのはれいむなのになんでにんげんさんはやさしくしてくれないんだろうね!!」 (めーりんにはくずくずいってやさしくしないくせに、よくいうみょん・・・) 「きっとにんげんさんのめがふしあななんだよ!あんなよわいぱちゅりーといっしょにいるんだもん!!」 (ぱちぇはたしかにからだがよわいけどあなたたちとくらべても、そうちがいはないはずだわ・・・) ・・・どうしたものか。もう他のゆっくりも敵意を隠しきれていない。 れいむ達は鈍いから気付いていないが、このままではそう遠くないうちに不満が爆発する。 できればやりたくはなかったが、このまま和が壊れる前にれいむを捨てるしかないのか・・・ 頭を抱えて私はれいむをじっと見つめた。 「ゆっ?どうしたのにんげんさん。・・・れいむにみとれてるの?」 「やっとれいむのみりょくにきづいたんだね!!かわいくてごめんね!!!」 暢気なものだ。どういう扱いになるかもわからないのに、それも知らずにこんな事を本気で言っているのだから。 もはや救えないか。 仕方ないと、溜息をついて裁決を下そうとした瞬間、洞窟の奥から声が聞こえた。 「・・ぅー・・・」 声はどんどん大きくなっていき、やがて何者かの姿が見える。 「うっうー☆こっちからおおきなこえがしたどぉ~」 「う~♪あまあまがいっぱいあるどぉ~!!いただきま~すだどぉ~!!」 「えらびほうだいたべほうだいだどぉ!きっとかわいいれみぃへのごほうびねぇ~ん☆」 声の主は膨れた顔と体の・・・女の子!?馬鹿な!この星に、しかもこんな洞窟にどうして人間が!! なにやら少し、こう、ズレたセンスの帽子と服を着ていた。 計十人ほどいる女の子はゆっくり達を見ながら、笑いながら頭の悪そうな話し方で物騒なことを言っている。 これはどういう事なのか、ぱちゅりーに聞こうとすると・・・ぱちゅりーは震えて、固まっていた。 他のゆっくりも同じだ。あのみょんまでもが女の子を睨みつけたまま動かない。 そして「「「「「れ、れみりゃだぁぁぁ!!」」」」」れいむの一言が合図になった。 れいむは真っ先に逃げ、それに反応したようにれみりゃと呼ばれた女の子が一人襲い掛かった。 「ゆ、ゆっ!?やめてね!はなしてね!!あ゛っあ゛っ!あんごずわな・・い・・・で・・・」 そして逃げ惑うれいむの内、一匹に噛み付くと見る見るうちにれいむと中身を吸い尽くす。 「ぼ・・っど・・・ゆっぐ・・り・・・・・・」 「うー☆でりぃしゃすなんだどぉ!まだまだたりないからおなかいっぱいたべるんだどぉ!!」 ペラペラのカラカラになって、苦悶の表情を貼り付けたまま絶命するれいむ。 女の子はれいむのミイラを放り捨て、すぐに別のれいむを捕まえて、また躊躇なく中身を吸い始めた。 このままではれいむが全滅してしまうぞ! そうしてるうちに、女の子は手当たり次第にゆっくりを襲い始めた。 「うっう~♪はやくつかまるんだどぉ~」 「ちぇんはそうかんたんにつかまらないんだよ!あきらめてねー!!・・・に゛ゃ!!?」 ちぇんは必死に紙一重で逃げ回っている。が、そのうちに捕まり、中身を吸われ始めた。 「・・・れみりゃあいてじゃさくせんはむだだみょん! とにかくたくさんでおそいかかってだれかがつかまったらかまわずそのすきをつくんだみょん!!」 「「「「「ちーんぽ!!」」」」」 「うぅ゛~っ。いだいんだどぉ!なまいきなんだどぉ!! れみぃのすぴあ☆ざ☆ぐんぐにるをくらうんだどぉ!!」 「ぢ、ぢーんぼぉ!!」 「み゛ょん゛!!」 「さとりたちはさがってるみょん!!」 「大丈夫ですか!?」「じゃ、じゃお!?じゃおぉん!!」 みょんたちもさとりとめーりんたちを守りながら必死に応戦しているが、 女の子が持っている木の棒で払われて潰されていく。 そしてこっちにも一人、ゆっくりとやってきた。 ぱちゅりーも固まってる場合ではないぞ!一体あの子達はなんなんだ!! 「・・はっ!ごめんなさい、おにいさん!! あれはにんげんさんじゃないわ!ゆっくりよ!」 あれがゆっくり!?しかし体が・・・ 「れみりゃは“どうつき”のゆっくりなのよ! しかも“ほしょくしゅ”だから、なんとかしないとみんなたべられちゃうわ!!」 ほしゅくしゅ?・・・捕食種か!!よく見れば背中からコウモリの羽のような物が生えている。人間ではない様だ。 確かに、今の状況を見ていると他のゆっくりに比べて圧倒的だ。動きは遅いのに、手足があるだけでこうも違うのか。 今は数でなんとか押せているけど、そのうちどんどん不利になっていく。何とかせねば・・・しかしどうやって!? 「う~☆やっとあまあまたべれるどぉ♪いただきますだどぉ!」 「う゛ぎゅっ!?ぢ、ぢ、ぢーんぼぉ・・・!」 「みょん!・・・いまのうちにかかるみょん!みょんのぎせいをむだにするなみょん!」 「ぶぎぃっ!?いだいぃぃ!!でびぃのぷりちーなおかおがあ゛ぁぁ゛ぁ゛!!!」 「ぜーっ、ぜーっ・・・もう、うごけない・・・に゛ゃ!?」 「つかまえたどぉ♪れみぃのかりしゅまがあればこんなもんだどぉ☆」 「ちぇーん!!・・・ちぇんをはなすんだよ!わかってに゛ゃん!!」 「うるさいんだどぉ!かわいいれみぃにたべられるのをこーえーにおもうんだどぉ☆」 「に゛ゃ・・・に゛ゃ・・・わが・・・ら・・・な゛・・い・・・」 「「「「「ちぇぇぇーん!!!」」」」」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ・・・がわいいでいぶ・・・ゆ・・っぐり・・・」 「ここはほかとちがってかんたんにたべられるんだどぉ♪ ・・・でもちょっとまじゅいんだどぉ」 「あ゛あ゛あ゛!!でいぶぅ!ゆっぐりじでよぉぉ!!!」 「や、やめてね!たべるなられいむを・・・ゆ゛あぁぁ゛ぁ゛!!やっばりやべでぇぇぇ!!!」 「うっう~☆うあ☆うあ☆」 やはり押されてきたか・・・! 「ぶぎゃ!?・・・どぼじで・・でびぃ・・が・・・・」 私の頭の上のぱちゅりーを狙った奴を潰して、予想どおりの展開に思わず舌打ちした。 奴らは私が相手なら、そうたいしたものでもない。が、ゆっくりが相手ではそれどころではない。 私がカバーに入っても、とても全部は無理だ。どうする?いっそ何も考えずに片っ端から・・・ 「「「「「じゃぉぉぉぉん!!じゃおおぉぉぉぉん!!!」」」」」 とうとうみょん達に守られていためーりんたちが泣き叫び始めた。 当たり前だ。元々臆病なめーりんたちがこの状況に耐え切れるわけがない。 だが、それが災いしたのか――― 「うぅ~?あそこにもないてるゆっくりがいるどぉ!あれならかんたんにたべれるどぉ!!」 「ほんとだどぉ!しゃしゅがれみぃはいいことかんがえつくんだどぉ!!てんさいなんだどぉ!!」 痺れを切らした二匹のれみりゃが、泣き声に気付いてめーりん達に一斉に群がった。 「「いっただっきまーすだどぉ!!」」 二匹は口を広げてめーりんに噛み付く。駄目だ、間に合わない! 「「「「うー!!ゆっくりしね!!!」」」」 「「うっう~?なんなん、ぶぼぉ!!?」」 しかし突如横から、というかどこからともなくやってきた赤い物体が、高速でれみりゃを弾き飛ばした。 「じゃお、じゃおぉぉん!!」 「めーりんをいじめるやつはどいつもこいつもみんなゆっくりしね!!」 謎の物体の正体は四人の、赤い服を着た金髪の女の子。 体型とかがれみりゃに似ているところを見ると、おそらくゆっくりだろう。 「「「「「ふ、ふりゃんだぁぁぁ!!」」」」」 「「「「「うわぁぁぁぁ!!ふらんだぁぁぁぁ!!!」」」」」 今度はれいむだけでなく、れみりゃまでが慌てて逃げ出した。 ふらんと呼ばれたゆっくりはれいむやちぇんたちには目もくれず、れみりゃにだけ襲い掛かる。 「ぶえぇぇぇ!!いだい!だずげでざぐやぁぁぁ!!」 「うー!!くらえ、れーばていん!!」 「でびぃはこーまかんのおじょーざまなんだどぉ!いうごどぎがないどざぐやが・・・ぶぎぃ!!」 「うるさい!ゆっくりせずにしね!!」 のそのそと逃げるれみりゃたちとは対象的に、ふらんたちは非常に俊敏だ。 いとも簡単に追いついて持っている木の棒で頭を刺したり、徹底的に顔を殴りつけて潰したりしている。 「ど、どういうことだみょん?なんでふらんが・・・」 「こんなみょんなことはみたこともないみょん!」 「とにかくたすけてくれるんだね!ありがたいよー!!」 「・・・あとでたべられたりしないよねー?」 「たすけてね!れいむはおいしくないよ!!」 一部を除いて、今の状況に困惑気味だ。どうやらこれは異常な光景らしい。 「じゃおん!じゃおおぉん!!」 「なるほど・・・少し前におともだちになったゆっくりだったんですね」 「むきゅ!?そういえばまえにといってもつよいおともだちがいるっていってたわね。 まさかふらんのことだっただなんておもわなかったわ」 どうやらあのふらんはめーりんの友達のようだ。ならば味方ということでかまわないのだろうか。 「たしかにふらんとめーりんはなかがいいこともあるらしいけど・・・」 今や戦況は一変していた。 あれだけ好き放題やっていたれみりゃは数で勝っているにもかかわらず、 戦う気も起こさずに逃げ回り、ふらんに狩られてどんどんその数を減らしてゆく。 「う゛・・・う゛っうぅ・・・なんででびぃがこんなべに・・・」 「だまってゆっくりしね!!」グシャ そうしてる内に、とうとう最後のれみりゃを潰し終えた。 私とみょんたちが潰した数を差し引いても、実に八匹ものれみりゃを片付けたことになる。 そして、れみりゃの死骸を蹴り飛ばしたふらんたちはこちらに向かって歩いてきた。 一瞬身を固くする、めーりん以外のゆっくりたち。 それもそのはず。ぱちゅりーが言うにはふらんも捕食種らしいのだ。 あの速さが相手となれば、脅威は先ほどのれみりゃの比ではない。一応気は引き締めておかないと・・・ 「じゃおおぉぉぉん!!」 「うー、だいじょうぶ?だれかゆっくりしちゃってない?」 「じゃおん!!」 が、一向にこちらを襲う素振りは見せない。どうやら大丈夫そうだが・・・? 「う~?これがめーりんのいってたにんげんさん?」 「ゆっくりもたくさんいる!ゆっくりし・・・なせちゃだめなんだよね」 「じゃお!?じゃおおぉぉん!!」 「うー。わかってる・・・めーりんのおともだちならふらんにとってもおともだちだもんね」 反応を見る限りこちらに対しても敵意はないようだ。 その事に少し安心すると、ふらんたちは一斉にこちらに振り向いた。 「めーりんがぶじでよかったね。ついでにほかのゆっくりも」 ・・・あぁ、ぱちゅりーではなく私に言っているのか。 いや、確かに助かった。しかし何故急にこんな所に? 「うー・・・ふらんたち、れみりゃいじめてあそんでたの。そういえばここどこだろ?」 「そしたらめーりんのゆっくりできないこえがきこえたからたすけにきたの」 なるほど。遊んでたら遠くまで・・・ と言うか、知らないところまで来てしまうほど熱中していたのか。 「それじゃそろそろかえろっか・・・うー、ここどこなの?」 「さあ?どこかわかんないけどきっとなんとかなるよ」 「うぅ~・・・・・・」 用は済んだとばかりに引き返そうとしたふらんたちだが、 一匹だけがめーりんたちを見たまま動かない。 「うー、どうしたの?」 「じゃお?」 「・・・・・・やっぱりふらん、めーりんたちについてく!!」 「「「うー!?なにいってるの!!?」」」 突然の提案に他のふらんは驚いている。 それはふらんだけではない、私達もだ。 「このままじゃしんぱいだよ!またれみりゃがきちゃうかも!!」 まあ確かにこれから先、奴らに遭う可能性は決して低くないだろうが。 「ふらんがひとりでもいればあいつらみんなにげてくよ!だから・・・」 言いたい事はわかる。しかしふらんは捕食種だ。 他のゆっくりがなんと言うか・・・めーりんはどうして欲しいのだろう。 「じゃぉ・・・じゃおぉぉん!!」 「他のゆっくりをいじめないならついてきてくれるとうれしい、だそうです」 当たり前というか、最低限の条件だな。ふらんは守れるのだろうか? 「うー・・・でもおなかすいちゃうし、ゆっくりたべないとふらんがしんじゃうよ!」 困ったものだ。まさか饅頭であるゆっくりにも、食欲がある者がいるとは・・・ 正直、私としては居てもらえると非常に助かる。しかし他のゆっくりを死なせるわけにもいかない。 生贄に捧げるようで気が進まないのだ。当然だろう。 頭を悩ませる私を不安げに見上げるめーりんたち。ふらんもじっと見つめている。 「むきゅ・・・どうしましょう、おにーさん」 「みかただとこころづよいけど、さすがに吸われちゃうのはゆっくりできないですね・・・」 「ちぇんもこのふらんはこわくないけど、しんじゃうのはやだよー」 「たたかいのなかでしぬことこそぶしのほんかいだみょん!そんなしにかたはいやだみょん!」 「う~、どうするの?ふらん。はやくきめてよ」 「うぅ~・・・・・・」 皆、ふらん自体が嫌なわけではないが、食われるのは御免のようだ。 「ふらんもれいむをゆっくりさせてくれるの?れいむはだいにんきだね!!」 「ついでにじゃまなくずめーりんたちもたべちゃってね!」 「さっさとしてね!ふらんだからってぐずはきらいだよ!!」 「ほしょくしゅもとりこにしちゃうれいむのみりょくはすごいね!」 「「「「「ゆっゆ~ん、かわいくてごめーんね!!!」」」」 ただ一種族を除いて。 れいむ達は、ふらんが敵ではない事を確認すると逃げ惑うことをパッタリとやめてしまった。 それどころか他のゆっくりのように自分のために働いてくれると思い込んでしまったようだ。 実際はまだ味方になったわけではないのに、のんきなものである。 味方どころかふらんは友達のめーりんを馬鹿にされたことでイラッとしているというのに。 「・・・ごはん、ねぇ」 「じゃまなゆっくり・・・だみょん」 「ゆっくりごろしはゆっくりできないけど・・・」 「・・・めーりんばかにしたな・・・!!」 いや、ふらんだけではない。他のゆっくりの目までが妖しく輝いている。まさか・・・ 「ええ、そのまさかでしょう。 “殺さなければいい”だそうですよ。・・・私もどういけんですが」 やっぱり。だめだ!れいむを生贄にするなんて・・・ 「じゃあほかにほうほうがあるのかみょん!?もうみょんはげんかいだみょん!」 私の制止の声を聴いて、みょんが怒りをあらわにした。ここまで怒ったところは見たことがない。 そしてそれに続いて堰を切ったように他のゆっくりも不満をぶちまけ始めた。 「そうだよ!なんでれいむだけいっつもなんにもしないのに、あんなにえらそうなの!?」 「めーりんやさとりをいじめてよろこぶなんてゆっくりできないよー!!」 「おうたかなにかしらないけどうるさくてしゅうちゅうできないみょん!!」 「じゃ・・・じゃお?じゃお?」 あまりの勢いに、唯一この場で悪意を持たないめーりんは混乱している。 「だいじょうぶよ。ちゃんとすいきらなきゃしなないわ」 「しばらくほうっておけばなおるよ。わかってねー」 「いままですきかってやってきたぶんのつけをはらうんだみょん。とうぜんだみょん」 いや、しかし殺さないからと言って・・・ 「どうするおつもりですか?もうみんなこれいじょうはがまんはできませんよ。 折角のふらんのもうしでをことわれるほどの余裕もありません。 それになによりもみんなが怒っているのは、あなたの事です」 私の・・・?どういうことだ。 「あいつのせいでおにいさんはちっともゆっくりできてないみょん!」 「ゆっくりさせるなんていいながらじゃまばっかりしてるよ!!わかれよー!!」 「いくらわるぎがなくても、おにいさんがもうそろそろげんかいだってことぐらいきづくべきだわ! それができないなら・・・せめてできるはんいでやくにたつべきよ」 なんという事だ。私の悩みは、みんなにバレていたのか。 「まああれだけれいむのほうを見ながらため息ばかりついてれば、だれだってわかりますよ」 自分ではそこそこ隠し事ができるほうだと思っていたのに・・・ 「それはもういいわ、おにいさん。それよりもれいむのことよ」 「おにいさんもあまり時間がないんでしょう?このさいぜいたくは言ってられないと思いますが」 確かにさとりの言う通りだ。これから更に困難になっていくと思われる以上、もう時間に余裕はない。 ・・・・・・本当に殺したりはしないんだな?食べても死なないんだな? 「うー。がまんするからたぶんだいじょうぶ・・・だとおもう」 「じゃお!?じゃ、じゃおぉん!!」 「やさしいのですね・・・でもいけませんよ、めーりん。もう決まったことなのです」 「・・・ほんとはだれもすきでこんなことはしたくないみょん」 「でもれいむのせいでゆっくりできないのはもういやなんだよ。わかってね・・・」 「じゃあ、ふらん。たべてもいいわよ。・・・ぜったいにぜんぶすっちゃだめだからね」 「うー、わかってる」 ついて来ると言ったふらん以外は、話がまとまると別れの言葉を残して去っていった。 そして早速、ふらんは離れた所で騒いでいるれいむ達の元にゆっくりと歩み寄る。 「ゆ?なんなの?ようがないならあっちいってね!」 「あんまりふらんがちかくにいるとゆっくりできないよ!どっかいっててね!」 「でもぐずのめーりんよりかわいいれいむのそばにいたいっていうきもちはよくわかるよ!」 「・・・まためーりんばかにした!」 れいむの言葉で、とうとうふらんの堪忍袋の緒が切れたようだ。 ふらんはれいむを一匹だけ持ち上げて 「ゆっ!?おそらをとんでる―――」 「ゆっくりいただきます!!!」 「―――ゆぎぇっ!!」 噛み付いた。 「「「「「で、で、でいぶぅぅぅぅ!!!」」」」」 「どぼじでいぎなりだべぢゃうのぉぉぉ!!?」 「ふらんはでいぶたちのどれいじゃなかったのぉぉぉ!!?」 「うわ゛ぁぁぁ゛ぁ゛!!!でいぶがぁぁぁ゛ぁ゛!!ゆっぐりじでぇぇぇ゛ぇ゛!!!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ・・・あ゛っやべでっ、ずわないっでっ!!」 「うー。うー。ごちそうさまでした。・・・あんまりおいしくなかった」 「じっんじゃうっ。でいっぶ、じっんじゃっう」 ふらんの食事が終わった頃には、れいむはげっそりした痛々しい姿になっていた。 「ゆぁぁぁ・・・どぼじででいぶが・・・」 「ごんなのゆっぐりでぎないよぉぉ!」 「にんげんざん、どういうごどなのぉ!!?なんででいぶだちをゆっぐりさせでぐれないのぉ!!?」 私に向かって、何故、どうして、と口々に訴えかけるれいむたち。 それに答える言葉を私は持ち合わせていない。せめて好きなだけ言わせてやろう・・・と思ったのだが。 「れいむがはたらかないからわるいんだよ」ボソッ 「・・・ちぇん?いまなんていったの?」 「れいむがなんにもしないからわるいんだよ!」 れいむたちの声に答えたのは、ちぇんの怒りの声だった。 それを皮切りにして、みょんたちも次々と今まで溜めていたものをれいむにぶつけ始める。 「いっつもへんなおうたばっかりうたってなんにもしなかったよ!!」 「それどころかおにいさんのいうこときかないし、なんでもほかのだれかのせいにするし!!」 「れ、れいむはにんげんさんをゆっくり」 「おにいさんはぜんぜんゆっくりできてなかったよ!そんなことにもきづかなかったの?ばかなの?しぬの!?」 「ちがうよ!れいむはほかのゆっくりよりも!」 「なんだみょん!?れいむがほかのゆっくりよりもすごいところといったら、 ほかのゆっくりのわるぐちいってゆっくりできなくすることだけだったみょん!!」 「おまけにどれだけおこってもじぶんはわるくないってぜんぜんはんせいしなかったみょん! そんなれいむのどこがゆっくりできるんだみょん?ゆっくりできるのはれいむたちだけだみょん!」 「めーりんのほうがよっぽどゆっくりできるみょん! きがよわいめーりんのやさしさにつけこんですきほうだいいうれいむよりはみょん!!」 「「「「「う・・・うぅ・・・」」」」」 全員から責められて何も言えなくなったれいむたちの前に、さとりとぱちゅりーが出てきた。 「かわいそうだとは思います。あなたたちには心から悪気がないことも私にはわかっています。 でも、あなたたちはやりすぎました。もう少しはやくきづくべきでした」 「はたらくきがないいじょうここでおわかれするか、なにかやくにたってもらうしかないわ。 ・・・いまのあなたたちにできることはふらんをゆっくりさせることだけよ。 ときどきなかみをすわれるいがいはなにもしなくていいの。それくらいはがまんしてちょうだい」 「い、いやだぁ・・・」 「ゆっぐりさせでよぉ・・・」 「でいぶたべられたくないよぉ。にんげんさん・・・」 無情に告げられたれいむ達は、今度は助けを求めるかのようにこちらを見た。 しかし、それに答えるための言葉も私は持ち合わせていなかった。思わずれいむたちから目を逸らす。 ・・・行こう。 「いつまたれみりゃがくるかわからないみょん。さっさとかえるみょん」 「ふらんもこれからよろしくねー!!」 「うー、よろしくね」 「じゃおぉん・・・」 「行きましょう、めーりん。もう決まったことですから」 「ごほっごほっ。ひさしぶりにたくさんはなしたからつかれちゃったわ」 れいむたちを放っておいて、私たちはシャーク号まで帰ることにした。 誰一人としてれいむたちがいる方には目を向けない。 そしてれいむたちはと言うと、しばらく静かに泣いていたが だれもかまってくれないことがわかると急いで後をついて来た。 本当にこれでよかったのだろうか・・・? 現在のゆっくり ちぇん、20匹。みょん、15匹。めーりん、15匹。ぱちゅりー、さとり、ふらん、1匹。ふらんのお弁当、4匹。 ~脱出計画25日目~ ようやく・・・ようやくここまで来た。 目の前には(だれが作ったのかは知らないが)何故か大きな橋と、その先には最後となる部品が転がっている。 とうとう最後となったこの地域にはそれこそこれまでとは比べ物にならないほどに苛酷な環境が待っていた。 尺の都合上詳細は省くことにするが、とにかくみんなの力を合わせてここまで来たのだ。 「これでさいごかみょん・・・」 流石に疲れた様子でみょんが呟く。 彼らに限らず、私も含めた皆が満身創痍だ。 巧妙な罠や仕掛け。そして相次ぐゲスゆっくりやれいぱーたちとの連戦で随分数も減ってしまった。 ここまで残ったのは、ほとんどが出会った当時からずっと一緒にいるゆっくりばかりだ。 経験がモノを言ったのだろうと思う。 「けほっ。あとは、はこぶだけね。めーりん。つかれてるでしょうけど・・・」 「じゃおぉぉぉん!!」 「ここまでみんなのおかげで休めたからだいじょうぶ、だそうです」 「がんばろうね、めーりん!」 「「「「「・・・・・・」」」」」 皆が楽しそうに話す中、れいむたちだけが少し離れたところで黙り込んでいる。 この前までの、あの騒ぎようが嘘のようだ。 れいむがふらんの食糧となってから数日間。 皮肉にも皆の言う通りにしてれいむが大人しくなってから、私達の作業効率は大幅に上がってしまった。 今までのように迂闊にめーりんたちを馬鹿にすれば、機嫌が悪くなったふらんに食べられる。 言うことをきかずに好き勝手すれば、作業が長引いた分だけ空腹になったふらんに食べられる。 他にも、生意気を言えば食べられる。目が合うと食べられる。おやつ代わりに食べられる。 暇潰しに食べられる。地面から出た瞬間に食べられる。とにかく食べられるなど、数え上げればきりがない。 しかも確かに死ぬまで吸われることはないのだが、基本的に吸われた後はほったらかしである。 元々他のゆっくりとは基礎能力に差がある上に、体力が風前の灯となったれいむが進行について来れるだろうか? そんなわけがない。吸われたれいむのほとんどが、体力が戻る前に息絶えてしまっていた。 いくられいむでも吸われる事が間接的な死因となってしまうことは流石に理解している。 よってふらんに目をつけられないように、自分に出来る限り空気を読むことにしたようだ。 私もできれば助けてやりたいのだが、それは他のゆっくりに止められてしまった。 あれから以来、れいむに対するみんなの風当たりがとても強くなっていたのだ。 “れいむはあれがお仕事。あれだけしかできないんだから気を使ってあげる必要はない。” “皆だってお仕事中に死んじゃうことがあるのに、なんでれいむだけ助けるの?” などと、そんなことまで言われてしまっては流石に手を貸すわけにはいかなかった。 だがそのおかげで効率がグンと上がり、ふらんの助けもあってとうとうここまで来ることができた。 目の前ではめーりんたちが懸命に部品を持ち上げている。 最後だけあってかなり大きいのだが、彼らならきっと問題ないだろう。 さあ、帰ろう。そして・・・ ・ ・ ・ 帰り道。ほとんどのゆっくりが運搬に数を割かれている中、残った数少ないゆっくりと私は話していた。 残ったゆっくりは皆、始めてその種族にあった当初からついてきてくれている数少ない生き残り。 言わば最古参とも言うべき存在である。 ゆっくりは引き抜いた直後にある程度情報をリンクさせるらしいので 皆それなりに私に友好的なのだが、やはりこうも付き合いが長いと特別というか、愛着が湧く。 右手に絶壁、左手に少し底が深めの溝がある道を通っていたところで、皆が唐突に口を開き始めた。 「よかったね、おにーさん!これでやっとゆっくりできるね!!」 「みょんたちもがんばったかいがあったみょん!」 「これまでいろいろあったわね。・・・でも、もうおしまいね」 「じゃぉん・・・」 ぱちゅりーの一言で、場の空気が沈む。 そう。これで最後ということは、後は私が脱出するだけ。そして彼らとは・・・ わかっていたことだが、やはり少し気分が落ち込む。想像以上に、私は彼らが気に入っていたらしい。 だが、こうして沈んでいても仕方ない。 幸いリミットまでにはまだ時間がある。一日くらい時間をとってゆっくりしてもいいだろう。 この星に来て、初めての休暇だ。せめて思いっきり楽しい時間を・・・ 「そこまでよ!!」 「ここでとまってね!!」 またか!今度はなんだ?考え事をするといつも邪魔が入る!少しは場の・・・でかいな、オィ。 「どすにむかってえらそうだよ!にんげんのくせに!!」 「さっさとはなしをききなさい!むきゃきゃきゃきゃ!!」 声のした方をみると、そこには二匹のゆっくりが目の前に立ち塞がって大声を出していた。 なんだか気持ち悪い笑い方のぱちゅりーと、とんでもなく大きいまりさだ。 まりさの帽子の上に、ぱちゅりーが乗っている。 ぱちゅりーの方は単にゲスっぽいで済ませられるのだが、まりさの方は・・・色々と規格外だ。 とにかくでかい。私の身長の約三倍はある。道を埋め尽くすほどの大きさだ。 それにしても何の用だろうか?生憎と、もう助けは必要ないのだが・・・ 「なにいってるの!なんでゆっくりをいじめるにんげんをたすけなきゃいけないの?」 「むきゃ!どすがにんげんのいいなりになるとおもったらおおまちがいよ!」 虐める・・・?どういう事だ。 「とぼけてもだめだよ!みんなにぴかぴかさんをはこばせたり、れいぱーとたたかわせたり、 ふらんにれいむをたべさせたりしてたでしょ!どすはぜんぶみてたんだよ!!」 ああ、そういうことか。れいむはともかく、他の子はみんな善意で・・・ 「だまってね!もうにんげんなんかにすきかってさせないよ!! どすがみんなをつれてくからね!それでとってもゆっくりしたむれをつくるからね!!」 怒っているのはわかるが、いまいち話の要領がつかめない。 連れて行く?群れ?なにがなんだかサッパリだ。 「むきゅ!まさかどすがいるなんておもわなかったわ! どすはゆっくりのむれのおさになるべきゆっくりなのよ。 ゆっくりをゆっくりさせるのがおしごとなんだって。ぱちぇもみたのははじめてだけど」 なるほど。リーダー種か。名前はドスまりさとでもしておこう。 しかし、これは調度よかったのではないか? 私がいなくなった後の引き取り手が見つかってよかったとも言える。 ぱちゅりーの言う通りならきっと悪いようにはしないだろうし・・・ まあ最後の部品を運び終わったら、引き取ってもらってもかまわない。 「なにいってるの?どすはいまほしいからいまからつれてくよ! ついでにそのぴかぴかさんもどすのたからものとしてもらっていくよ!!」 なんだと?それは困る! 「しらないよ!げすにんげんはかってにひとりでのたれじんでね! さあみんなそのぴかぴかさんもってついてきてね! そこのげすにんげんなんかよりもたくさんどすがゆっくりさせてあげるよ!」 ドスは自信満々に呼びかける。私の言葉など全く聞いていない。どうしたものか・・・ 「やったー!!どすがきてくれたよ!!」 「これでやっとゆっくりできるよ!!」 私が頭を捻っていると、一部のゆっくりが飛び出して、ドスの下へと駆け寄った。 ・・・れいむだ。 「よろしくね!どす!!れいむたちをゆっくりさせてね!!」 「やっとこれからゆっくりできるよ!!もうあんなところにいたくないよ!!」 「ゆゆ~ん♪やっぱりかわいいれいむがさいごにはかつんだね!!」 「・・・よろしくね。れいむ」 私の下にいたれいむが軒並みあちらに移ったようだ。 理由は聞かなくてもわかるが・・・ドスがあまり嬉しそうじゃないのは何故だろう。 「あのにんげんぜんぜんれいむたちにやさしくしてくれなかったよ!」 「せっかくゆっくりさせてあげたのにおれいもいわなかったよ!」 「ゆっくりさせてあげたんだからゆっくりさせてくれるのがあたりまえなのにね!」 「そうだね!おまけにふらんにかわいいれいむたちをたべさせるなんてさいてーのげすにんげんだよ!!」 次々と出てくるれいむたちの不満。まさかここまで恨まれていたとは・・・身に覚えがないのがほとんどだが。 それにしてもれいむがみんな行ってしまったという事は、 「さあ、ほかのゆっくりもみんなこっちにきてね!! どすがしあわせーっ!!にしてあげるよ!!さっさとこっちきてね!!」 他の皆も行ってしまうかもしれないという事だ。 ふと様子を見ると、皆はうつむいて考え込んでるようだった。 「そんなげすにんげんなんかほっといてはやくこっちきてね! むれをつくってどすがだいすきなゆっくりぷれいすにしようね!!」 ・・・正直、ここまで来て諦めきれないというのが本音だ。 しかし、もうここらへんで終わりかもしれないな。 ゆっくりの長と、偉そうに命令するだけの人間じゃ差は歴然だ。だれだって前者について行きたくなる。 「さっさとしてね!かんがえなくてもわかるでしょ? そんなえらそうなだけのやくたたずよりもどすのほうがえらいんだよ!!」 「むきゃ!しかもこっちにはそんなのうなしぱちゅりーじゃなくて このもりのけんじゃのぱちゅりーさまがいるのよ!こっちにきたほうがいいにきまってるわ!!」 ・・・奴らの言っていることは非常に腹が立つが、私にはどうしようもない。 あんなに大きなゆっくりを倒す方法も思いつかないし、せっかく彼らが平和に暮らせるチャンスを・・・ 「おことわりだよー」 ・・・なんだって? 「どすのところにはいかないよ!ちぇんたちはおにいさんといっしょにいるよ!」 「みょんたちもどすのところにはいかないみょん!ゆっくりぷれいすなんかいらないみょん!!」 「ぱちぇもやめておくわ。のうなしっていわれたのもきにいらないし」 「じゃおおぉぉん!!」 「行かない、だそうですよ。私もけっこうです。だって、あなたたち・・・」 「うー!めーりんたちがいかないならふらんもいかない!!」 私のそばにいるゆっくり達が、一斉にドスに向かってお断りの返事を言い始めた。 いや、そばにいる者だけではない。運搬中の者達も、荷物を下ろして一斉に騒いでいる。 「ど、どぼじでぇぇぇ!!?どずがゆっぐりさせであげるっていっでるのにぃぃぃ!!」 その通りだ。このままついて行けば仲良く、平穏に暮らせるというのに。 「それでもおことわりだみょん!」 「おにいさんのこともよくしらないのにわるくいうどすなんかといっしょにいきたくないみょん!!」 「どすなんかいなくてもちぇんたちはゆっくりできてるんだよ!わかるねー?」 「じゃぉぉぉん!!じゃおおぉぉぉん!!!」 「そうですね。めーりんのいうとおりです。 いきなり出てきてすきほうだい言っているあなたたちよりも、 私たちはおにいさんをえらびます。そもそもいじめられてなどいませんしね」 「つまりあなたたちよりもおにいさんといっしょにいたいのよ。 いっしょにいれるじかんがあとちょっとしかなくてもぱちぇたちはおにいさんといっしょにいるわ!」 まさかここまで慕われていたとは。不覚にも少し感動してしまった。 しかしそれではドスたちは・・・ 「ゆぐっぐぐぐぐ・・・・!!どういうことなのぱちゅりー! いってたこととぜんぜんちがうよ!!」 「むきゃ!?そ、そんなことないわ!!かしこいぱちぇのかんぺきなさくせんが・・・ぱちぇのせいじゃないわ!!」 「なにいってるの!ぜんぶぱちゅりーがいいだしたんでしょ!? どすがでてきてにんげんさんをばかにすればみんなあきれてついてくるっていったじゃない!! にんげんさんがそだてたゆうしゅうなゆっくりでどすのかんっぺきっなむれをつくろうとしたのにぃ・・・」 なるほど、そういうことか・・・ それにしても随分と勝手にペラペラとばらすものだ。これでは語るに落ちるとも言えない。 「・・・まあそういうことです。あのドスたち、ずっとそのことばかり考えてましたよ」 しかもモロバレだったらしい。そりゃついて行かないか。 「いえ。それはあくまでも私だからわかったことです。 みんなは本当に心からドスよりもあなたをえらんだのですよ。にんきものですね。 ああ。もちろん私だってしらなくてもあなたをえらんでましたので。かんちがいしないでくださいね?」 そう言われるとどうにもむず痒くなる。だが、悪い気はしない。 「ど、どうしたの?どす。ゆっくりできてないよ?」 「あんなゆっくりがいなくてもかわいいれいむたちがいるよ!!しんぱいしないでね!!」 「ぐぞぉぉぉ!!こんなやくたたずでもなにかのやくにたつとおもったのにぃぃぃ!! おまえたちなんかいらないよ!ドスがほしいのはゆーのーなゆっくりだよ!!さっさとどっかいってね!」 「「「「「ゆがーん!!!」」」」」 れいむはおまけ扱いか。流石にここまで来ると可哀想だな・・・ それにしても、結局奴らはどうするのだろう。 あそこを退いてもらわないと帰るに帰れないのだが。 「う゛う゛う゛う゛・・・もうゆるさないよ! こんなどすのすごさがわからないゆっくりなんていらないよ!! にんげんといっしょにどすすぱーくでころしてやる!!」 「むきゃ!!やっちゃえ、どす!ぱちぇのおもいどおりにならないゆっくりなんていらないわ!!」 「いくよ!むーしゃむーしゃ・・・」 とうとうドスが逆上した。言ってる事はまるで子供の我侭だが、あのサイズでは暢気にしていられない。 そしてドスが何かを食べるような動作をすると、徐々にドスの口内が光りだす。なんだ、あれは! 「むきゅっ!?いけないわ。あれはどすすぱーくよ!!」 どすすぱーく!?・・・なにやらまずそうな雰囲気がプンプンするが、やっぱり危険なのか? 「とってもあついひかりをだす、どすのゆっさつわざよ! おおきないわもこわせるくらいにすごいの!こんなせまいみちじゃにげられないわ!」 熱光線!?そんな馬鹿な!!熱光線が出せる生物なんか・・・いや、もう気にするのはやめよう。それこそ今更だ。 それよりもどうする。ぱちゅりーの言うことを信じるならば、到底防ぎきれる物ではない。 当然逃げ場もないし、このままでは全滅してしまう。 右の崖はとても登れそうにない。左の溝は・・・駄目だ、深すぎる。一度入ると這い上がる方法がない。 しかも溝の底には、少しだけだが水が流れている。それだけでも時間がかかればゆっくりにとっては致命的になる。 ふらん!ドスを何とかできないか! 「うー・・・たぶんむり。かてないわけじゃないけどじかんかかる」 ですよね!なら説得は・・・ 「ほうふぐうへるひょ!ひんあひはごおひはよ!!ひゅっひゅっひゅっひゅ!!!」 「むきゃきゃきゃきゃ!!おばかなぱちゅりーといっしょにゆっくりできなくなっちゃいなさい!!」 ああ、なんだか駄目っぽい。口が開いて何を言っているのかは解らないが、絶対ろくな事じゃない。 ならこの際部品を盾に・・・だめだ。とても全員は隠れられない! まったくいい案が思いつかない。この星に来てからずっとこうだ! 「やべでぇぇぇ!でいぶなんにもしでないよぉぉぉ!!」 「どすはゆっくりさせてくれるんじゃなかったの!?しにたくないぃぃぃ!!」 「たすけてね!!たすけてよぉ!!にんげんさんでもいいからかわいいでいぶをたすけてぇぇぇ!!」 そうしてるうちにどんどん光は強くなっていく。 「ひふひょ!ほふふはーく!!!」 くそっ、こうなったら一か八か溝に飛び込んで――― 「そんなことしちゃだめだよ!!ゆっくりやめてね!!」 「ぎゅっ!!?」 『ボン!!!!』 「むぎゃっ!!」 全員に飛び込むように告げるために振り返った矢先に、ドスの方から巨大な爆発音が聞こえた。 「ゆ゛っ・・・ぎゅ・・・どぼ・・じ・・・でぇ・・・」 「な゛に゛が・・・がじごいばぢぇ・・・ゆっ・・ぐり・・・」 何事かと見てみると、ドスは口の中が爆発したようにえぐれて片目が飛び出ている。 頭上のゲスぱちゅりーも何かに潰されたようにへこんで、クリームを吐いていた。何が起きたのだ? 「あ゛っあ゛っ・・・おぢるぅぅぅ!!」 「むぎゃあ゛っ!!?」 そしてバランスを崩して溝に落ちた。あ、ついでにぱちゅりーが下敷きになって死んだ。 ・・・よく分からないが、これは助かったのか。 状況がつかめないのでイマイチ実感が湧かない。一体あれからどうやって? 「おねえちゃーん!!」 「こいし・・・こんなところにいたんですね!」 急に聞き覚えが無い声が聞こえたのでそちらに向くと、 見知らぬゆっくりがさとりと体をくっつけている所だった。いつの間に!? ・・・よく見ると身に着けているものや雰囲気がどことなくさとりに似ているが、まさか・・・ 「はい。この子がさがしていた、いもうとのこいしです」 「おにーさん!あぶないところだったね!!」 彼女が例の・・・さとりと比べると随分快活な印象を受けるな。 ん?今の物言いだとまるで君が助けてくれたように聞こえるのだが・・・ 「そうだよ!かべのうえからあのあやしいどすをみてたんだけど、 おねえちゃんがあぶないところだったから、かべからとびおりてどすのあたまにぶつかったの!」 なんとも危ない真似をするものだ。一歩間違えれば地面に激突して死んでいたというのに。 しかしこれで合点がいった。ドスは頭からぶつかられた拍子に口を閉じてしまったんだな。 後は発射口を塞がれたまま暴発して・・・あの様というわけだ。ぱちゅりーはその余波を食らったのだろう。 「こいしは“むいしき”でうごけるからほかのゆっくりにもみつからないんだよ! これからのじだいは“すてるすこいし”だね!!・・・ね?」 無意識で、か・・・まるで武道の達人のようだ。いや、時代かどうかは聞かれても困るが。 「だ・・・だずげ・・・で・・・」 おお、忘れていた。どうやらまだ溝に落ちたドスが生きていたようだ。 「ごべんなざい・・・ばでぃざがわるがっだでず・・・だがら・・だずげで・・・」 うーむ。・・・済まない、無理だ。 「ど・・・どぼ・・じ・・・で・・・」 私達でも引き上げる方法がないと言っているのに、君のような巨体を引き上げる方法などあるはずがない。 それに、流石に殺そうとしてきた相手を助けようとするほど私はお人好しではないのだ。 時が経てば、そのうち水で溶けて死ぬことができるだろう。 まあそれが何日、何ヶ月かかるかは解らないが・・・頑張ってくれ。 「ぞんな・・たすげで・・・いかないでぇ・・・やだ・・・やだぁ・・・・・・」 さあみんな。随分遅くなったけど、シャーク号へ帰ろう。 「どうなることかとおもったけど、みんなぶじでよかったみょん!」 「もうひとがんばりだよ!がんばろうねー!!」 「じゃおぉぉぉん!!」 「うー♪ふらんもてつだう!!」 「むっきゅん・・・ごめんなさい。すこしやすませてもらってもいいかしら?」 「ねえ、おにーさん。こいしもいっていい?」 ああ、もちろんだ。なんと言っても命の恩人だからな! 「やったー!!これでおねえちゃんといっしょにいられるよ!!」 「そうね。・・・どこをむいしきでふらふらしていたのか、ちゃんときかせてもらうわね」 「お、おねえちゃん、こわい・・・」 みんな思い思いに帰ってゆく。もちろん部品は忘れない。 これで本当に終わりなんだな・・・ 「に・・・にんげんさん?」 「れいむたちを・・・わすれないでね?」 そんなとき、れいむたちが恐る恐る話しかけてきた。まだいたのか。 「しょうがないねえ、にんげんさんは・・・」 「ひどいよにんげんさん。れいむをわすれるなんて・・・ふひっ」 れいむたちは仲間にしてほしそうにこちらを見ている。 「にんげんさん。まさかれいむをおいていったりしないよね?」 「かわいいれいむをゆるしてね・・・ごめーんね?」 「すてるわけないよね?つれていってくれるよね?」 なかまにしますか? お断りします! あれだけの事を言ったのだ。当然戻ってこれるわけがない。 今回は流石に私も見過ごせないし、もし私が許しても他の者達が絶対に許さないだろう。 「ぞんなぁ・・・だずげでよぉ・・・」 「こんなところにいちゃゆっくりできないよぉ・・・」 確かにここには草木が一本も生えておらず、すべてが岩肌で殺風景な事この上ない。 こんな所では、基礎能力が底辺のれいむたちではまともに生きていけないだろう。 まあしかし、あそこで罵詈雑言を言ったのが運の尽きだ。 このまま戻って他のゆっくりにフクロにされるか、ここで頑張って生きるかの違いなんだから耐えなさい。 「やだ・・・ゆっくりさせてよぉ・・・」 「おねがいします!れいむがわるかったです!あやまりますから・・・だからぁ・・・」 その言葉を、もっと早くに聞きたかったよ。 ずっと謝り続けるれいむたちに背を向けて、私はみんなの後を追いかけた。 ・・・さよなら、れいむ。 「「「「「い゛やだぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!ゆっぐりざぜでよぉぉ゛ぉ゛!!!」」」」」 もう、私は振り返らなかった。 現在のゆっくり もう書く必要はない! ~脱出決行。別れの日~ とうとうこの日がやってきた。 私はいつものように防護スーツに身を包み、皆は見送る為にシャーク号の前に集まっている。 「おわかれだね、にんげんさん。わかりたくないよー・・・」 「いろいろとしゅぎょうになったみょん。ゆんせいいっしょうわすれないみょん!」 「じゃぉぉぉん・・・」 「うー、ないちゃだめっていったでしょ?」 「おにいさんのおかげでこいしも見つかりました。ほんとうにありがとうございます」 「もうどこにもいったりしないからだいじょうぶだよ!おにいさんも・・・またあおうね!」 「むきゅ~。でもおにいさん。ほんとうにぱちぇたちここにすんでいいのかしら?」 そう。ぱちゅりーが言う通り、彼らにかつて拠点であった場所である、ここに住むように私が勧めたのだ。 ここにはれみりゃやれいぱーどころかゆっくり自体がいない。よって敵となる者がいない。 彼らの繁殖方法がなんなのかは知らないけれど、思うがまま繁栄できるはずだ。 そしてふらんの食事なのだが、ここには沢山の果実がなっている事に気付いた。 色々と調べてみると、どうやら様々な果物が季節ごとに生るようだ。 ふらんが言うには、別にゆっくりじゃなくても甘いものなら何でもいいとの事なので、 これは使えないか?と思い提案した。 幸いふらんも気に入ったようだ。これでもうゆっくりを襲う事はないだろう。 仲間に会えなくてもめーりんや他のゆっくりがいるから寂しくもないらしい。 気候も落ち着いているし、近くに洞穴があるので多少雨が降っても大丈夫だ。 まさに“ゆっくりプレイス”だと言えよう。 最後にほんの少しだけど、恩返しができて本当に良かった。 ・・・さて、本当にもう行かないとな。 「おにいさん!たいへんだったけどたのしかったよ!!」 「みょんたちなかよく、げんきでやっていくみょん!しんぱいしないでみょん!!」 「じゃぉぉぉん!!じゃおぉぉぉぉん!!!」 「おともだちたくさんできて、ふらんとってもうれしかった。ありがとう!・・・うぅ~」 「私も、すこしじぶんがすきになれそうです!おせわになりました!」 「こいしはみじかいあいだだったけど、とってもゆっくりできたよ!ありがとね!!」 「おにいさん、ずいぶんあたまがかるくなったでしょ?・・・またのせてね!さようなら!!」 「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」 皆が口々に別れの言葉を告げてゆく。 が、しかし。これが今生の別れではない。 また会おうと思えばいつだって来れるのだ。・・・この防護スーツを纏って。 だから、きっと彼らにはこう言うべきなのだろう。 また会おう、と。 ~脱出後。シャーク号船内~ さて。救命信号も発信したし、最悪自力でも近くの補給コロニーまで行ける。もう心配する事はない。 帰ったらこの命がけの、それでいて不思議な冒険を話にまとめよう。 そして・・・まあ信頼できる近しい人間にくらいは見せてもいいだろうか。 だが彼らがいた星の場所に関しては、黙っていようと思う。 あそこは無闇に人が立ち入るような場所ではないように思えたからだ。 人々が彼らの存在を知る事で、邪な余計な考えを持つ者が訪れる必要はない。 彼らが望む事は、ただ自分と誰かが仲良く一緒にゆっくりする事だけなんだから。 私がいなくなった約一ヶ月間、随分世間を騒がせたのだと思う。 きっと帰ってから色々と忙しくなる。 だからせめて、彼らが別れ際に言ったとおりに今だけは思う存分ゆっくり休む事にしよう。 私はシートに身を預けて、この一ヶ月で何度も口にしたあの言葉を思い浮かべて目を閉じる。 ゆっくりしていってね、か・・・ なかなかいい言葉じゃないか。 ・あとがき ようやく書き終わりました。 かなりズルズル長引くし、正直放り出したくなった問題作です。 こうやって形にしてもなんだか気に入らないし、正直言って前編あげてなきゃお蔵入りだったでしょう。 それでも一応形にはしてみたので、読んで下さった方の時間が無駄にならない程度には・・・と思いたいです。 ちなみに、最近気づいた事ですが、私は通常種が嫌いなのではありませんでした。 れいむとまりさが嫌いなのです。あとレイパー。 なので今までもこれからも、とことん奴らを重点的に虐めていこうと改めて思いました。 最初はみんな好きだったのに、どこでこうなったんだろう・・・ では、ここまで長い間お付き合い頂いた方々。本当にありがとうございました。 また他の作品で!! 小五ロリあき ・過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 412 僕と『あの子』とゴミ饅頭と ふたば系ゆっくりいじめ 446 俺とゲスと自業自得な餡子脳 ふたば系ゆっくりいじめ 460 弱虫まりさとほんとの勇気 ふたば系ゆっくりいじめ 484 ドスと理想と長の資格 前 ふたば系ゆっくりいじめ 494 ドスと理想と長の資格 後 ふたば系ゆっくりいじめ 514 僕とさくやとおぜうさま ふたば系ゆっくりいじめ 548 てんことれいむとフィーバーナイト 前編 ふたば系ゆっくりいじめ 559 てんことれいむとフィーバーナイト 後編 ふたば系ゆっくりいじめ 583 ゆっくりしたけりゃ余所へ行け ふたば系ゆっくりいじめ 599 はじめてのくじょ~少女奮闘中~ ふたば系ゆっくりいじめ 615 お兄さんは静かに暮らしたい ふたば系ゆっくりいじめ 659 よくあるお話 ふたば系ゆっくりいじめ 674 かわいいゆっくりが欲しいなら ふたば系ゆっくりいじめ 701 おうちは誰の物? ふたば系ゆっくりいじめ 789 ゆめみるれいむときゃっしゅさん ふたば系ゆっくりいじめ 790 ユクミン 前 小五ロリあきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る れいむは囮です それだけしか取り柄は無い -- 2014-08-23 02 47 36 さとりとこいしかわいいよー。わかれよー。 -- 2014-08-11 20 44 33 ユクミン 続編お願いします -- 2013-08-12 00 25 35 とてもゆっくりできました。 続編書いてくれたら嬉しいなぁ・・・(チラッ) あとれいむざまぁwww -- 2013-04-03 04 04 59 ↓くいーんちゃっぴーやくはくいーんありすだねー、わかるよー -- 2012-10-01 19 27 14 ↓3 わかるよー くいーんちゃっぴーとかあめぼうずにぎゃくさつされるゆっくりがみたいんだねー -- 2012-08-24 00 36 33 このSSでここまで主人公とシンクロして読んだ作品は始めて。 そもそも自分こう言う話に弱いしw -- 2012-08-18 14 06 00 すばらしい!!!物凄くゆっくりできたよ!! 確かに主人公がほぼ傍観に徹してたのは少しもどかしかったかもしれません。 でも、それをさっ引いても凄くゆっくりできたよ!! -- 2012-03-19 12 52 51 ユクミン2編希望! -- 2011-11-03 12 06 56 ドスもゲスぱちぇもザマァ!wwww -- 2011-10-23 20 38 02 面白い! おにいさんとゆっくり達の友情に感動した。そしてれいむ達とドゲスともりけんざまぁww -- 2011-08-23 07 23 40 面白いなー 俺もやってみたいと思った -- 2011-06-09 13 07 20 やりたいなーこれ。 おにいさんはれいむどもの扱いに苦労してたけど、ゲームだったらむしろ進んで殺しまくりたい。れいむの集団を水に投げ込みまくったり、夜に置き去りにして現地生物に無残に殺されるところが見たい。 -- 2011-02-18 13 16 39 ユクミン2はまだですか? -- 2011-02-18 11 12 07 ↓×5 だってれみりゃとか頭悪すぎて説得理解できねえし、仲間になったとしてもわがままだし馬鹿すぎて味方食うだろうし、れいむ共と同じくクソ邪魔な汚物にしかなりえんよ。 れみりゃは可愛くないし冷遇して当然。と思うよ。 -- 2011-02-09 17 48 26 面白かった!! -- 2011-01-07 19 02 36 良い話だなー! オ●マーと、ゆっくり達(一部を除き)の友情に乾杯! -- 2010-11-14 20 11 28 好きだね -- 2010-10-16 22 09 54 葛藤して、変わって行く、捨てられない主人公がとても良かった。 ゆっくりで心温まる「対等の異種間の交流」が読めると思わなかったよ! ゆっくりに頼りきりの探索行なのに、不安が払拭されて行くのが面白かった。 -- 2010-10-06 20 01 53 主人公があくまで指揮者・傍観者に徹しているのがもどかしかったです。 だが元ネタがアレなので仕方ないのは分かるがむずむずしたよ。でもそれぞれの能力を活かした面白い作品でした。 ……しかし………… れみりゃの扱いがヒドイじゃないか!!! 胴付きれみりゃ10体登場のときは「おぜうさまも仲間に?ヤッター!!!」とか思ったのに、ふらん無双!? ぐがああああああ!!!可愛いれみりゃになんてことするんだ!おぜうさまは優遇して当然でしょうが! 何故れみりゃの扱いがデブ饅頭やゲロ袋と同じなんだよ!!!信じられん!狂気の沙汰だ! れみりゃ虐殺はこのSSの魅力を大きく損ねている!!! -- 2010-08-13 03 52 59
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「ふたば系ゆっくりいじめ 1229 雨宿り/コメントログ」 ざまぁゆっくり! -- 2010-07-07 06 53 32 雨はゴミを掃除してくれるからいいね -- 2010-07-11 23 43 50 まりさかわいそう。 -- 2010-07-14 00 15 20 早い者勝ちだよw -- 2010-07-20 03 38 27 最近ゆっくりいじめから流れてきたのが多いなと思う。 -- 2010-07-31 02 57 12 まりさは少しもかわいそうじゃないよ。 -- 2010-08-31 11 32 11 下から三番目の人 なぜ愛護派の人間が虐待SSを読んで感想を書いてるのか -- 2010-11-10 13 12 01 制裁モノ目当ての人なんだろう。 -- 2010-12-17 16 39 04 とっとと別の場所に雨宿りにいけよw -- 2011-01-13 09 21 50 上から三番目 別に愛護派でなくとも、単に罪の無いゆっくりが理由なくくたばるSSでは楽しめない人もいるんだよ。 このお兄さんに虐待への愛がないから、まりさに同情しちまう。 -- 2011-07-14 20 29 27 に~やに~やどーがっ -- 2011-10-11 01 06 38 ここは虐待ssだ。ゆっくりは死もしくはそれに近い苦痛を与えられう場所だ。 ゆっくりがそうなるのは当然で、その中でごく一部が生き残る可能性があるだけだろう。 故に可愛そうなのは当然であり、何故かわいそうなのかと言わないと、一つの感想と取られずにいわれのない批判を受ける結果となる。 まぁ、俺はもっと苦しむ描写があってもいいとは思ったがな。 -- 2011-10-20 03 27 52 ↓そうだね、雨水に濡れ徐々に体をふやかしつつ溶けゆく恐怖に怯え 泣き喚きながらゆっくりする描写が欲しかったね。 -- 2011-10-21 03 13 51
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シリーズ『ウラドリ』 自殺招いた「ネットいじめ」 今年7月、神戸の私立高校で3年生の男子生徒が自殺し、9月に同級生3人が恐喝未遂容疑で逮捕された事件。背景に浮かび上がってきたのは、『ネットいじめ』の実態でした。 ■名門私立高3年生の突然の死、その背景は・・・ 2007年7月3日。 神戸市須磨区の名門私立高校で、1人の生徒が、自ら命を絶った。 3年生のA君。 放課後には友人たちとフットサルを楽しむ、活発で笑顔の絶えない少年だった。 彼の残した遺書には・・・。 『金を要求されたが払えない。死ぬしかない』 A君の自殺から2ヵ月半後、同級生でフットサル仲間だったB少年が、A君に対する恐喝未遂容疑で逮捕された。 手口は、携帯メールでの脅し。 『5万くらいでええよ。払えないと、クラスのメンバーにリンチさせる』 その後、別の2人の同級生も、恐喝メールの共犯として逮捕された。 逮捕された少年たちは、当初、警察の調べに対し、異口同音にこう話していた。 『メールを送ったのは事実だが、冗談のつもりだった。本気で金を取るつもりはなかった』 捜査関係者は、「少年たちの言葉や態度からは、自分たちの行為が友人を死に追いやったという自覚が全く感じられない」と漏らす。 一方、逮捕された少年の弁護士は、はっきりと容疑を否定する。 【逮捕された少年の弁護士は・・・】 「『お金を取る気は全くなかった』、『これは本心です』と。日頃から、非常に仲が良かった。自殺した直前も親しく話をしていた」 クラスメイトの作文にも、こんな文字が並ぶ。 『仲の良い2人だった』『(メールは)100パーセント冗談』 しかし、捜査関係者によると、逮捕された少年は「最初は冗談のつもりで、最後は本当に金を取れるんじゃないかと思うようになった」などと話している。 徐々に行動をエスカレートさせていった少年たち。 友人からの『金銭要求メール』といういじめを、A君はどう受け止めたのか・・・。 「いじめていたのは、逮捕された少年らだけではなかった」という証言もある。 【A君や逮捕された少年らをよく知る人物は・・・】 「本人が『**君にいじめられとう』って言ってたらしいから。別のグループか知らんけど、帰る時に荷物を持たされていたみたい」 【逮捕された少年の弁護士は・・・】 「逮捕されていない別の少年も、自殺した生徒さんに頻回にお金を要求するメールを送っています。2回どころじゃないです。この生徒さんは、遺書に名前が書かれている」 警察は、別の生徒の立件も視野に入れ、慎重に捜査を進めている。 学校で誰かが手を差し伸べることはできなかったのか・・・? 【自殺直後の教頭会見より】 「全く変わった所はなく、にこやかな感じだったと聞いています」 事件直後、学校はいじめを否定。しかし、生徒の逮捕後に再度アンケートを実施し、前言を翻した。 【逮捕直後の校長会見より】 「いじめがあったと判断を致します。本当に、申し訳ありませんでした」 後手後手に回った学校の対応・・・。 学校がいじめの全容を把握できなかった理由のひとつに、現代のいじめの持つひとつの形があった。 【逮捕直後の校長会見より】 「携帯メールなどネット関係の対応について、私たちは手元に何もありませんでしたので、そういったことが真相の究明を遅らせたかなと・・・」 A君のフットサルグループのホームページは、『5人の仲良しページ』と名付けられていた。 結束の証のはずだったこの場には、次第に誹謗中傷が書き込まれ、陰湿なネットいじめの場と化していったという。
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「ふたば系ゆっくりいじめ 576 たった一つだけ叶った夢/コメントログ」 いい話だ -- 2010-06-08 22 36 51 ゆっくりの狂ったような必死な命乞いは何度見ても楽しい!HAHAHAHAHA! -- 2010-06-26 00 24 23 感動した -- 2010-07-16 10 51 52 「うつくしいのはつみだよね………」 ←殺す! と思ったけど、いい話だね~ 加工所の所長さんは良い人でゆっくりのこと考えてるし、まりさも夫婦でいられるんだからww -- 2010-07-24 18 07 09 れいむの狂いっぷりには笑ってしまったが、それとは別にこの夫婦には何とか幸せになってほしいとも思った。 -- 2010-08-27 18 54 34 ほとんどの野良ゆっくりが前半のような人間を奴隷にして自分が世界の支配者になるという アホな夢をリアルで妄想してるんだろうなあ……おおキモいキモい -- 2010-08-30 15 55 28 前半の妄想で所々ボロがでていますな… 所詮はゆっくりか… -- 2010-09-23 02 33 29 ゴミの扱いなんてこんなもんだ。十分すぎるくらいだ -- 2010-10-03 02 01 19 前半の妄想でイラッと来たが、後半でゆっくりできたよー -- 2010-10-17 12 26 38 やっぱゆっくりは幸せになっちゃダメだよ。常に絶望を心身共に味わいつつ最低最悪のままゆん生を終わらされなくちゃね!! -- 2010-10-18 22 28 34 前半の妄想しつこ過ぎじゃね? と思ったらそれ以降前半を取り戻す勢いの不幸三昧ですっきりー -- 2010-11-10 01 29 24 正気を取り戻すシーンでうっかり涙ぐんでしまった -- 2011-01-21 12 00 38 ちょっとゆ虐成分が低めだったがまあおもしろかった -- 2011-02-17 17 50 09 前半がうけいれられない -- 2011-03-01 23 33 22 このゆっくりにはいつか幸せ…というよりゆっくりしてほしい。 あとこの話の中で一番むかつくのは所長。所長殺してやりてぇ。 -- 2011-04-08 06 23 03 ↓こんなカス共に幸せになる価値なんてないよ。 -- 2011-04-08 23 57 02 ↓ 俺はゲスいじめが大好きだから。 このゆっくりは狭いケースに入れられて子供を作らされる。そして安心なんてない。 なんか↓みてると鬼威山いじめとか見たくなってきた。人間ってホント屑だね。俺も。 -- 2011-04-09 03 06 03 ↓分相応に生きていればゆっくりは幸せになれると思う。 -- 2011-07-30 17 08 25 生まれてこれただけでもこのゆっくりは幸せだろ? -- 2011-10-21 20 17 56 別にダイヤモンドのゆっくりがいて、国宝クラスの扱いを受けているやつがいても別に構わない。 価値あるやつがそれだけの扱いを受けるのは当然だからな。善良な饅頭は愛でられる方がいいし、クズは生きる価値なんてない。 だからこの所長がゆっくりを大事にするのも別にかまわない。 だがゴミのくせに立場をわきまえない妄想をしているこの黒白ゴミはとっとと処分するべきだ。 -- 2011-11-13 17 17 09 俺もこの加工所に見学しに行きたいな・・・ -- 2011-12-19 03 56 06 じわじわと苦しめて永遠にゆっくりさせたいゆっくりナンバー1だわwwww ゆっくりに希少性は有り得ても希少価値なぞ無いと言うのにな >鬼威山いじめとか見たくなってきた ゲスゆ虐待も善ゆ(ゆっくりである時点で善良なんて有り得ないけど)虐待も 等しく嗜んでこその鬼意三ですよ、屑云々自虐する前に修行が足らんね -- 2013-03-07 08 57 49 おまえら人間のほうが、よほどクズで愚かでゴミ。男の欲望丸出しできもすぎる。 -- 2015-06-28 04 27 29 いいね -- 2015-10-07 01 34 29 やばい泣きそうww -- 2016-01-12 21 59 57 絶望に身を捩れえええええ!!虫けら共おおおおおおおおおおおおお!! -- 2016-06-05 16 40 47 おお哀れ哀れ -- 2016-07-25 10 16 39 ダイヤモンドバッヂなんてなかったんだ。いいね? 最初勘違いして本当にダイヤモンドバッヂなのかと思ったw 妄想で騙すなよw -- 2016-08-30 17 20 24 クズクズ言ってるやついるけどさあ。このwiki見てる時点で大半 クズでゲスな野郎だと思うんだよ。 -- 2016-08-30 17 24 19 うわスッゲーゴミ作品じゃん! -- 2020-08-12 14 18 39 この後佐藤さんが来て、加工所の職員56しまくってゆっくりを助ける -- 2023-10-08 17 10 42